悠久幻想曲 「ヴァンパイア・ジュエル」第一話
注:ここでの主人公の名は悠です。
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今日はおそらく俺の今までの人生において
最低な日であると思う。なぜなら・・・・
「おい、悠!ぼんやりしてないでおまえもやってくれよ」
あーもう、せっかく人が現実逃避をしているときに・・・・。
今の声の主はアレフ。
とある事件から、ジョートショップを手伝ってもらっている。
こいつは普段は女の子とふらふら遊んでばかりだが、意外と
仕事はそつなくこなす。
だが、そんなアレフもさすがに声に張りがない。
まあ、もうかれこれ6時間はやってるからな・・・・。
はあ・・・・・・・・
「悠君。これはどこに置いておけばいいの?」
「あ、シーラ・・・それはそこの棚の中に置いておいてくれ」
「うん、わかったわ。」
そう言って、てきぱきと書類を片づけていく。
本人はピアノやらなにやらで忙しいのにもかかわらず、
積極的に手伝ってくれている。
本当に心優しい女の子だ。
仕事のほうもてきぱきとそつなくこなせる。
もうこれは一種の才能だと言っても過言ではないだろう。
俺なんてシーラの二分の一くらいしかこなしてない。
だいたいからしてこの仕事が・・・・
「さっきから何ぶつぶつ言ってるのよ,悠。早くやらないと徹夜になるわよ」
書類の波に埋もれて、パティは必死で計算している。
パティは普段さくら亭で家事一般をやってるからな。
この手の計算はお手の物だろう。
それにしても、いつになったら終わるんだ、これ?
俺は書類と格闘しながら、そんなことをぼんやりと考えていた。
そもそものはじまりは、3ヶ月前に起きた美術品窃盗事件だった。
その日、美術館で大量の窃盗事件があり、自警団が調査した結果、
美術館で盗難にあった品物は、何と俺の部屋になぜか置かれていた
のだ。もちろん俺に身に覚えはまったくない。断じてない。
にもかかわらず、俺は問答無用で投獄された。
だがそんな俺の窮地を救ってくれたのが、俺が居候している家の主人
アリサさんだった。この人は、店を担保にしてまで、俺を牢屋から
出してくれたのだ。だが、その金は一年以内に返さなければ、
アリサさんの店「ジョートショップ」は他人のものになってしまう。
そこで俺は一年間必死で働き、住民の信頼を得て、再審を行って、
自分に罪がないことを証明することを決意した。
そして、そんな俺の窮地を助けてくれているのが、今ここにいる
アレフ、シーラ、パティだった。皆、自分のことで忙しい(アレフはどうかな?)
にもかかわらず、店の手伝いを快諾してくれた。
俺はこの時ほど、嬉しかったことはなかった。
こうしてジョートショップ、そして俺達はスタートを切ったのだ。
「・・・・それにしたって、この書類の量はすごいな・・・」
今俺達がやっている仕事は、アリサさんが受けてきた依頼で、
なんでも知人の店が移転するらしく、その後始末を依頼されたようだ。
それはいいのだが、問題はこの量!
その人が「お願いします」と言って、書類を箱で30個分ぎっしり持ってこられた時は
さすがの俺達も一瞬唖然とした。
それで夕方ごろからとりかかってはいるのだが・・・・・
どうやらものぐさな人だったらしく、計算その他が実にいい加減だった。
おかげで、どれがどれだかさっぱり分からず、新しく書類をまとめ
あげなければならない羽目に陥った。
「・・・・・もう俺目が疲れてきた・・・・・・」
「さっきからごちゃごちゃうるせえな、悠。さっさと終わらせようぜ」
アレフがペンを持ちつつ、疲れたようにそう言った。
確かにぼやいていても仕事ははかどらない。よし!
「わかった!じゃあびしっと終わらせるか!!」
俺は気合いを入れて、ラストスパードをかけた。
せっせと書類に書き込んでいく。
「どこからあんな元気がわいてくるのやら・・・・・・」
あきれたような声を出すパティを尻目に、俺は仕事を続けた。
そして数時間後・・・・・・・
「・・・・・・や、やっとおわった・・・・・・・・」
「こ・・こっちも・・・完了・・・・・・・・・・・」
「・・・・私も・・・・終わったわ・・・・・・・・」
「計算も・・・ぜんぶできたわ・・よ・・・・・・・」
さすがにみんなもう口も利けないくらい疲労していた。
はじめはみんな喋りながらやっていたが、途中からは
もうみんな無言で淡々と仕事をしていたのだ。
「みんな、ごくろうさま。ごめんなさいね、急に仕事を頼んで・・・」
アリサさんはもうしわけなさそうにそう言った。
「いえいえ、いいんですよ。アリサさんの知人さんの依頼を
無下には断れませんよ」
俺が努めて笑顔でそう言った。
「ありがとう、悠君。それにみなさんも」
「いいえ、気になさらないでください、アリサさん」
「早々これも仕事の内。じゃあ今日はこれで終わりにしようぜ」
「じゃあ今からうちに食べに来る?おなかも空いたでしょう?」
パティがそう提案を出してくれた。そうだな、ずっとやってて
腹も減ったしな。
「よーし!じゃあみんなさっそく・・・・・・・」
さくら亭に行こうか・・・と言おうとしたとき、無情にもそれはやってきた。
「・・・・す・・・すいません・・・。ジョートショップは
こちらでしょうか?・・・ご相談したいことが・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なんだって?今相談って聞こえたんだけど?
気のせいか?気のせいだよな!
そう心を無理矢理納得させようとすると、
「・・・・・・あの・・・いらっしゃらないんでしょうか?」
ちらっとみんなのほうを見ると、みんな無言で
嘘だろ?っていう顔をしている。(アリサさんとシーラは変わらず)
おいおい・・・・もうこれ以上できないぞ。
仕方ない、今日はお引き取りねがおうか・・・と思ったその瞬間
「はい、そうですよ。どうぞ中にお入りください」
にこにこ顔でアリサさんが中に入れる。
俺の決意・・・・・だいなし。
「アリサさん!ちょ、ちょっと・・・・」
「あら、どうしたのかしら、悠君?」
「え、いや・・・・なんでもないです」
そんな曇りのない笑顔で聞かれたら、俺としても何も言えなくなる。
「おいおい、これじゃあ朝になるぞ」
俺を部屋の隅に引っ張り声で耳打ちするアレフ。
「しかたないだろ。アリサさんが中に入れちゃったんだし・・・」
「でもよ・・・今日はもういいじゃないか?明日にしてもらおうぜ」
「だめよ、アレフ君。何かお困りになっていらっしゃるみたいだし・・」
「そうよ!こんな夜中に尋ねてきたんだから、相当焦ってるんじゃないの?
助けてあげないと・・・・・」
「・・・・・あの・・・・・・」
「(無視)うーん。アレフの言うことももっともだし、シーラ達の意見も
納得がいくし・・・・」
「明日、明日。な、そうしようぜ,悠」
「悠君、話くらい聞いてあげましょう」
「そうよ、悠!ジョートショップが頼られてるのよ」
「でもな・・・うーん・・・」
「・・・・・ちょっと・・・・・・・」
「(さらに無視)あーもうはっきりしない奴だなー!」
「悠君、私は悠君のこと信じてるから・・・」
「どっちなの?悠!はっきりしなさい!!」
「このばあいはどうするべきだろうか?」
「・・・・えーと・・・・・」
「(とことん無視)ほら、早く決めろ!」
「相談にのってあげましょう!」
「男だったらびしっときめなさいよ!」
「うおおお、どうしればいいんだ!」
「・・・・・聞いてます?・・・・・」
「「「「さっきからうるさいな!!!!黙ってろ(て)!!!!」」」」
思わずはもってどなる俺達。
とりあえずうるさい依頼人を黙らせて、俺達は再び相談を・・・・・て?
「・・・・あ・・・・・?」
依頼人?
ふと気がつき振り返ってみると、
そこには、泣きそうな顔をしている依頼人と
ちょっぴり恐い顔をしているアリサさんがいた。
「あの・・さっきはすいません。ついどなったりして・・・・」
「いえいえ、もう気にしていませんから」
ぺこぺこ平謝りする俺に、温和な笑顔でお茶を飲んでいる依頼人。
見たところまだまだ30代くらいの上品な中年と言ったところか。
ただ顔色の悪さと気の弱そうな雰囲気が出ているため、魅力が
半減している。
「で、あのご相談したいこととは何でしょうか?」
俺はなるべく率直に聞いてみた。
「そのことなんですが・・・・あの・・・その・・・・」
何やら言うのを迷っているようだ。
「何かお困りなのでしょう?私たちでよければお力になりますから」
シーラが優しく微笑みかけてそう言ったが
「は、はあ・・・ですが・・・・・」
まだ何か口をもごもごさせるだけで、何も言わない。
あーーもう、いらいらする!!
「大丈夫ですよ。こう見えても俺達いろいろこなしてきたんですから。
どんな依頼でもぱっぱとやってみせますって!」
どこからそんな自信が湧いてくるんだ?と言わんばかりに
自信満々にそういうアレフ。
「・・・分かりました・・。では正直に言います。実は・・・・・」
そう言って、依頼人は話しはじめた。その依頼とは・・・・・・
「「「「えーーー!!!!ヴァンパイア!!!!」」」」
どうやら・・・今日はまだ簡単には終わりそうにない様である。
<第二話に続く>
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