悠久幻想曲 「ヴァンパイア・ジュエルエピローグ」−精一杯のありがとうをー
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「こ、これは・・・・」
「スバラシイ・・・・・」
アレフ、シリウス、そしてパティにシーラも目の前の光景に
目を奪われているようだ。
こんな事を言っている俺自身も冷静に見ているようだが、
さすがに「これ」には度肝を抜かれた。
俺達が目指していた泉を実際に見ると、大きさは少し泉というには大きく、
その水面は驚くほどの透明さがあった。
だが、それは大した問題ではない。
実際に俺達が目にしているのは・・・・・
その泉の周り一面に咲き誇る七色の「花」だった。
それはまるで今咲いたかのように生命力にあふれており、
その花びらは風に揺れるたびにその色を変えて、魅力を醸し出していた。
こ、この花は一体・・・・見た事ないぞ、こんな花・・・・
「悠、あれを見てみろ!」
アレフが何かを見つけたように、空中のある一点を指差す。
その指先には・・・・・
「あれは・・・・・あれがヴァンパイア・ジュエルか?」
泉の中心あたり浮いているその光の固まりは、小さいながらも暖かい光を
花一面に降り注いでいた。
「うん、多分・・・・すごい魔力を感じるわ・・・・」
まだ花に気がいっているのか、目をぼんやりしつつもシーラは頷いた。
「どうやらこの花もジュエルが関係しているみたいだな」
いくらなんでもこの泉にこんな珍しい花が咲いているというのも、
考えにくい話である。
となると、その鍵を握っているのは・・・・マリア!?
「そ、そう言えばマリアは・・・?」
いかん・・・・・ジュエルに気をとられすぎた。
「悠、マリアはここよ!」
突然のパティの声に俺は慌てて周りを見渡すと、
泉のほとりの木の下で、パティが横たわるマリアを見ていた。
「パティ、マリアは・・・・マリアは無事か?」
俺は慌ててパティの傍にかけよって、マリアを見てみる。
横たわるマリアは意識がなく、そのまぶたをかたく閉ざしていた。
「・・・・わからない・・・・怪我はしていないし・・・・・」
パティは医療関係に詳しいという訳ではないが、
それでも薬草の見分け方や簡単な応急処置はできる。
だが・・・・この症状はさすがに分からないようだ・・・・
「マリア、しっかりしろ!おい!」
俺は何とか目を覚ましてほしくて声をかけたり、
体を揺さぶったりとしてみたが、マリアは一向に目を覚ます様子はなかった。
「悠、マリアは?マリアはどうだ!」
シーラとアレフもこちらに駆け寄って、心配そうにマリアを見る。
「意識がないからなんとも言えないけど・・・・・・」
「悠君・・・・・・」
マリア・・・・・一体何がどうしてこうなったんだ!
俺は地面をこぶしで思いっきり殴りつける。
何度も・・・・・何度も・・・・・
「やめて、悠!血がにじんでるじゃない!」
慌ててパティが俺の腕にしがみついて、止めにはいった。
俺はパティのそんな腕を振りほどけなかった・・・・
くそう・・・・・どうすれば・・・・・・
「・・・私が見ましょうか?」
え・・・・その声・・・・まさか・・・・・
「まさか・・・・・ハーリーさん!?」
いきなりの空からの声に顔を上げると、そこにはジョートショップにいるはずの
ハーリーさんがこちらにゆっくりと降下途中だった。
「あ、あなたがなぜここに・・・・・?」
「確かあんた、倒れたって聞いたけど・・・・?」
俺とアレフが空から降りてきたハーリーさんに矢継ぎ早に質問すると、
「はい、悠さん達の事はエルさんから詳しく事情を聞きました。
それで私も場所を・・・・きい・・・て・・・はあはあ・・・・」
そう言いながらも、苦しそうにハーリーさんはひざをついた。
かなり顔色も悪く、しきりに汗をかいている。
もう・・・・時間もわずかしかないからか・・・・・
「ハーリーさん、これを早く!」
シーラはそう言って、手の平の上にある光の結晶をハーリーさんに渡した。
どうやらいつのまにかジュエルをとってきたようだ。
「見つけてくださったんですね・・・・ありがとうございます、皆さん・・・
だが・・・ま・・・うう・・・まずは・・・こ、この娘からです」
ハーリーさんはふらふらしながらもマリアの傍にひざまずき、
彼女の身体の上に両手をかざした。
「エリ・・・・ソハ・・・・・エスタ・・・・メロレイン・・・・・
惑いし魂よ・・・・・・・・・レミティーラ!」
ハーリーさんの言葉と共に彼の両手が光り出し、マリアの全身を覆う。
そして、一瞬マリアの身体が黄金色に輝いたかと思うと、
その光はやがてやみ、再び静けさが辺りを覆った。
「イマノヒカリハ・・・・マリアジョウ!?」
シリウスがマリアの傍に駆け寄り、身体を診断し始める。
な、何だったんだ・・・今のは・・・?
「・・・彼女・・は・・・「石」の力を・・・使ったようですね・・・
石の強力な魔力に・・・彼女の身体が・・飽和状態でした・・・」
苦しそうにしてジュエルを握り締めながら、ハーリーさんは言った。
どうやらさっきやった「行動」が、彼の限界だったのだろう。
ジュエルから光がハーリーさんの体を覆っていた・・・・
「飽和状態?それって魔力の、か?」
俺も戦闘とかで魔法を扱っているものの、そういった現象には
今だかかったことはなかった。
「普通に使えば何も問題はないのですが・・・・・・
そのお嬢さんは,よほどの強力な魔法を使ったのでしょう。
一応中和しましたが・・・・・」
なるほど・・・・さっきのハーリーさんの行動はマリアの体内の魔力を
中和するためにしてくれた行為だったのか。
ハーリーさんには感謝しないとな・・・・
「それじゃあマリアはもう大丈夫な訳ね!」
「ええ・・・ゆっくり寝かせておけば問題はありません」
にこやかにハーリーさんは言うと、パティは安心したようだった。
俺も安堵感と疲労感に、その場に腰を下ろした。
「ま、とりあえず一件落着だな」
ジュエルは見つかったし、ハーリーさんは無事助かった。
マリアも無事に見つかったしな・・・・・・
「ちょ、ちょっと待てよ。マリアはどうしてここに来たんだ?
まだそれがはっきりしてないぜ?」
俺の言葉に、アレフが異論を唱えた。
そういえば、まだそれがわかってないな・・・・・
おそらくこの花が関係していると思うが。
「タブン・・・・・・コノハナデショウネ」
シリウスが花を一つ地面から抜いて言った。
「この花はなんの種類なんですか?
エンフィールドでは見かけない花ですけど・・・・・」
「コノハナノナマエハ「ムリティ・フロ−ラ」。
アルキタノチホウニノミサイテイルハナデス」
ムリティ・フローラ?
俺はその花の名前には聞き覚えはなかった。
「その地方にしか咲かないって・・・・そんなに貴重なの?」
「イエ、カンキョウガオオキクサヨウスルハナナノデス。
ソノチホウノカンキョウジョウケンガイチバンテキシテイル、
ソレガリユウデス」
「じゃあマリアはこの花を咲かせるために、わざわざここに来たということか?」
魔法にはさまざまな種類がある。
物質を破壊する魔法・・・・・そして、逆に癒すための魔法も・・・
だが細胞そのものに関する魔法は高レベルに値する。
当然マリアのレベルでは不可能だった。
「ジュエル」の力がなければ・・・・・・・・
「でも、どうしてマリアはそんな無理してまでこの花を・・・・」
パティがもっともな質問をすると、ハーリーさんは少し微笑んで、
「キョウハ・・・・モーリスカイチョウノタンジョウビナノデスヨ。
カイチョウハコノハナヲトテモキニイラレテイイマス・・・・」
「なるほどな・・・・・たくこのじゃじゃ馬は・・・・・」
マリアはこの花を会長が好きなのを知っていたんだろう。
だがここはエンフィールド。花を手に入れるのは、マリアには難しかった。
だから花の種をなんとか手に入れて、魔法で咲かせようとした。
だが成長の魔法は、マリアにはとても使いこなす事は不可能だった。
そんな折、ローラがマリアに「ジュエル」を見せた。
マリアは内心小躍りして喜んだ事だろう。
そして今日の誕生日のために、夜遅くまでかかると知りつつも、
この泉へとやってきた。
ただ会長の喜ぶ顔がみたいがために・・・・・
「あ〜あ、これじゃあマリアをきつくしかれないわね」
パティは優しくマリアの頬をなでた。
「マリアちゃん・・・・本当はとても優しい娘だもんね」
シーラは微笑んで、パティの横に座った。
「後は一人で突っ走らなければもっと可愛いんだけどな。
あーーー、もう俺疲れたぞ!」
アレフはそのまま地面にね転がった。
「ははは・・・・さすがに徹夜はしんどいな・・・・」
空は日が昇り、すっかり明るくなってきている。
俺達はそんな朝日をあびながら、しばしのまどろみに身を委ねた・・・
こうして事件は解決した。
ハーリーさんはその後元気になって、丁寧にお礼をしてくれた後、
自由な空へと舞い上がり消えていった。
マリアはその後いろんな人にこっぴどくしかられた。
ま、当然だろう。
だが、彼女の行動を本当に責めている人は一人もいなかった。
そして俺達はと言うと、帰るなり過労で全員倒れた。
まあ十八時間以上は働いたのだ、無理もない事である。
シリウスは会長の依頼を無事にはたした後、また旅立っていった。
今ごろはこの広い空の下のどこかで放浪しているだろう・・・・・・・
そして・・・・・
「イヴ、ちょっと聞きたい事があるんだけど・・・・」
「何かしら?」
「ムリティ・フローラって知ってるか?」
「ええ、確か北の地方で咲いている花の名前でしょう」
「・・・それの花言葉って何かな?」
「急にどうしたの?」
「・・・・ちょっと・・・な・・・」
「えーと、あの花の花言葉は・・・・・」
・・・・・・・・「真心」・・・・よ・・・・・・
<FIN>
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