コミックパーティ 「TOMORROW」その一




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『本日のコミックパーティはこれで終了いたします』



パチパチパチパチ!



会場に響く拍手と口々に広がる名残を惜しむような、

終わりを口火に声を上げる人の声が会場中に広がっていった。

「これでコミパも終わりか・・・・・・」

いつもこの瞬間は寂しいような、精一杯やったという達成感のような

複雑な感傷にさらされる。

「同志よ!何をぼんやりとしている!!」

・・・・感傷時間、終了。

「いつでもどこでも騒がしいな、大志。今すぐ片づけるよ・・・・
で、手伝いにでもきてくれたのか?」

「笑止!!我が輩にはより高みに上るがゆえにやらねばならぬ事が多い!
片付けなどに割く時間はないわ」

くくく、といつもの調子で笑う大志。

まったく我ながらどうしてこんな奴と腐れ縁なのか、人生に疑問に思うぞ。

どうせしょうもない事だろう・・・今日買った同人誌を整理するとか読むとか。

「なら、俺にかまってないでとっとと行けよ。
手伝う気がないなら邪魔だぞ、お前」

「うむ、だが今は会場中どこへ行っても混んでいるのでな。
我がエターナルフレンドの様子を見つつ、今日の収穫品を整理するべく来たのだ。
感謝するがいい」

「それのどこが感謝できるんだ!結局プラスにならんどころか、ただの邪魔だろう!」

あ、俺の言葉を無視して本当に整理してやがる!?

まったく腹が立つな・・・・

この場合俺が何を言っても聞きやしないだろうから、無視しておく。

さて片づけ片づけ・・・

「和樹、もう終わった?」

「お、瑞希じゃないか。まだ帰らなかったのか?」

片づけをする手を緩めつつ、俺は視線を合わせる。

「高瀬 瑞希」・・・・・大志の次に縁のある女の子で、高校の頃から親しくしている。

俺が一年前同人誌を作るって決めた時は随分反対されたが、

今ではある程度理解してくれて、こうしてよく様子を見にきてくれている。

「あんたこそまだ終わらないの?せっかく一緒に帰ろうと思ったのに・・・」

少し照れくさそうに、瑞希は頬を染める。

高校からの長い付き合いであるが、こういう仕草は新鮮でこっちも照れくさくなる。

それに近頃一歩進んだ関係になっている気がするし・・・・

「ちょっと待ってろよ。もうちょいで片付くから」

「大志、あんたも手伝いなさいよ!和樹がこうやって活動してるのもあんたが誘ったからでしょう!」

瑞希がずかずかと椅子に(しかも勝手に)座っている大志を近寄り、

ゆさゆさと揺さ振りをかける。

「ふっふっふ、今回も敵ながらいい味を出しているではないか・・・・」

「ちょっと聞いてるの、大志!同人誌読んでないでこっちむきなさいよ!」

がくがく、ゆさゆさ・・・・・・・

瑞希が必死で呼びかけようとしているが、当の本人は完全に本の世界に没頭している。

奴をこっちに帰還させるのは激しく難しいと俺の勘が告げる。



・・・・結論・・・・・



「さて、片づけをさっさと終わらせよう」

もめている瑞希と大志(正確には瑞希一人)をとりあえず蚊帳の外にして、

俺は荷物を片づけ始める。

周りを見ると、徐々に他のサークルも帰り支度が終わりかけているようだ。

「えーと、後の会計は家に帰ってからにしておくから・・・」

「和樹、どや?もう片づけはすんだか?」

顔を上げると、そこには俺がこの活動をはじめた当初から

いろいろな意味で世話になっている「猪名川 由宇」がそこにいた。

「うん?もうそろそろ終わりだ。どうだった、今回は?」

「まあぼちぼちって所や。あんたの所は完売の様やな」

どうやら整理状況を見ていたようだ。

俺は頷いて、

「ああ、本当にこうして応援してくれたり、面白いですよって言ってもらえるだけで
描いた甲斐があるなって思うよ。
一年前は想像もつかなかったけどな・・・・」

大志に実際にここへ連れられて、春コミに来た俺。

そこは本当に俺が認識していなかった世界で、熱い舞台でもあった。

目の前の由宇の同人誌を読んで話し、詠美の技術とテクニックに驚いた自分。

あの時は俺がこうして同じ舞台に立つとは想像もつかなかった・・・・・

「ほ〜、なかなか言うようになったやんか。
でも、それでこそウチが見込んだ男や。しっかり励みや。
まだまだこの世界、ひろいんやで。
ウチも頑張るさかいに、あんたもしっかり進んでいきや」

ああ、分かっている・・・・俺もまだまだこれからだ。

俺はグッと親指を立てる。

「ええ根性や。ところでさっきから気になってたんやけど、
あそこ、何の漫才なん?」

瑞希と大志のやり取りを指差して、由宇は不思議そうにみる。

「ああ、あいつらは新手の夫婦漫才なんだ。
今頑張って修行して、将来はハリウッドを目指すらしい」

本人達が聞いてないのをいい事に、言いたい放題言う俺。

「なんや、そうやったんか。でもあのけったいな兄ちゃん、聞いてないみたいやで」

「そっとしておこう。彼らなりに必死なんだ・・・」

「ほー、まあ瑞希っちゃんは案外その手の才能がありそうやな。
ちょっとからかうと面白い様に反応しよるし♪
例えば・・・・・こうやってみるとか♪」

そういって、ぎゅっと俺の腕を胸に抱きかかえる由宇。

「お、おい?!」

由宇の柔らかい感触に戸惑う俺。すると・・・・・・

「ちょ、ちょっとそこの二人!!何してるのよ!!!」

先ほどまで大志と話していた瑞希が、表情をひきつらせてこちらへやってくる。

「ちょっと和樹!何してるのよ!片付けもせずに、その・・・・いちゃいちゃして!!」

「し、してないしてない。これは由宇が勝手に・・・」

「ひどいわ〜、うちとの関係は遊びやったいうんか?
うち、和樹やったから全部・・・・」

全部って何だーーー!?

ああ、まずまず瑞希が恐い顔になっていく〜〜〜!?

「ちょ、ちょっと待て!?ありもしない事を真顔で言うな、由宇!!」

「何いうてるねん、いややわ。うちらの関係に遠慮なんていらんよ♪」

「ほ、ほほう・・・和樹さん、どういう事か説明して下さらないかしら?」

み、瑞希・・・・にこにこ笑顔だけど、全然目が笑ってないぞ・・・

・ 俺は迫力に押されつつも、言葉を口に出す。

「こ、これはだな、由宇の自作自演であって、俺達はただの友達だって。
大体俺なんかにそんな魅力がある訳ないだろ?」

「・・・・・そんな事、ないわよ・・・・・」

「え?」

「な、何でもない!と、とにかくこんな場所で不健全な事をしないの!
猪名川さんも早く手を離しなさいよ!」

今瑞希、ひょっとして・・・・・

「あはは、そんな怒らんでええやん、瑞希っちゃん♪」

あくまで明るくそう言って、俺の腕を離す由宇。

うーむ、ほっとしたような残念なような・・・・って何考えているんだ、俺!?

「それにしても瑞希っちゃんはほんま面白いわ。
ちょっとからかったら、面白い様に反応してくれるから、うちは嬉しいわ♪」

「か、からかって・・・た?」

「いやん、そんなに睨まんといてや。可愛い顔がだいなしやで」

・・・・ここまでしらっと言える由宇もたいしたもんだと思う。

「・・・・はあ、何か疲れたわ・・・・」

「まあまあ、そんな顔せんと。
瑞希っちゃんは、今日も和樹の応援にきたんか?」

由宇の質問に、ちょっととまどい気味の表情になる瑞希。

「ま、まあ今日は暇だったし・・・・
それに和樹はどこかぬけてる所があるから心配だったし・・・」

ごにょごにょと声が尻つぼみになっていく瑞希。

どうしたんだ?いつもはもっとはっきり言うのに・・・・

「瑞希っちゃんはもうちょっと押しが強くないとあかんな。
どっかの朴念仁はなかなか気づいてくれへんで」

「う・・・・ベ、別にいいの!それより和樹に用があるんじゃないの?」

「あっと、そうやったそうやった。
うちとした事が瑞希っちゃんをからかうのについ熱中してもうたわ」

失敗失敗とばかりに、ぺちぺちとおでこを叩いて笑う由宇。

その横で瑞希が疲れたようにため息を吐く。

・・・・・気持ちはすごく分かるぞ,瑞希・・・・

「それで俺に用って、何かあるのか?」

「まあそうたいしたことはあらへん。
和樹って瑞希っちゃんもやねんけど、帰り一緒に食べに行けへんか、皆で?」

「食べに行く?皆でか?」

俺は瑞希と顔を見合わせた。














<その二>に続く

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