ONE 「茜色の空の向こうに その二 −寄り道ー」
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「・・・・・まったく声が聞こえたかと思えば・・・・」
やっぱりかというような表情で、こちらをにらむ茜。
「ははは、ごめん〜・・・茜、久しぶりだね!」
「だから久しぶりでもなんでもないだろ、お前は」
横からつっこむものの、まるで効き目なしのようだ。
こいつは・・・・・・
「・・・・詩子、今日はどうしたんですか?」
「あはは、暇だから遊びに来ちゃった♪」
・・・・年中暇なのだろうか、こいつ・・・?
というより茜以外に友達がいないのか?いつものように来ているが・・・
「茜、委員になったんだってね。今日はもう終わったの?」
「・・・疲れました」
そうだろうな・・・・・・・・
長森いわく,うちの生徒委員会はどうでもいいようなくだらない議論を
何時間も延々と話すらしいからな・・・
俺は少し茜に同情した。
「それじゃあ茜、今日は帰るか」
「そうですね・・・・」
茜の同意を得て、いつものように一緒に帰ろうと思っていると横から、
「そうね、じゃあ帰ろう、二人とも!」
・・・・こいつがいたんだったな・・・・・
「あのなあ、何でお前がついてくる?」
「何でついてくるのって言ってるよ、茜」
「お前に言ったんだ、柚木!」
「ええ!?いいじゃない、一緒で」
「だめだだめだだめだ!」
こいつがついてきてしまったらせっかく今日という日のために、
俺が念密に計画した「茜との親密度さらにアップ」作戦が
台無しになるではないか!
「・・・そんなことを考えていたのですか?」
茜が絶対零度以下の冷たい声で俺の身を震わした。
な、何故俺の考えていることが分かったんだ!?
ま、まさか茜は・・・・・・
「・・・私はエスパーではありません」
「うおおおおお、なぜだ!何故俺の考えが読める!?」
「口に出してべらべら喋っているわよ、折原君」
「・・・・・・・・へ?」
柚木の言葉に、一瞬唖然とする俺。
「・・・浩平、みっともないです」
心底呆れたというような目で、こちらを見る茜。
・・・い、いかん、何とか誤魔化さねば・・・・・
「ふう・・・・巧妙な誘導尋問に引っかかってしまったか・・・・」
「何にも誘導してないと思うけど・・・・」
ささやかな柚木のつっこみはとりあえず無視する。
「ま、そんなことはどうでもいいとして・・・・」
「勝手に横道にそらさないでください」
「茜、帰ろうぜ」
「いやです」
・・・・即答だった。
「ど、どうして!?」
「当たり前です」
「そこをなんとか!」
「・・・何ともならないです」
「ううう〜、何故だ〜、どうしてだよ〜、瞳〜」
「・・・誰です、瞳って?」
「さあ?とっさに呼んでみた」
「馬鹿ですね」
「・・・すさまじく傷ついたぞ、今の一言」
それにしてもこれで今日せっかく調べた地図とかは、
すべて無駄になってしまうんだな・・・・・・・
「空しい・・・・・なぜこうなったんだろうか・・・?」
「その辺が分からないって言う所が折原君らしいよね」
「何だよ、お前なら分かるって言うのか?」
「折原君よりは分かるわよ」
「くそう、何か悔しい〜」
「ふふふ、私の勝ち」
と柚木と二人でぐちぐち言い合っていると、
「それでは私はこれで・・・・・」
「ちょっと待て、茜!」
すたすたと図書館から出ていこうとする茜を慌てて俺は止める。
「・・・まだ何か?」
「ま、まあいちゃいちゃするとかは冗談だとして、
せっかくだし一緒に帰ろうぜ。最近お互い忙しくて一緒じゃなかっただろ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
茜は足を止め、何やら考え込みはじめた。
どうやら俺の言葉で心の中に葛藤が生まれたようだ。
しかしこのままでは埒があかないので、俺は茜に一番よく効く
一番の切り札を出すことにした。
「茜、以前行けなかったたいやき屋の場所が正確に分かったんだ」
「!?」
たいやきという単語に明らかに反応する茜。
「しっぽまであんこ入り。俺のおごりだ」
「行きましょう」
一瞬で前言を取り消し、行く気満々になる茜。
やっぱり茜には甘いものが一番だな・・・・・
「折原君のおごりか〜・・・・私、たいやきって久しぶりだよ」
「こらこら誰がお前にまでおごるといった」
「でもさっきおごるって言ったじゃない」
「安心しろ。誰もお前には言ってない」
柚木にも明確に分かるように、きっぱりはっきり言う俺。
「茜ってあんこは何がすきなの?」
「わたしはつぶあんが・・・・」
・・・・だが、俺の声などしょせんこいつには無力だった・・・・
柚木は俺に構いもせずに、茜との会話に盛り上がる。
「・・・・けっきょくついてくるのか・・・・・」
俺は沸き上がる疲労感を背に、図書室を後にした・・・
「今日は大丈夫なんですね?」
「まあな、ちゃ〜んと確認しておいた」
校門を出て、放課後時の静かな通学路を歩く俺と茜とおまけ一名。
とりあえず二人を案内するために、俺は先頭に立って案内役をすることにした。
先ほど見た詳しい道はすでに頭に入れてある。
おそらくすぐにでも辿りつくだろう。
「そうそう、私も調べるのに折原君に手を貸したのよ、茜」
「・・・詩子も?」
「そうよ、ちゃんと役に立ったんだからね!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
確かに手伝ってくれたのは事実なので、俺は黙っていることにした。
茜のこちらへの視線が少し気になったが・・・・・
「まあ場所はそれほど遠くないから、すぐにつくと思うぜ」
さすがに遅くなってしまうと俺はともかく、茜や柚木の家族に
迷惑をかけてしまうことになりかねない。
「え〜と、次の角を左に曲がって・・・・・」
一つ一つ頭の中でチェックしつつ、俺は先へと進んだ。
「折原君はそこへよく行くの?」
「いや、以前に長森と一緒に行ったきりだ」
「長森さんとですか、浩平?」
「ああ、あいつも結構甘いもの好きだからな」
そういえば茜と知り合う前は長森とよく一緒に帰ってたっけ・・・?
最近は茜に遠慮でもしているのか、全然帰ってはいない。
朝はいつも通りなのだが・・・・・
「ところで、まだつかないの?」
そのごなんだかんだとか会話していると、柚木が辺りを見回していった。
「いや、もうそろそろのはずなんだが・・・・・・」
「・・・はず?」
俺の言葉に引っ掛かりを覚えたのか、茜は不安そうな声を出す。
・・・・・・おかしい・・・・・・・
会話してて気づかなかったが、こんな道は知らないぞ・・・・・
これはまさか・・・・・そのまさか・・・・・?
「・・・・折原君、迷ったの?」
・・・・柚木の声に、背中から冷汗が出るのを感じた・・・・
<その三 −温もり−>に続く
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