ONE 「茜色の空の向こうに その3 −温もりー」




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さて、ここで落ち着いて状況を整理してみよう。




まず俺は今日茜との親密さをアップさせるために、かねてから考えていた

計画を発動させる事とあいなった。

それは以前連れて行く事ができなかったタイヤキ屋へと一緒に行き、

和やかな雰囲気の中、ちょっといい感じになるという完璧な計画だった。



ところが、である。



そこへ割り込んできたのが、茜の幼なじみであり、学校の不法侵入者

「柚木 詩子」だった。

こやつが持ち前の天然さを発揮して、俺の反対を無視して、

一緒に鯛焼き屋へとついていく事になった。

結局は三人という事で半ばがっかりしていた俺。

そこへ追い討ちをかけるようになったのが・・・・・・

「今のこの状態、という事だな」

よし、整理終了。





「で、折原君、やっぱり迷っちゃったの?」

う・・・・・・・・

「浩平・・・・またですか?」

そこへ更なる茜の心底呆れたような一言。

ぐはあ!俺のハートにぐさぐさと突き刺さったぞ、今の言葉。

でも確かに現状は前と同じだった。

辺りを見渡すと、もはや自分でもよく分からない場所に来ている。

「またって事は前も迷ったってことよね?」

「そうです・・・・はあ〜、これで二回目です」

「同じように迷うなんて・・・信じられない」

「私も信じられません」

茜と柚木は小声で話し合いながら、互いに頷きあう。

だが小声とは言え、今の俺には丸聞こえだった。

このままじゃやばいな・・・・・・

とりあえず整理して・・・・・ってこれはさっきやったぞ!

学校からしばらくはちゃんと行けていたんだ。

一つ一つポイントを確認したし、間違わないようにチェックしていた。

だが・・・・途中からの茜と柚木の会話に夢中になったのがまずかった。

おかげで、現在地からとか言うより、家に帰れるのかも怪しい・・・・・・

だが、ここで「迷ってしまった」といえば男が廃るというものだろう。

という事で、俺は見栄を張る事に決定した。

「あのなぁ・・・・・まだ迷ったとは言ってないだろう?」

「え?迷ったんじゃないの?」

「当たり前だ!ちゃんと確認しながら来ている」

・・・・無論、大嘘である。

「では後どれくらいでつくのです、浩平?」

あぅ・・・・・・聞いてはいけない事をあっさりと聞いたな、茜。

「そうだな・・・もう少しだ」

「浩平のもう少しは信用できません」

信用0だな、俺って。

まあ以前何回も言った台詞だからって事もあるけど。

「具体的に後どれくらいなの、折原君?」

「え〜と・・・・後10分52秒くらいだ」

「・・・・具体的すぎるのが多少気になりますね」

正確(?)に言った俺に、鋭く突っ込む茜。

おかげで俺はさっきから冷や汗がでっぱなしである。

「まあでも、もう少しじゃない。安心したね、茜」

「・・・・はい」

・・・・今、茜の言葉に微妙な間があったのは気のせいだろうか?

だが、もうここまで言ってしまったらもうやぶれかぶれで行動するしかない。

どうせもう道に迷ってるんだ。

こうなったら自分の勘を頼りに進むのみ!

「という事で、出発するぞ!」

「そうですね、そろそろ行かないともう日が暮れてしまいます」

茜が西の空を見つめて言った。

確かにそろそろ空の色も変わりつつある。

もうすぐ一日という時間が終わりを告げようとしているようだ。

「それじゃあタイヤキ探索隊、出発!」

「勝手に妙な名前をつけるな、柚木!」

内心冷や冷やしながら、俺は抗議した。

「・・・先ほどから過剰に反応しますね、浩平は」

「それは気のせいだ、茜」

そう言いながら、表情を見られまいと俺は先を進んだ。

「わ、わ、折原君、早いよ〜」

「・・・浩平、早いです」

二人がついてくるのが足音で分かった。

さて・・・・せめて帰り道にはたどり着きますように・・・・・

俺はもう祈るしかなかった。










「ヘイ、らっしゃい!どれも美味しいよ!!」

「・・・・・・・・・・・・・・あれ?」

それからしばらくして俺がでたらめに進み、

適当にジグザグとまわっているとそこには・・・・屋台があった。

う、嘘・・・・・・・

「あの〜、あんた、タイヤキ屋さん?」

「あん?あんた、ここがたこ焼屋にでも見えるってのかい?」

「いや、全然見えないな」

以前長森といった時にも会ったはげ頭の親父、

店独特の佇まい、そしてタイヤキの形をした看板。

まさしく、ここが俺が探していたタイヤキ屋だった。

お、俺ってひょっとしてすごいのかも・・・・・・

「な〜んだ、折原君、ちゃんと分かってたんだね。
さっきは疑ってごめんね」

「・・・・私も謝ります」

「いやいや、別に気にしてないって」

・・・・でたらめに歩いてただけだし・・・・・・

「まあ、俺が本気を出せばざっとこんなもんだ」

「・・・・・という事は、以前は本気ではなかったという事ですか?」

あう・・・・・・・

どうやらいらない事を言って、墓穴を掘ったようだ。

「いやあの時も全開だったぞ」

「その割には迷ってましたよね?」

「あの時はタイヤキ屋は休みだったんだ」

「辿り着いた先は公園でした」

「そう言えばあの公園もいろいろあったよな・・・・・」

「遠い目をして誤魔化そうとしても無駄ですよ、浩平」

「うう・・・・・・」

どんどん袋小路に追いつめられていく俺。

今の茜は俺にとって最大の天敵だった。
「なんか明るくなったよね、茜って・・・・・」

「・・・・・・え?」

今まで黙っていた柚木の突然の言葉に、茜は目をぱちくりさせる。

そんな茜を柚木は微笑ましそうに見つめる。

「ほら茜って最近まで元気がなかったからさ」

「・・・・・・・・・・・・」

「心配してたんだよ。茜、以前は気持ちがここにはないって感じだったから」

「・・・・そうかもしれないですね」

事情を知り、そしてその原因の俺には何も言えなかった。

茜は俺がいない間はどのように過ごして・・・・

どのように思っていたかなど・・・・想像もつかないほど辛かっただろう。

「何でえ、何でえ、若い奴等が雁首揃えてくれえ顔しやがって!
ほれ、これでも食べてしゃっきっとしな!」

そう言ってタイヤキ屋の親父は、俺達に焼き立てのタイヤキを手渡しした。

「アッチッチ!」

さすがに出来立ては素手で持つと熱い!

俺は慌ててフウフウと息を吹きかける。

「ははは、折原君、だらしな〜い」

「・・・浩平、大げさです」

熱がる俺とは対象に、二人は何も感じていないようにタイヤキを手に持っている。

な、なぜだ・・・・・茜ならともかく柚木まで・・・・

「ははは、姉ちゃん達、こっちの兄ちゃんとは違って肝が据わってるね〜」

何がそんなに面白いのか、親父は心底楽しそうに笑っている。

肝とか言う問題ではないような気もするのだが・・・・

「さてさて、一度食ってみな!最高の味だぜ!」

親父さんにすすめられ、俺達は頭からかじりついた。

お・・・・・・

「わあ〜、美味しい!」

「・・・美味しいです」

「あたぼうよ!こちとらこれで飯を食ってるんだぜ!」

何故この親父はこんなに威勢がいいのかは置いといて、確かに美味い。

焼き立てなせいもあって、身体がぽかぽかしてくる。

「・・・浩平」

美味しそうに食べていた茜が、そっと俺を見上げてくる。


「うん、どうした茜?」

「・・・ありがとう」

そう言って、うっすらとだが微笑む茜。


俺は茜のその笑顔を見ただけで、十分今日は来てよかったと思えた。














<その四 −夕暮れ−>に続く

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