交わる家族、交わる運命
Side拳太
さてさて、夏休みが終了して先生が宿題の回収に勤しんでいる今、俺は机に肘をつきながら一つの考え事をしていた。
喫茶翠屋……俺の散歩仲間である恭也さんと美由紀さんの家が経営してる店。
あそこのシュークリームは美味い、がどうもなんだか行く機会がない。
そんな日が続いていたら昨日……
「拳太君、一回でいいからうちに来てみなよ、絶対気に入るから。」
帰り道、バッタリ美由紀さんに出会い、途中まで一緒に帰ることになった時美由紀さんはそんなことを言った、俺は返答に困った。
確かに俺は誘われているが今までに一度も翠屋に行ったことがない。
クラスの女子にそれとなく聞いたところ、女子比率が高いらしいので少し俺には行きづらい。
「そうですね、今は家族内で忙しいもので……」
「あー…シグナムさん?」
「まあ、そんなところですね、ここ数ヵ月でずいぶん生活が変わりまして…」
少し嘘をつくことになったがそこは勘弁してほしい、それにまったく嘘というわけじゃないし。
なんせ魔法である、覚えることがたくさんあり過ぎていつまで経っても落ち着きはしない。
だが、前の団体戦から今週まではシグナムが約束を守ったことにより簡単な訓練だけで済んでいるので自分の時間が多い。
今日も帰ったらほぼ自由だ、ゲームにパソコンし放題、パラダイスだね。
なのにデバイスの調整や魔法の開発をしてしまうのは悲しい性だけどな……
そんなことを考えていると美由紀さんは気まずそうな顔をして、
「もしかして……道が分からないとか?」
「へ?」
自分でも驚くほどマヌケな声が発せられた。そこであちゃ〜って顔をしないで下さい美由紀さん……
道か……迂闊だったな〜、考えてなかったや、駅前しか知らんやん俺………
自分の馬鹿さに溜め息、そうだった……そういうのは全く考えてなかった…
美由紀さんは考え込む俺の顔を覗き込んで、
「……まさか……本当に…?」
「……スンマセン…考えてもいませんでした…」
「あはは……拳太君らしいや、あっでもほら!そんなに遠くに行かなくても今では何でも近場で揃うしね?」
下手に慰めないで下さい、その優しさが心に染みます。
美由紀さんが鞄から地図を取り出して翠屋までの道を説明してくれた、だがしかし困ったことに。
美由紀さんが指さしているところに俺は思い当たるものがある。
「美由紀さん……ここはビルがいっぱいあるところですか?」
「うん、駅前の商店街で経営してるから確かにビルはいっぱい建ってるね、それがどうかしたの?」
「ちょっとトラウマがありまして……」
過去に、母さんに連れられ駅前に行ったことがある……
最初は二人で買い物に行って、その後辺りをウロウロした、まだ小さかった俺はショーウインドウに並べられた玩具に気を取られて母さんを見失った。
ちょっとはぐれてしまったぐらいに思い、軽い気持ちで探していたら同じようなビル群の中に迷い込んで丸一日ウロウロした苦い思い出が……それで今の今まで俺は駅前に行ったことがない。
「もしかして……迷子になったことがあるとか?」
「………鋭いですね………ちょっと両親とはぐれたことがありまして…」
「まあね、私が小学五年生の時に駅前で迷子になった子がいたってお母さんに聞いてね、そうかあ〜それが拳太君か。」
「多分……結構お騒がせしたので。」
警察官が数人がかりで俺を探してたからな、大きい声で「保護!」と言われたのは疲れ果てた俺にはなんの関係のないことだった。
そら八時間見つからなければ母さんでも騒ぐだろう……あの時は小さかったから何とも思わなかったけど今となったら一生の恥だ。
さてそれじゃあどうしたものかと考えていると美由紀さんは急に何か思いついたらしく自分に指を当てて。
「じゃあ、私が道案内しようか?」
「……え…?」
「だって誰かがいないと不安でしょ?だったら私が道案内しようか?」
「いや、そこまでしてもらわなくても……」
大体、今のこの状況ですら俺の精神面よろしくない。
これで恭也さんが一緒なら話は別だが、二人きりはマズイ、美由紀さんには
俺が女が苦手なことは話してない。
これがシグナムだったら、最近免疫がついてきたから一緒にいたりするくらいなら慣れてきたから大丈夫だけど、未だに触ったりできないが……いつかは多分。
だからちょっと遠慮したいのであるが……
「大丈夫大丈夫、私は休日暇だし、お母さんの店の手伝いに行くついでに迎えに行くよ。」
「え…と…でもあの〜…」
「じゃ、私はここで、じゃあ今度の日曜日にね〜」
行ってしまわれた……
自分のハッキリとしない態度がここで悔やまれる…
ポツンとその場に残される形になった俺は、肩を落としながら家路についた。
「はあ……」
日曜は訓練の終了の最終日、確かに最後に思い出を残しておこうと考えるなら翠屋であのシュークリームを食べるというのはいいアイデアだと思う。
ついでにシグナム達にも買っていって機嫌を良くしておこう、ぐらいは考えているけどどうも根っこの方では拒否してる。
あれだろうか、やっぱり女子が多いのが駄目なのだろうか?
「はあ……」
「おい……おい有馬。」
「はあ〜〜あ……」
「有馬っ!!」
「はい?」
呼ばれたので前を向くと先生がチョークで黒板を指しながらお怒りの様子だった。
今は数学……そうか、俺が当てられたのか……
ええ…と、XはYに比例して……
どうにも訓練ばっかりで勉強に身が入ってなかった、簡単だったはずの公式を忘れ去っていた俺は、面倒だったが一々暗算で答えをはじき出す、まあ簡単だからちょっと時間をかければ間違わないけど……
「8です、すみませんちょっと考え事をしてて……」
「……まあいい、お前も色々大変だからな、しっかり考えておけ。」
「すみません……今から授業に集中しますから、続けてください。」
どうにも……悩み事が多いと駄目だな、いいや帰ったら考えれば。
どのみち断るわけにはいかないしいつかは行くことになるんだ、ここで言っても変わらないだろう。
俺は自分に言い聞かせて黒板に向かう、学校では勉強に集中するとしよう。
帰り、いつもの様に結貴ちゃんと河野、瑠斗と一緒にブラブラしながら歩いて行く。
お互いに他愛のない会話だったけど、やっぱり一番馴れしたんだ日常、小学生の頃から変わって無い……二人は。
春先から結貴ちゃんと河野は一度も家に上がっていない、今までは何度も遊びに来ていたが、シグナム達のこともあって少し遠慮してもらっていたのだ。
河野なんてシグナムに斬られそうだし……
「なんかさ、瑠斗も強くなって今は学校中の噂だよ、有馬家には仙人が住んでるんだって……そこんとこどうよ?」
『まあ、軍人顔負けの訓練はしてる……』
「なんでそこでハモるんだよ。」
いや、スパルタン星人ですもんあの二人……俺は基本シグナムに訓練されて、瑠斗はヴィータに。
お互い訓練の傾向は違うのに、殺す気じゃないかと思ってしまうほどの体罰指導、たまに気絶させられます。
「まあ……努力の甲斐あってここまで育ちましたって意味よ。」
「うん、ゆとりだなんて言ってられないからね。」
「どういうことだよ……」
「うち等に分かるように言ってほしいけど……深くは問わないよ。」
結貴ちゃんがそう言ってこの話は終了した、最近はこんな風な話ばっかりだ。
[瑠斗]
[なんだ?念話で話すなんて]
[そろそろ……もう家に遊びに来させてもいいんじゃないか?]
[そうだな、近い内に招待するか……]
瑠斗もそう考えていたみたいだ、あんまり親しい人に秘密は俺の好きなことではない、そもそも魔法以外の事はバレてもそんな問題ではないし。
どうにも、悩み事が多い気がする……
願いが叶うなら、近い将来隠さなくてもいい日が来ることが来るのを望んで、俺は青い空を仰いだ。
Side伶哉
日曜日、さて友達と遊ぶ予定もないし……今日は訓練は夕方からだし、散歩でもしようかな……
思い立ったら即行動、俺は近くにあった帽子を掴んで下に向かう。
友達は多い方なんだけど最近は魔法に掛かりっきりであんまり遊んでない気がする、拳太達程じゃないにしても訓練の量は多い、それにまだ学ぶことがたくさんある。
だが今は暇だからどうにかして時間を潰すとしよう。
「ちょっと散歩に行ってくる、お昼には帰ってくるから。」
そう言うとテレビを見ていた姫菜がテレビを消した、上着を羽織りながら近くにいたミルキーに
「あ、ヒナも行く。ミルキー、散歩に行こう?」
「いいですね〜じゃあ私はチワワにっと。」
言いながら変身するミルキーはザフィーラと違ってこっちの形態に抵抗はないみたいだ、ちょくちょく変身しては散歩についてくる。
「とりあえず今日は土手の方に行くだけだけど……」
「じゃあついでにお買い物に行ってもいいですか?ちょうどお醤油切らしていたので。」
その時はミルキーは人間形態に戻るから一回人目につかない場所にいかないといけないな…
結構ミルキーはそういうとこ自由だ。
犬のままかと思いきや、お菓子やアイス何かを見つけると変身してそれらを食べる、シグナム達は一般人に気づかれないかと思ってるらしいけどそんなヘマはミルキーはしない。
「じゃあ財布を持たないとな……それじゃあ行ってきまーす!!」
「お二人の護衛は私がしますから安心してくださいね。」
「行ってきまーす!!」
三人で土手沿いの道を歩いていると、俺と同学年ぐらいの奴らがサッカーの試合をやっていた。
俺もお母さんが死ぬ前はチームに入ってた、大会で優勝とかは無縁の弱小チームだったけど、仲間どうしの競い合いが絶えないチームだった。
あの頃は楽しかったな……
「ちょっと見に行っていいか?久しぶりのサッカーだし。」
「いいですね〜最近の子供は家に引きこもるって話ですし、元気な子供たちを見るのは気持ちがいいものですよ。」
言いながらトタトタとミルキーが観客席に走って行って椅子に乗っかる、そこの五人の女子が座っている、内の一人が急に現れたミルキーの存在に気づくと、他の奴もキャーキャー騒ぎ出す。
その中でミルキーはスターのように騒がれていた。
「あれ?この子いつの間に……」
「チワワだね、可愛い〜」
「飼い犬かな?ほら、こんなに人懐っこい。」
「ほらリイン、チワワや、かわええやろ?」
「はい!それにフカフカです。」
サービスなのかミルキーは盛んに手に顔を押し付けたり五人の膝の上に乗ったりしてる。
俺と姫菜は溜め息を吐きながらそのベンチに座った。
「ミルキー、ほら、こっち。」
[どうです?三人とも私の魅力にメロメロですよ〜]
[それはまた今度、あんまり他人に迷惑かけちゃだめだよ]
ミルキーが満足した顔で姫菜の膝の上に乗る、俺は五人を見た。
見た感じ姫菜と同い年の四人と少し年下の四人の中の一人と同じリボンをしてる一人金髪の奴と銀……少し空色っぽいか?まあそんな髪の奴はどう見ても外国人だ。
急に現れた俺達に五人は楽しそうに話しかけてきた。
「その子、あなた達のペット?」
「うん、ミルキーって言うの、ごめんね?勝手に横に座ったりして。」
「ううん、あなた達も観戦?」
「うん、伶哉も昔はサッカーやってたから。」
「よ、始めまして。」
どうやら今はアップをしているみたいだった、試合前の準備運動をお互いのチームがやっている。
懐かしい風景に少しウズウズしていると、姫菜はミルキーに関しての話題ですっかり盛り上がっている。
「自己紹介がまだだよね?私はすずかです、その子はいま何歳なの?」
「ミルキー?う〜ん……と…今年で三歳になるんだ、私は有馬姫菜。」
「俺は有馬伶哉、よろしく、ところでおま……君たちは何年生?」
多分姫菜と同い年くらいだろう、雰囲気はそんな感じだが話した感じ結構精神年齢は高い方かも知れない、そこらの子供と比べてしっかりとしてる。
すずかは、俺達に全員見えるように体を退けて、
「私たちは小学三年生です、あっでもリィンちゃんは二年生ですよ。」
「そっか、俺は四年生、あと敬語は使わなくていいから、姫菜は三年生な。」
「よろしく、私はアリサ、アリサ・バニングスよ。」
どうにも気の強そうなやつだ、もっと前から知り合ってたら十中八九姫菜と対立する性格だったのはのは間違いない。
それに続いて、後ろの両髪をリボンでまとめた女の子と髪の毛にバッテンをつけた二人が、
「私は高町なのは、駅前の喫茶店の娘なんだ。」
「私は八神はやてや、よろしゅう、姫菜ちゃん、伶哉君。」
「八神リインです、よろしくです。」
外国の人と名字が一緒なのは家庭が複雑なんだろ、きっと家みたいに。
そこに触れるのはどうかと思ったのでスルーすることにして会話再開。
「なんですずか達はサッカーの観戦をしてんだ?」
「私のお父さんが監督をしてるから、その応援。」
「強いのか?」
「ええ、ここのキーパーなんかね、すっごいセーブをするんだから。」
キーパーは……あの隅っこの方で何人かと一緒に準備運動をしている奴等の中心の奴だろう、多分そうだ。
久し振りに見るサッカーは中々楽しいかもしれない、実際やれたらもっと楽しいけど。
「あ、そろそろ始まるみたいや。」
「本当です、皆さん頑張って下さ〜〜い!!」
[伶哉君、姫菜ちゃん?]
[何?ミルキー、どうした?]
急に念話で話かけられた、ミルキーはどうにも険しい顔をしてる。
まあ、普通の人が見たらわからないけど俺達からみたら一発だ、どうにも嫌なことがあるらしい。
[いえ……ちょっと気になることがありまして……魔法のことで]
[言って、危険なこと?]
[直接私たちに関係します、このすずかちゃんとアリサちゃんを除いた三人……おそらく魔導師です、それも高位の]
[……マジで?でもどこが関係あるんだ…]
魔導師ならいいじゃん、魔法友達が出来て。
[いえ、本来私たちはちょっといけないもの持っています、それが他の魔導師にバレてしまいますと、家族が離れ離れにされてしまうかもしれませんよ〜]
[いけないもの?デバイスとか?]
[そうですね、こっちで言えば拳銃みたいなものですし、捕まってしまうかもしれません、でも今はそうじゃなくて闇の書の方の問題で……]
[[分かった]]
そんな大変なことが起こるなら秘密にしておくとしよう。
元々俺達は周りに気づかれないようにしているけど、今日はそれよりももう少しだけ反応を抑える。
三人に気づいた様子は無し……多分大丈夫。
「どうしたの?見るんじゃないの?」
「うん?ミルキーがじゃれて来たからさ、少し撫でてた。」
どうやら試合は始まった様子、なのはのお父さんが監督のチームのボールで今は攻めに入っている。
俺が前にいたチームとは比べられないくらいまともにプレーが出来てる、だが相手も負けてない、ピッタリとマークして中々チャンスが巡らない。
あそこでどう動けばゴールに繋がるか、そればかりを考えちゃうのはやっぱりサッカーに未練があるからか。
「上手いな……俺もこういうところでやってみたい。」
「伶哉君はサッカーやってたんだっけ?今はやらないの?」
「うん、またやろうかな?家も落ち着いてきたし。」
去年みたいに落ち込んでないしシグナム達もこっちの暮らしに慣れてきている、そろそろ自分のしたいことをしてもいいかもしれない。
ミルキーに聞いてみる、
[いいんじゃないでしょうか?おそらく瑠斗君は反対しませんし、拳太君は興味なさそうですし]
[ヒナもいいと思うよ、時間はあるんだし]
とりあえず念話で家にいるはずの瑠斗に聞いてみる、
[瑠斗、そういうことなんだけど……俺もう一回サッカー始めてもいいか?]
[サッカー?いいんじゃないか?元々落ち着いたら勧めるつもりだったし、チームとか決めるのは自分でやれよ]
結構簡単に決まってしまった、こんなことならもう少し早く言っておけば良かった。
そうと決まればチーム探しだが、そこは色々聞いてみて決めるとしよう。
練習場所とか近い方がいいからな。
「だったらお父さんのチームは?みんないい人だし、楽しいよ?」
「練習場所はここなのか?だったら近くていいんだけど。」
「うん、この試合が終わったら話してみたら?それから決めてくれればいいかな。」
「ありがと、そうしてみるよ。」
試合に集中すると試合は動き出した。相手チームの良いシュートをキーパーが見事なセーブで弾いてそれを味方が大きくクリア……じゃなくてパス。
それをそのまま運んで行ってループでキーパーの頭を越して一点リード。
「いけー!もう一点決めろ〜!!」
「頑張れ〜!!ほら、ミルキーも応援。」
「ワン!!」 (頑張って下さいみなさ〜ん!!)
試合は後半に差し掛かって2対2、お互い譲らずボールの激しい取りあいが続く。
隣で見ていた姫菜達も競り合う姿を真剣な眼差しで黙ってみている、いやー静かだ。
こういうときに一人くらいずば抜けたのがリードすると状況も一変するんだろうけどあんまりそういうのは期待しちゃいけない、子供の試合だし。
[こうやって見てると、ちょっとハデなパフォーマンスの一つくらい見たいですね]
[飽きるの早いなミルキー、でもこれはこれで面白いじゃん?]
[そうは言ってもですね〜?そろそろ延長に入りますよこれじゃあ]
くあ〜……と長いあくびをしてミルキーは耳を伏せて丸くなった、確かに緊張状態が長いと飽きてしまうのは分かる。
せっせとボールを蹴ってるけど一向にゴールネットを揺らす気配はない。
今もすでに何回か繰り返した、ゴール前の攻防が繰り広げられてる。
そんな中にも危ないことはある、例えば、今ベンチに近いこっち側のゴールの鍔迫り合いでこっちに相手チームの無茶なクリアが飛んで……ってマズイじゃん!?
集中しすぎな六人は飛んできたボールにびっくりしただけで避けようとはしないでその場にしゃがみ込んだ、あれじゃ避けられない。
「ちょっとそのまましゃがんでろよ!!」
「え……?」
ベンチから飛んで六人の頭の上を飛び越えてそのまま回し蹴りでボールを蹴り返す。
思い切り左に曲がる回転をかけたからボールは見事に曲がってゴールに吸い込まれていった、狙ってやったけど入ると嬉しいな。
そこになのはのお父さんがやってくる。
「なのは!皆!大丈夫かい!?」
「うん、伶哉君が蹴ってくれたから。」
「そうか……良かった、そこの君これから時間はあるかい?」
いきなりの質問に少し戸惑ったけど買い物さえすれば問題ない。
「はい、ありますけど?」
「なら試合終了まで待っててくれないかい?お礼をしたいんだ。」
「わかりました。」
そう言ってなのはのお父さんは自分のチームに帰って行った、そして試合再開。
試合を見ているとなのはが、
「伶哉君、私の家ね、駅前で喫茶店をやってるんだ。」
「へえ……名前は翠屋?」
「知ってるの?」
「チーム名に書いてあるからな、それにたまにクラスの連中が話してるのを聞いたことがあるんだ、美味いって。」
身内のことだから嬉しそうな顔をするなのは。
念話で昼飯要らないと伝えて俺はとりあえず試合に集中することにした。
Side拳太
日曜の昼、約束の時間が迫ってくるにつれ、俺の精神は弱っていく一方だ。
お金はもらったしシャマルコーディネイトで出かけるのに適した服にはなっている、シャマルコーディネイトは一回断った、普通の服でも問題ないのに……
そう言ったらシャマルにたまにはおしゃれをして下さいと怒られたので渋々了承した。
「全く……デートに行くんじゃねぇって…」
「いいじゃないですか、いつも同じ服を着てるんじゃ駄目ですよ。」
まるで洗濯してないような言い草だがそれは間違い、同じ組み合わせでしか服を着ないという意味だ、ここは勘違いするなよ?
シャマルは上機嫌で俺に櫛を手渡してきた、仕方なく髪を梳かしておく、そもそもおしゃれなんて面倒じゃないか?
今回は初めてのジーパン、動きにくいったらありゃしない。
「拳太、お土産頼むな。」
「分かってるよ、今日で最後のリフレッシュ期間だからな、心ゆくまで楽しんでくるよ。」
「明日からはお前の特徴を活かした戦闘を中心に鍛えていく。」
「へ〜〜い。」
「それと。」
家まで美由紀さんが来るということなので玄関前で待ってようと思って出ようとするとシグナムが呼び止めてきた。
何故だろう……すっごいシグナムから不機嫌オーラが漂ってる気が……
「もう私に手加減をすることは許さないからな、これからは慣れるように私の方でも手を打つ。」
「その〜?手…というのは具体的には?」
「お前は女性が苦手だからな、それに関するものが第一に挙げられる、それに男女問わずに無意識に相手を庇っていて中々急所を狙おうとしない、そういったところだな。」
なにやらいっぱいである。
確かに女性は苦手だけど………はて?俺はいつ他人に気を使って殴ったりしてるんだ?みぞ打ちなんかは頻繁に使用してる気が……
とりあえず今は考えなくても良さそうだ、適当に思考を消しておく。
「……肝に銘じておく……けど、あれは運が良かっただけだからな?」
「……それでも、お前は強くなってるだろう?」
あの日の事を思い出してシグナムは少しだけ笑って俺に問いかけてきた。
強くなってるも何も、戦ってて手ごたえなんて感じたことはないしシグナムに一撃入れるようなこともまだ一度もない。
果たして……強くなってるのか俺?
「さあ?……でも、どんなに辛くてもついてってやるよ。」
「無理にでも連れて行く、いつか私を越えるために。」
「プレッシャーだな、じゃあ行ってくるよ。」
約束の時間はもうすぐだからそろそろ家の前で待ってないとな。
美由紀さんはそういうの気にしなさそうだがこっちは案内してもらう側だ、相手に感謝しないといけない。
程なくして、美由紀さんは来た。
いつも朝見る時とは髪をおろしているところを除いて変わったところはない、ラフな女子っぽい格好だ。
結構遠くから手を振ってるのを見てると明るい人なのが再確認させられる。
「やあ、おまたせ〜」
「こんにちは美由紀さん、時間ピッタリですね?」
「あはは、運が良かったかな?」
そのまま歩き出す、暑いからと美由紀さんはアイスを買ってくれた、ありがとうございます。
………なんだか一瞬、餌付けされたみたいだと感じたのは、俺の心が汚いからだろうか?
雑念を振り払う、美由紀さんは黙って歩いている俺に気を使ってか話題を振ってきてくれている。
「拳太君家って大きいんだね?」
「まあ、そうみたいですね、よく言われますよ。」
俺からすれば庭の整備が面倒なだけだが、訓練をするに当たってはあの広い面積は中々便利だ、木も生えていて夏はそこで休める。
「私の家は道場があってさ、朝の稽古とかそこでやってるんだよ?」
「剣の修行ですか、女の人でそういうのは珍しいですよね?」
「そうだねー、家はでも、剣だけじゃないんだけどね……詳しくは言えないんだけど。」
上の俺の台詞は一般の人の台詞で、本音のところじゃない。
家にも剣やらハンマーやら拳やら指輪やら蹴りやら使う奴等がごろごろしてる、しかも全員俺より強いし……
…・…シャマルと姫菜以外……武器被ってんな俺ら……
食物連鎖で言うと俺はシマウマ程度なのでライオンが多い我が家では淘汰されつつある。
「そういえばさ、拳太君て運動してるの?」
「どうしてです?」
「いやー、結構綺麗な肉付きしてるみたいだから、恭ちゃんの一歩手前みたいな?」
それはそれで嬉しい気もする、恭也さんはカッコイイし運動も出来て筋肉も凄い、初見では結構驚いたものだ。
そんな恭也さんだが彼女がいるらしい、忍さんという人でお金持ちのお嬢様、美由紀さんが言うには凄い美人だとか、いい人同士でくっついてるのは良いことだと俺は思います。
「してます、最近は朝の散歩も走り込みになってますし……結構辛いです。」
「やっぱり?走ってるのは見かけてるからさ、どうなのかなって思って。」
そこで会話が切れる、目の前を電車が横断し切り裂かれた風が衝撃になって体を揺らした。
ふと美由紀さんは何かに気づいたように、
「ねえねえ、拳太君は彼女とかいないの?」
「っ!?いや、いませんけど…」
唐突な質問に一瞬吹き出しそうになったが耐えてそう答える、もとより彼女はおろか女子との交流は一般と比べたら遥かに下回る。
美由紀さん、割とダイレクトな人だった……
「えー?でも今の時期とかはさ、彼女とか作ろうかな〜って考えたりしないの?」
「他の奴等は分からなくもないですけど……俺はそういうのは考えたことないですね。」
人と人は自然と付き合いが始まるものだ、そんな積極的に食いつく必要はない、と俺は思っている、果報は寝て待てと言うわけじゃないが、不自然に人と繋がるのは少し嫌だ。
………少し過去の話、瑠斗は付き合っていた彼女がいたが、親が死んで忙しくなって疎遠になり、瑠斗の方から別れを告げた。
「好みのタイプとかはないの?」
「それなら少し……まあ恋人とかの基準じゃないんですけど、自分に正しく正直で生き物が思いやれる人は好きですかね?」
本当のことだ、他人の意見を尊重する人も好きだが、任せっきりや受けの姿勢は好きじゃない、必要以外のところでは素の自分を常に出してる人も好きだったりする。
「う〜ん、難しいね〜……ほら、見た目的なものはどう?おさげがいいとか、目がぱっちりとか?」
「特に……でも髪は下ろしてるほうが好きかもしれません。」
それが一番自然だと思う、たまにお団子何かを歩いてると見かけるけどあれはあんまり好きじゃない。
学校では結うのが基本のルールだからよくポニーとか三つ編みは見てるからそんなに気にならない、家にもポニーと三つ編みいるしね。
「へ〜、そういう子が好みなんだ?じゃあ告白されたこととかはあるの?」
「………無いですよ?」
「それは嘘だよ、なんか拳太君動揺しっぱなしだもん。」
す、鋭い!!確かに無い……わけじゃあない。
これまでの人生で二回、どれも今年に入ってだが、ふたつとも丁重に断った。
「ありましたけど……断りましたよ、そんなもの必要ありませんし。」
「何で?」
「高校行ったらどのみち離れるじゃないですか、中には確かに続いてる人もいますけど、自分はその気持ちを持ち続けるのはできませんし、そんなだったら選ぶのなら他の、その人を大切にしてくれる人を選んでほしいなぁって。」
微妙に嘘、そんな善良的な理由はない。
異性には今のところ苦手意識しか持っていないし、それをこれから直す予定は一切立てていない、だから付き合うとか愛すとかそんなものはまだまだ先の話だ。
「それも嘘だよ、ねえ拳太君?君……女の人が苦手なんでしょ?」
「………はい、その通りです。」
「やっぱり?恭ちゃんも私に拳太君にはあんまり触らないでやれって言って来たから……もしかしたらって思ってね。」
気付かれてた……凄いな恭也さん、隠し通せないや。
何で苦手かは自分でも分からない、小さい頃はそうでも無かった気がするが………
触れないわけじゃあない、自分から触るのは不可能だけど事故や仕事の関係で手を触れるくらいは出来る。
けど、体になると話は別だ………
「私は拳太君がそんな風に思うようになった理由は知らないけど……大丈夫、私は何時までも友達だから。」
「美由紀さん………」
良い人だ、お世辞抜きで優しいし真面目な人と言ってもいい。
これで彼氏がいないって言うから不思議だ、世の男どもは何をしている。
美由紀さんは、優しい笑みを浮かべて……
「例え拳太君があっちの人でも、私と恭ちゃんは友達だからね?」
「何でそうなるんですかぁぁぁぁぁあああぁぁあ!?」
ご近所の方に迷惑をかける勢いで俺は叫んだ。
前言撤回、何をあっさりと言ってくれちゃってるかなこの人!?
美由紀さんは「え?違うの?」って顔をしている、否、断じて俺はそっち系の人ではない!!
「俺はノーマルですよ!」
「…あれ…?……そうなの?」
「流石に怒りますよ?」
怒るだけでどうなるというわけじゃないんだけどね。
美由紀さんはごめんごめんと言って俺の隣に並ぶ、身長はそんなに差はないけど周りから見たら兄妹位に思われてるだろう。
そうしてしばらくの間色々話しながら歩いていると目的地に到達した。
俺の正面にある喫茶翠屋、窓から中を確認、綺麗な外装に小ジャレた店内、なるほど人気もでるはずだ。
だがしかし、すぐに違和感を感じた、人が見当たらない。
「美由紀さん……お客さんはどうしたんです?」
「ああ、今日はお父さんのサッカーチームが試合でね、その後に皆に御馳走するからってこの時間帯は貸し切りにしたんだよ。」
「そうなんですか……俺もその一人で?」
「うん、気にしないでくれていいよ。」
扉を開けるとコーヒーの匂いがした、懐かしいような初めて嗅いだような、優しい香りが漂っていて不思議と落ち着く。
厨房には一人の女性とカウンターには恭也さん、厨房の人はお姉さんだろうか?やけに若く見える、むしろ若いだろうあれは。
こちらに気づいたのか、その人はカウンターまでやってきた。
「いらっしゃいませ…あら?美由紀その子は?」
「昨日話した拳太君、今日家に招待するって話したでしょ?」
「そうだったわね、いらっしゃい拳太君、ゆっくりしてってちょうだいね?」
「ありがとうございます。」
好きな席にどうぞとのことで俺は店の一番端、窓側の席に座った。
そこにすぐ水とメニューを恭也さんが運んできてくれた。
「やあ拳太君、美由紀がすまないね、きっと強引に事を進めただろう?」
「いえ、こっちも丁度暇でしたし、きっかけができて嬉しいですよ?」
「そうか……お世辞でも嬉しいよ、決まったら呼んでくれ。」
そう言って恭也さんは他の席の掃除を始めた、入れ替わるように美由紀さんが来る。
さっきまでは髪をおろしていたけど今は仕事をするからなのかいつもの様に編み込んで出てきた。
丁寧にメニューを開いて次々と品物の説明をしてくれる。
「家はね、シュークリームがおすすめだよ、もちろんケーキも美味しいし。」
「美由紀さんのおすすめは何ですか?」
シュークリームは大分前にもらったのを食べたことがある、あれは確かに美味しい、市販の奴は出直してこい!くらい美味しい。
最初はそれで構わないだろう、それに他にも後で頼んでしまえばいい。
「私はシュークリームと紅茶、家はコーヒーも自信があるけど私は紅茶の方がいいかな?」
「じゃあそれをお願いできますか?シュークリームは四つで。」
「は〜い、お母さん、シュークリーム四つと紅茶をお願い。」
厨房の方から声がして、すぐにカチャカチャと食器が動く音がする、手早い。
俺はぐるりと店の様子を確認する。
レストランのように気取った感じはしない、かといってファミレスのように騒がしい雰囲気でもない、人がいないせいなのかもしれないけど、俺はここを落ち着ける場所と認識した。
手ぶらな美由紀さんはそのまま俺の話し相手になっている。
「拳太君はさ、私とこうしてるのは大丈夫なの?」
「それなりに付き合いがあれば、じゃないと家では生き抜いていけないので……」
そりゃあもう色んな意味でだ………最初は辛かった……
最初の方のシグナム達は事あるごとに近くにいた、着替えを終えて部屋から出ると目の前にいて顔がぶつかりそうになった時はそのままショック死するかと思った。
「そっか、色々大変なんだね〜、でもそうやって遠慮しないでいてくれた方が私は嬉しいな?そうだ!今度は拳太君の家族皆で来てよ、紹介も兼ねてさ。」
「そうですね、ここはいいところですから皆気に入りそうですし、皆の都合が合えばきっと。」
自然に笑える、苦笑じゃなくて。
建前でもなく俺はそう言った、それに自分で気づくと本当にここが気に入っているのが再確認させられた。
「おまたせ〜、はい、翠屋自慢のシュークリームと紅茶。」
コト、とゆっくりと紅茶とシュークリームが置かれた。
はて?四つと言ったのに六つ俺のさらに置いてある、さらには追加でチーズケーキも置かれた。
「すみません、これは……?」
「桃子さんからのサービス!!えっと……私は高町桃子、この店のパティシエをしてるの、よろしくね拳太君。」
「美由紀さんのお姉さんですか?……あれ?」
今この店には俺と美由紀さん、恭也さんとこの桃子さんしかいない。
ちょっと待ってよ俺の声帯、オーダーの時、美由紀さんは確か、“お母さん”と呼んでいた、つまりこの人は………
「すみません、お母さんですよね?若く見えたので間違えました。」
席から立って深々とお辞儀をする、まさか間違えるとは思ってなかった、一目で姉と判断してしまった、それほどまでに若く見える。
桃子さんは口に手を当てて身をよじりながら、
「あら嬉しい!!ちょっと待ってて。」
パタパタとまた厨房に消えていく桃子さん、美由紀さんが隣でやれやれと言った顔をしてた。
「お母さん、若いですね、まさか間違えるなんて……」
「そうだね、お母さんは肌綺麗だし、まだまだいけるよね、後拳太君……君は天然かな?」
「失礼な、これでもしっかりしてると思いますよ?」
「うん、でも何回か話してると、狙ってるんじゃないかなってぐらいな言葉を君はよく言うよ?」
果たしてそれはどんな言葉か……気になるところだが、もしかしたらそれは地雷かもしれない、注意せねば。
だがしかし、俺はその三秒後、桃子さんへの地雷を踏んでいたことに気づく。
「これもサービス、本当は今日来る皆に感想を聞くために用意した新作の試作品なんだけど、拳太君も食べて食べて!!」
「あ……ありがとうございます。」
テーブルがもっさりと皿で埋め尽くされる、試作品にしては上出来なケーキやアイスやらが所狭しと並び、俺の目の前はちょっとした女の子の夢状態だ……まあこれが女の子の夢かは知らんけど。
「遠慮しないでい〜っぱい食べて!後で感想を聞かせてね?」
「お母さん、ご機嫌だねぇ〜」
確かに上機嫌な足取りで桃子さんは厨房に向かって行った。
気前がいいにも程がある……
俺は妖怪“褒めると色々出てくる”の襲撃を受けたテーブルを見渡した。
一体何キロカロリーあるんだろう?三日分のカロリーくらい補充できそうだ、これを食べきった後はちょっとシグナムに訓練してもらおう。
違う意味でシグナムは喜びそうだ、俺から訓練を望むことはあれ以降ほとんどない。
「じゃあそろそろサッカーの子達が来る頃だから私も店の方に入るよ、じゃあゆっくりしてってね拳太君。」
「はい、ありがとうございます。」
さて……どうしようかな?
俺は目の前にあるものに圧倒されつつも、とりあえず溶けない内にアイスから手をつけることにした。
Side姫菜
私もついて行っていいって言われたから遠慮しないでついていくことにした。
伶哉はあれから人気で、このサッカーチームに入るって言ったら波のように他の子が押し寄せてきた。
その中にファイヤートルネードとかゴットハンドと言ってたけど多分気のせいだと思う。
ペットの持ち込みは禁止だけど外ならいいみたいだから私と伶哉、なのはちゃん達と一緒に女の子同士で話すことにした。
「伶哉君って運動神経いいんだね?」
「う〜ん……拳太でもあれくらいはできると思うよ?一番動けるのは拳太だし。」
「拳太?お兄さん?」
「うん、今日は出かけるって言ってた。」
ミルキー曰く、はやてちゃん、リイン、なのはちゃんにはシグナム達の事を秘密にしろとのこと、闇の書は魔法の物だから仕方がないかも知れない。
「すずかなら受け止められたんじゃないの?」
「ごめんアリサちゃん、私も集中してて……」
「あはは、姫菜ちゃんのお兄ちゃんは幾つなの?」
「瑠斗が中学二年生で、拳太が中学一年生だよ。」
四人兄妹に驚いてる、アリサちゃんは一人っ子だからそういうのが羨ましいみたい。
ヴィータは家だと末っ子の扱いになってる、シャマルが最年長で、ザフィーラが弟、シグナムも妹として周囲に通してある。
考えてみると変な家族だ、だけどもう気にならない。
「中学生か……ねえ姫菜?その人は近くの学校に通ってるの?」
「うん、歩いて20分もしないかな、いつも二人で登校して、一人で帰ってくるよ。」
「……なら……可能性………でも……だし……」
アリサちゃんは何か考えるようにボソボソと呟き始めた、中学生に何か思うところでもあるのかな?
私たちの前の一団が伶哉を連れてお店の中に入っていった、私たちは表に置いてあるテーブルをくっつけて皆が座れるようにする。
[私は空いてる椅子の上に置いて下さいな、アリサちゃんの隣何かがいいんですけど]
[うん、お気に入りだねミルキー?]
[こんな良い子放っておけませんよ〜あっ席は近づけてもらっていいですか?]
ミルキーは愛犬家のアリサちゃんをすっかり気に入ったようで、アリサちゃんを喜ばせるために指示された芸やサービスまで、心開いた状態で接している。
「お〜、ミルキーはアタシの隣か、いいよ?おいで〜」
「ワウン」
返事も忘れない、アリサちゃんの中ではミルキーはすっかり天才犬だ。
お手、伏せ、お座り、おかわり、服従、何でも言うことを聞く。
「ああ!!もうっ!頭いいな〜〜ミルキー!!」
[も〜〜う!!アリサちゃん可愛すぎます〜〜!!]
知らないってことはいいことなんだなぁって思った、ミルキーは何だかいつもと違う。
何にも知らないアリサちゃんはすっかりミルキーにデレデレだった。
届いたのはココアとショートケーキ、私の好みを聞いたなのはちゃんのお父さんが選んでくれた、一口頬張る。
柔らかいスポンジと口当たりのいいいい香りの生クリーム、まあつまり、
「美味しい!!」
「でしょう?なのはのお店はね、一級品なんだから!」
「もう……そんなことないよアリサちゃんってば〜!」
「そんなに謙遜することあらへんよなのはちゃん、私もリインも大好きや。」
「おいしいです〜!」
………なんだかリインの語尾には☆をつけると似合いそう、そんなことを思いながら皆とケーキをつついていく。
アリサちゃん達は習い事をしてて忙しいらしく、今日は都合が空いたから皆でサッカーの応援に来たらしい。
私の習い事は……ちょっと周りとは違う。
「姫菜ちゃんは、好きな人とかおるん?」
「はやて!いきなりそんなこと聞くのは不味いわよ!!」
「うん、お母さんが大好き!」
ピタッっと時間が止まって、数秒でまた動き出した、アリサちゃんがため息を吐く。
なのはちゃんとすずかちゃんは笑顔、リインも幸せいっぱいで笑ってた。
はやてちゃんは………なんだか怖い。
「姫菜ちゃん……そこをそうやって即答かい……そうじゃなくて、異性や異性、男の子、ボーイってやつや…」
「男の子………特にいないよ、そういうのはもう少し大きくなってから、はやてちゃん?人生男男じゃ醜くなっちゃうよ?」
そう言ってケーキを食べる。
もふもふ、やっぱりこのショートケーキは美味しい。
はやてちゃんがげんなりして、「もうええよ……私はどうせ汚れ役ですよ〜」イジケてしまった、あれれ?
「はやて、完敗ね、ミルキー?どう思う。」
「ワンワン」
ミルキーが歩いて行ってはやてちゃんの足を前足で叩く、あれは絶対に同情の肩たたきと同じ意味だ。
俯いたはやてちゃんは足もとに来ていたミルキーを抱えて目の前に持ってきて。
「お互い、マスコットとして生きていこー?」
[それは全力で遠慮しますよ〜?](片手で手を叩いて地面に着地)
「私の大事な相方が〜!!」
「ミルキーは私の相方よっ!!」
「リインがいるですよ、はやてちゃん。」
「リインは大きいお友達がいっぱいいるヒロインやも〜〜ん!!」
可哀相なはやてちゃん……でもなんで?
有馬姫菜、三年生、まだまだ人の心を察することはできなかった。
「おらぁ!!道を開けろ!!」
『っ!?』
突然大きな声がして振り返ると、いかにも悪い(見た目と頭)感じの人たちが8人くらいで横になって歩いてきた。
向こう側の外席のチームの子がどんどん中に逃げ込むように引いていく。
いわゆる、ヤンキーだ、何も店側のスペースにまで広がることはないじゃない。
だけど注意して直してくれるほど良い人たちじゃないのは一目でわかったし、そもそもこの状況で注意するのは火に油を注ぐようなものだ。
傍観しつつ皆を中に逃がそうと考えていると一人前に出てた
「ちょっとあなた達!!」
「ああ?何だガキ?」
アリサちゃんは違った、縄張りを荒されないように威嚇する犬のように不良グループに食ってかかった。
明らかに戦力差がある、中にいるなのはちゃんのお父さんが出てくる気配がしたけど、誰かに止められててまだ出てくる気配はない。
「ここはこの店の敷地よ!そんな横いっぱいに広がって他の皆にどけなんて何考えてるの!!」
「そうやね、私もそう思うわ……」
「この人達不良さんです〜」
のんきなリインの台詞は場を和ませるどころか一層悪くした、今ならまだ止めに行って事無く終えることができるはず、私は一歩踏み出した。
だけど、急にお店から出てきた人がそれを止める形になった。
「……え〜と……カンペ、カンペ。」
「あ?なんだてめー?」
リインの台詞よりもさらにのんきな台詞が聞こえたかと思うと、声の主は不良とアリサちゃんの位置に割り込んだ。
不良の一人が動揺し始めた、どうやらこの人と認識があるらしい……
私は顔を確かめようと前側に回り込んで、紙を読んでいる人の顔を見た。
「あれ拳太!?」
「姫菜?伶哉も店にいたけど……お前らサッカーしてたっけ?………まっそれは後ででいいや。」
アリサちゃんとはやてちゃんが不思議そうに私と拳太の顔を見比べている。
拳太はそれに気づかないで紙に書かれてることを読み始めた。
「え〜……店の前での喧嘩は迷惑です、やめて下さい、それと道で横一列になるなとお母さんに言われなかったのかこのドロップアウトのクズ野郎たち……以下略……俺より、ご静聴ありがとうございました。」
ペコリと礼をしてアリサちゃんとはやてちゃん、リインと私を後ろに下げる拳太。
後ろから心配そうになのはちゃんとすずかちゃんがやってきた。
拳太は続けて相手に何か言っている。
「あの人……あの時の人……姫菜のお兄さんだったんだ。」
「アリサちゃん、知ってるの?」
「前にお世話になってね、きちんとしたお礼をしたかったんだけど名前も知らなかったし。」
アリサちゃんの目つきが明らかに優しくなってる、なんでだろう?今はそんな状況じゃないのに……
拳太の方はというと、高校生とか中学三年生のグループにひたすら何かを言っている、内容は説得だけど色々失礼な言葉を敢えて使ってるところを見ると、相当イライラしてるらしい。
アリサちゃんが前にでた、
「早く行くなら行ってください、これからはもう横に広がらないで下さい。」
「うっせぇんだよガキッ!!」
拳は速かった、ザフィーラのに比べたらまだまだだけどそれでも一般の人なら怪我をさせることくらい簡単にできる、きっとボクシングをやってた人だ。
そんな拳を、その人は平気でアリサちゃんの顔に向けて放った。
パアァァァァァン……
乾いた音が響いた、皆が息を呑んだ。
だけどアリサちゃんは無事で、その人のパンチは拳太が片手で止めていた。
拳太に怒りのオーラが纏うのがよくわかった。
小さな声なのに全員の耳にしっかりと聞こえた。
「姫菜、友達連れて中に行け、俺が帰ってくるまではいろよ。」
「うん、ほら皆中に行こう?」
「でもこの人は……」
「いいからいいから」
強引に店の中に押し込む、拳太はそれを見届けると不良グループを連れてビルの隙間に入っていった。
すぐにアリサちゃんが飛びついてきた、
「ちょっと姫菜!!大丈夫なの!?」
「大丈夫だよアリサちゃん、後二分待ってね。」
不安そうにオロオロするアリサちゃん、拳太のことを心配してるのかすぐにでも警察を呼びそうな勢いだ。
その場合、捕まるのは多分拳太になると思う。
ミルキーが目を掻きながら念話で、
[拳太君は紳士ですからね〜顔を狙ったとあったらあの人たちは無事じゃ済まないでしょう]
[そうだね、きっと真面目な人たちになって帰ってくるよ]
[拳太君、以前アリサちゃんと出会ってたみたいですね、その時もなにかあったみたいですけど]
そこは謎だ、アリサちゃんの他になのはちゃんのお姉ちゃんもオロオロしてる。
拳太と一緒に出かけるって言ってた人かな?ここに拳太がいるってことはその可能性は高い。
それと……あのテーブルに乗ってるケーキの大群は一体………
二分と言わず一分と少しで拳太は来た、店に入ってくる前に表の崩れた椅子を直してる。
全て終えてやっと店に入ってきた。
さっきの怒りオーラは完全に消えて、いつもよりも爽やかな笑顔だ、さっきちょっとした喧嘩をしてきたとは思えない。
「お騒がせしました、説得の末、あの人たちは大人しく家に帰りましたよ。」
「そうか、すまないな拳太君、任せてしまって……」
「お店の人が他の人に危害を加えるわけにはいきませんからね、こういうときはこうするのが一番ですよ。」
にっこりと、少し赤いのが付いた手をタオルで拭く拳太、自然なんだけどどこか違うと私は思う。
兄は案外裏表のギャップが凄いことを今再確認……そうじゃなくて!!
「拳太はどうしてここにいるの?」
「美由紀さんに案内されて、今ケーキを食べてたところなんだけど外で荒れくれものがイタズラしてたからここの人に代わって注意を。」
美由紀さん、髪の毛を三つ編みにした人が私に手を振ってくる、優しそうな人だ。
となるとあのケーキの大群は拳太のか……なんでこんなことしてるんだろう?
アリサちゃんが動いた、
「あの……どうもありがとうございました、また危ない所を助けてもらって。」
「また………?………あ!!シュークリームくれた!!」
「あの時もありがとうございました。」
「いえいえ、俺も美味しいものをどうも。」
お互いに頭を下げ合う二人、どこか可笑しくて私は笑った。
それが店内にも広がる……二人は拳太の席に座った、そこに行こうとするとはやてちゃんに止められる。
「姫菜ちゃん、しばらく様子見や。」
「……………?」
わからなくてミルキーの方を見る、そういえばすっかり忘れてたけどミルキーはここにいていいのかな?
そう思っているとミルキーはドアを開けて外にでた、
[私はお醤油買って帰りますね、後は三人で帰ってきて下さいな?]
[うん、分かったお願いね?]
五人で席についてアリサちゃんの方をじっと見てる、リインと私はなんだかわからないか二人でケーキをつつき合った。
Side拳太
「前にも言ったけど、ああいうのにはあんまり噛みつかないほうがいいよ?何しでかすかわからないんだから……」
「すみません……でも、許せなかったんです、ああいうのが。」
俺が受けなきゃ一生残りそうな怪我をするところだ、あの人はボクシングやっててそれを武器に不良になったらしい、実に馬鹿馬鹿しいけど。
路地裏で囲まれたとき、その人は明らかリーダー格だったけど一発で沈んだ、動揺が走った仲間たちも丁寧に潰してあげた。
でも、俺は不思議と怒る気はなかった、
「でもまあ、自分の意志を貫くのは好きだよ、俺?後敬語止めて、姫菜に話してたみたいで構わないからさ」
俺もそろそろこんな喋り方止めたいところだ、優しく語りかけるなんて疲れる。
ケーキの一つを渡す、どうせいっぱいあるしいいだろう、金髪の子はそれを受取って食べ始めた。
そして話始める、
「じゃあ……アタシはアリサ、アリサ・バニングスよ、よろしくね。」
「そんな感じでな、こっちもそうさせてもらう、有馬拳太、姫菜の二番目の兄だ。」
「アタシは拳太って呼ぶわ、拳太はアリサって呼んで、いい?」
「構わない、アリサは何時姫菜と?」
ついでに伶哉も、サッカーのチームに所属してないこいつ等がここにいるのはおかしい。
アリサの話だと、サッカーの観戦に来てた伶哉が飛んできたボールからアリサ達を守ったのが切っ掛けでここに招待されたらしい。
となるとあそこにいるのはアリサの友達達か。
ふと、俺のデバイスが反応してるのを感じた、魔力反応が三つ……姫菜と伶哉を除く……魔導師……
「なあアリサ?あそこでこっちをずっと見てる奴等は?」
「えっ!?ちょっとはやて!!なに見てんのよ!?」
「ええや〜ん、別に減るもんでもあらへんし?」
アリサは頭にバッテンをつけた二人の、茶髪の方に近寄って何か言っている。
反応の発生を絞ると、バッテンの二人と、その横のリボンで髪を結んでいる女の子から反応が出てることがわかる、それも俺達よりも大きい反応だ。
シグナム達の闇の書は本来ばれてはいけないもの……大分前にそうやって聞いた俺は、魔力の反応を下げて気付かれないようにする。
そうしてると全員がこっちにやってきた、
「初めまして、高町なのはです。」
「私ははやてって言います。」
「お久しぶりですね、月村すずかです。」
「リインフォースです、よろしくです。」
「初めまして、俺は有馬拳太、姫菜の兄だ。」
なのはにはやて、それにリインフォース。
完全に顔と名前を記憶して油断しないようにする、あんまり俺たちに関することは言わないことにする、特にシグナム達の事は伏せておこう。
「それと、すずかだっけ?あの時はシュークリームありがとうな、おかげで良いところを知れたよ。」
「いえ、お礼をするのは私の方です、あの時はどうも……」
「やっぱり、アリサちゃんとすずかちゃんはこの人に会ったことがあるん?」
「うん、春の中頃くらいかな?危ないところを助けてもらったんだ。」
「そこから騎士様が生まれるんやね?」
「はやて!!変なこと言わないの!!」
騎士?今時そんなのは我が家にしかいないだろう。
シグナム達のことがばれたわけじゃなさそうで、多分もっと別の会話から来た話だろう、今時の子は大分しっかりと話すもんだ。
俺は皆で好きなのどうぞ、とケーキを一つずつ渡して自分の分をさり気無く減らしていく、さっきのちょっとした運動では消化の手伝いにもなりはしない。
「拳太、今日はここにくるんだったのか。」
「まあな、そう言う伶哉は大分人気者になってんな。」
「ちょっと色々あってさ、後俺、このサッカーチームに入ることにしたから。」
急な話だけど特に気にする必要はない、伶哉も魔力を抑えてる、ミルキーが居たってことはこの三人については知っているんだろう。
そこまで分かってるんだった俺には問題ない、適当にあしらって自分の席に戻って格闘を開始する。
「君は伶哉君のお兄さんなんだって?」
「はい……恭也さんのお父さんですか?」
「高町士郎だ、さっきはありがとう……と言いたいが、相手は無事かな?」
「気づいていますか……大丈夫ですよ、まだノビてる頃だと思いますけど。」
士郎さんは頼んでいないがコーヒーを置いてくれた、きっと気を使ってくれたんだろう。
俺の体を一通り見ると、
「君は何かやってるのかい?」
「ちょっとした剣術を少し……自慢できるほどじゃあないんですけど。」
「ほう、やっぱりか、その体つきなら…とは思ったよ。」
恭也さんのお師匠はお父さんだと聞いたことがある、あんなに強そうな恭也さんでもまだ勝つことは出来ないんだとか………世の中広いぜ。
いつになったら俺はシグナムに勝てるようになるんだか。
自分で考えるだけなのに気が遠くなりそうだ………
「まあゆっくりしてってくれよ、今後とも御贔屓に。」
「ええ、時間があれば必ず。」
今日で高町家の全員と話したことになる、どの人も優しい人だ。
なのはって子には面白い友達が多いしねじ曲がった考え方はないし、さっきみたいに正しいことを突き通す奴等は今では珍しい。
上から目線っぽく聞こえるけど正直少し感激した。
チョコレートケーキ、普通のとはまた一味違うものをフォークで弄ってると、次は後ろの方に気配を感じた。
「……食べるのか?」
「いいんですか!?」
「いっぱいあるから……お替わり自由でいいぞ。」
「ありがとうございますです。」
リインがチョコレートケーキとシュークリームを持って向こうの方向にトテトテと駆けていく、転ばないかと危惧したけど案外大丈夫だった。
一向に終わりの見えなかったケーキの群れが、ドンドンと相手方に献上され消化されていく様は、空腹時だったら嫌に思っていたが今なら良いことしたと思う。
「いいの?みんな持ってかれちゃうわよ?」
「いいよ、もう満足したし、アリサも食べる?」
「遠慮するわ、アタシもいっぱい。」
「そうか。」
他愛のない話で盛り上がっていると、サッカーチームの子供たちは皆解散していて、店の中には俺達しかいなくなっていた。
リインのおかげでケーキも消化しきり、一息ついた、静かな時間がゆっくりとしたリズムで刻まれていく。
「お前らって、結構大人っぽいな。」
「な……!何言ってんのよ!!まだまだアタシ達は子供じゃない!?」
「いやいや、謙遜してるとことかそういうのも含めて、しっかりしてるっていうのか?姫菜とは大違いだ。」
「拳太!!ヒナはそんなに子供じゃないよ!」
なのはがあはは…と乾いた笑みを浮かべる、本当にそうだ、話してる言葉はしっかりとしてるし何よりも世の中を知ってる。
俺がこのくらいの時は……悪戯と危険な遊びぐらいしかやってなかった、今思えばとんだ恥ずかしいことこの上ない。
アリサはふんっ!っとそっぽを向いた、あれ?怒らせたか?
「大人扱いは嫌いか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど………」
「じゃあなんなんだ?」
どうもハッキリとしない、なにか言葉を考えるようにアリサはそこで言葉を詰まらせた。
八秒くらいで俺から打ち切る。
「まあ、思いついたらでいいや、そろそろ帰らないとだからな。」
「そうなの……ちょっと待って!!」
アリサが桃子さんに紙とペンをもらうと、そこに何かを書き始めた。
記号やら英語やらで数字やら、おそらく携帯のアドレスだろう、それを全員に書かせていくアリサ。
「これ、皆の連絡先、帰ったらメール頂戴?」
「わかったよ、じゃあ、また会えたらな。」
「ばいば〜い!!」
「じゃあね姫菜ちゃん、また今度。」
「うん、今度。」
翠屋を離れる、茜色の空が段々と紺に染まりその色を濃くしていく。
夜と昼の境界線、月と太陽が役目を代わる時間、俺達はその中を歩いていく。
「今度の日曜から俺は練習だから、スパイク買わなきゃ。」
「瑠斗に言っておけよ、道具一式揃えないと駄目だろ?」
「ヒナは観に行くね。」
気配を感じる、それを悟られないように伶哉たちと会話する、周囲に人の姿はない。
伶哉もそれに気づいている、ポケットの中でデバイスを握ってるのが隣から見て取れた。
気配が、動いた。
住宅の間から黒い影が躍り出て俺達の進路を塞ぐ様に着地した。
「その紙をこっちに渡してもらおう。」
いかにも怪しいと格好が物語ってる、むしろ普段からこんな恰好してるなんて変態かこの人?仮面被ってるし………
恐らく……男、は続けた、
「喫茶店でもらった紙だ、それを寄越してもらおう……」
「今じゃ個人情報は周囲に流すのは禁止でね、お断りしますよ。」
「そうか……なら力ずくで行く……」
ゆら、と輪郭がぼやけて男の姿が見えなくなる。
それよりも違うところで俺達は驚いた、魔力反応だ、
「魔法!?ヒナは防御と通信、シグナム達を呼べ、ここで魔獣は出せない!!」
「非殺傷の物理破壊無し、相手は知らねえけどそれで行けよ拳太!!」
「分かってる。」
相手の狙いは俺が持ってる紙……あれか?今時の魔導師は詐欺の為に人を襲おうってのか?いやいやいや、もしかしたらあの魔導師三人は何か巨大な組織に繋がってて、この人はその敵で、相手の情報を掴むためにこの電話番号が欲しいとかか!?
だがそんなことに多分一般人なアリサとすずかを巻き込ませるわけにはいかないし、なんだか殺気立ってるみたいだし紙を渡さないと応戦は絶対だが雰囲気的に勝てる気がしない、シグナム達と戦ってるときの、それ以上のプレッシャーを感じる相手だ。
いや……待てよ?
「ヒナ、シグナムは!?」
「後少しで来るって!!それまで耐えて!」
「いや、こうする……」
ポケットから一枚の紙を出して目の前にひらつかせる、案の上、男は姿を現した。
こっちに近づいてくる、それを俺は片手で制した、
「アンタはこの紙が欲しいと見た。」
「そうだ、それは貴様らには必要ない。」
「だとすると、俺達があの三人に近づくのは好ましくないんだな?それともう一つ、この内容が重要なのか?それよりも先のことが重要なのか?」
「…………紙自体は興味無い、貴様はそれを渡せばいい。」
だとするとやっぱりあの三人は何かやってる、この男が俺達闇の書の主にこうまでして他の魔導師に関わってほしくない理由、それを探し出さなくては。
交渉は続く、
「内容は使う気がない?つまりはあの中で俺達が関わると困る人があんたには居るってことだ。」
「その答えは半分しか当たって無い、だが、内容には興味がない、奪い次第削除する。」
「あの人が言ってること、怪しすぎない?」
「ヒナ、信用できない………」
後ろで二人はこそこそと話す、こうしていているのに一向に他の人が来ないのはどういうことだろうか?
男は読んでいるように、
「結界を張っている、お前らの守護騎士が来るのにもしばらくかかる。」
「そうかい、つまりここでこの紙をお前に渡しても、あの五人には危害がない、そう言ってもいいのか?」
「ああ、約束しよう。」
「じゃあ、こうする。」
手に持った紙に魔力を通して四散させる、紙は何があっても復元不可能な状態にまで分解されて、粉のように辺りを舞う。
ちょっとだけ、早まった気がしなくもない……
「お前がこの紙の消滅を望んだんなら商談成立だ、今すぐいなくなってもらいたい。」
「貴様………」
「ほら、帰れよ?」
「……ふん、まあいい……」
男は音も立てずにいなくなる、気配完全に遠ざかって、結界が解かれるのが確認できた、しばらくしてシグナム達が飛んでくる。
全員完全武装だ、だけど私服だから迫力は台無しだけど………
シグナムが張りつめた声で、
「敵は!?大丈夫だったのか!?」
「ああ、帰った、当分来ないと思うぞ。」
「怪我はないようだが……目的はなんだったんだ?」
「なのはちゃん達の携帯のアドレスを寄越せって……」
「だから渡さないでバラバラにしてやった。」
一種の賭けだったけど結果オーライだから良しとしよう、あそこでもしキレられて襲われたら大変なことになっていた。
俺はシグナムに念話で、
[後でいくつか聞きたいことがある、二人きりでだ]
[分かっている、私のわかる範囲でなら話そう]
「でも、アリサちゃんのアドレスが……」
「まったく問題ない、俺の力を使えば……ほら。」
幻影でさっき消した紙を生成する、デバイスに瞬間的に記憶したから内容は間違えてないはずだ、これさえあればアドレスと番号は大丈夫だ。
俺の幻影に実体を持たせる力は結構便利だ、物さえ知ってればそれが作れる。
「拳太の方が一本上手だったのか……」
「俺も相手が襲う気満々なら死んでたけどね。」
「私たちがついていながら……すまなかった。」
逆に今日の襲撃に対応できる方が凄いわ!!とシグナムにツッコミを入れて俺は歩き出す、とりあえず帰ろう。
すっかり日は暮れて月明かりの中、俺は今日の出来事をまとめる為に、シグナムに聞くべき質問を考えた。
Side無し
拳太達が歩いている道の上空三十メートル程の高さに、二つのもの影があった。
先ほどの男ともう一人、そのどちらも同じ格好、同じ髪の色をしていて、見わけをつけることは難しい、その中の一人が悪態をついた。
「今回はあっちが上手だったようだな……」
「これからの作戦に支障は?」
「念の為の回収だったが……まあいい、どのみち止められはしないさ……最後の時まで。」
男がポケットから銀のカードを取り出して、それを拳太達に重ねた。
「デュランダル、永遠を終える為に……」
そう言って二つの影は上空から消えた。
あとがき
分かる人には分かる二人、ちなみにどっちかは作者も悩む……(おい
いつもより早い間で書くことが出来たのはいいんですがちょこちょこ直したり学校の方でいろいろあったりとで投稿には至らず……
はやてに関してはノータッチでお願いします、お願いします(大事なことなので二回言う)
結局まだ本編に入れずにここら辺をウロウロウロウロ、いきあたりばったりな感じです、たまに書いておいたものを消してアワアワする自分がいます。
感想、ご意見、アドバイス、お待ちしております。
作者さんへの感想、指摘等ありましたらメ−ル、投稿小説感想板、