こみっくパーティ 「TOMORROW」 その七




--------------------------------------------------------------------------------
 久しぶりに集まる仲間とのささやかな宴。

一人一人が住む場所も、そして生活環境もまったく違う中で笑いあい仲良くしている。

高校時代にはなかった新しい世界に、俺は嬉しさと戸惑いを宴を通して感じていた。


「うーむ、未成年者が多いのにめちゃめちゃ飲んでいるよな・・・」


 先程詠美も酒を飲みすぎて気分を悪くしていたから、そろそろ止めないといけないのかもしれない。

自分もぐびぐび飲んでいるからあまり人のことは言えないかもしれないが。

見た所南さんは平気そうにしているけど、付き合っている幹事の由宇は顔を真っ赤にしているしな。

由宇の奴は酒は相当に強そうだが、やはり飲む量にも限界があるのだろう。


「詠美、気分はどうだ。ちょっとはましになったか?」

「ふにゅう〜、あんまり話し掛けないで〜」


 水を飲んで少しは落ち着いたのか、顔色はそれほど悪くはなかった。

ただやはりいつもの元気を取り戻すほどの余裕はないのか、テーブルにもたれ掛かってグッタリしている。

まあ、しばらくはこのままそっとしておいてやったほうがいいだろう。

ここで余計な事をして、後に引きずるような真似は絶対したくないからな・・・・

普段のテンションと俺への態度を思い出して、小さくため息をつく。


「時間も随分過ぎたし、そろそろお開きの時間帯かも知れないよな」


 居酒屋に掛かっている小さな丸い時計を見ると、すでに時刻は午後十時を過ぎていた。

日が沈んだ時間帯より飲んだり食べたりしていたが、そろそろ数時間は経過している事になる。

俺や瑞希、南さんや雄蔵さんはまあいいとして、

高校生メンバーはそろそろ帰宅したほうがいいのではないだろうか?


「由宇、ちょっと話があるんだけど」


 思いついたら即実行、俺は南さんと相変わらず飲んでいる由宇に手招きする。

俺の声に気がついたのか、由宇は赤い顔をこちらに向ける。


「うーん?・・・・何や、和樹か。何一人で暗くなってるねん。
あんたもこっち来て一緒に飲もや」

「い、いや、俺はもう酒はいいから。それより・・・・・・」

「何言うてるねん!か弱い乙女達が皆飲んでいる時に、一人男がシラフでどないするねん!
ほら、こっち来て一緒に飲む!!」

「い、いや、だからちょっと待てって!?」


 俺の苦情も何のその、由宇はずかずかと俺の方に近寄り襟首をつかむ。

ぐはあっ!?すごい握力だ、こいつ!?


「く、首!?首掴んでいるぞ、由宇!?」

「まったくこの男は甲斐性があるんかないんかはっきりせんわ。
こんなええ女が誘ってるやから、ちゃっちゃと来る!」

「だから俺の話も少しは聞けよ〜〜〜〜〜!!!」


 俺はたまらずに叫ぶが、由宇はあっさりと聞き流しそのままずるずる俺を引きずる。

男として抵抗はしたのだが、何故かまったく抗えもせずに荷物のように俺は連れ去られた。

ど、どういう力をしているんだよ由宇・・・・・・

改めて由宇の恐ろしさを実感しながら、俺は結局南さん達が集まる場に連れ込まれた。


「牧やん、一人お客様を連れて来たで♪」


 由宇は上機嫌で、鼻歌交じりに俺をひょいと南さんの前に差し出した。


「あれ〜?千堂君じゃない。うんうん、一人が寂しくなってきたのね。
今日は大サービスでお姉さんが可愛がってあげるからね♪」


 あははと楽しそうに笑いながら、頬を桜色に染めている玲子ちゃんが俺の鼻をつつく。

あ、あの〜、俺の方が年上なんですけど・・・・

抗議しても無駄な事は認識できているので、むなしく心の中で突っ込みを入れる。


「あらあら、和樹さんじゃないですか。丁度猪名川さん達と御話していた所です。 
和樹さんもご一緒にどうぞ」


 100%の善意の笑顔を向ける南さんに、俺は流石に断りを入れるほどの度胸はなかった。

そんな事ができる人間はよほどのへそ曲がりか自己中だろう。


「は、はあ・・・じゃあお邪魔します。俺はもう酒はいいので」

「まあまあ、そんな遠慮せんと。金取るわけやないさかい、男らしくぐびっといき!」


 どーんと、由宇は俺の前に一升瓶を置いた。

もちろん内容はビールのような単純な代物ではなく、アルコール度の高い日本酒である。

瓶の中は瑞々しい純度をたたえたお酒が静かに漂っている。

俺は頭を抱えそうになりながら、由宇に視線を向ける。

「ひょっとして、もしかすると・・・これを俺に飲めと?」

「もしかせんでもそれは和樹用や。一気飲みに適したサイズやろ?」

「一気飲みなんてできるわけがないだろう!?」


 一升瓶なみなみを一気に供給する事は、相当強い酒飲みにでも結構くるらしい。

ましてや、酒をあまり普段より摂取していない俺には無謀な行為だった。


「おお、千堂君さすが男ね。全国の美少年を惑わす潔さが素敵だわ♪」

「それって褒め言葉になってないし!?それに俺は飲めないって」

「そうですよ、お二人とも無理に飲ませようとしてはいけません」


 めっと少し怒ったような顔で、南さんは二人に注意する。

おお、南さん!貴方こそ俺の守護天使だ、神様だ!

南さんの背中より後光がさしている様な感じがして、俺は両手を合わせる。

だが、俺はその時まったく理解できていなかった。

いつもと変わらない表情で、普段と同じように接して来るからこそ掴めなかったのだろう。

彼女の次の発言で、俺はそれをどうしようもないくらい痛感した・・・・・・


「一升瓶で飲むなんて下品ですよ。きちんとコップに入れないと♪」

「はあっ!?何を言っているんですか、南さん!?」


 南さんの言葉が信じられずに、俺は上ずった声で尋ねる。
すると平然とした顔で、南さんは俺の疑問に答えてくれた。


「安心してください、和樹さん。ちゃんと飲みやすいようにジョッキを用意しますから♪」

「ちょ、ちょっと待ってください!?俺が飲むのに反対なんじゃないんですか!」

「うふふ、何を言っているんですか。男の見せ所ですよ♪」


 だああーーーーー!この人、酔っ払ってるよーーーー!

 ニコニコ笑顔を絶やさない南さんだったが、明らかに日頃とは発言がおかしかった。

うーむ、平然とした顔で酔っているとは恐るべし・・・・・・

俺は別の意味で戦慄を禁じえなかった。

だがそうこうしている間にもジョッキは運ばれて、俺の前にでんと置かれる。


「はーい、和樹〜、全部入れるから遠慮なくのんでったってや」 


 すごく遠慮したいのだが、俺には拒否権はないのであろう。

俺の返答をまったく待たずに、由宇はトクトクトクと勢いよく透明な日本酒をいっぱいまで入れる。

「おおおおお!!!千堂君、ガンバレー!ささやかながら応援しているぞー」


 すっかりできあがった玲子ちゃんが、俺を無意味に煽り立てた。

うう、何が悲しくてジョッキで日本酒を飲みほさないといけないんだ・・・・・

俺は泣きたい気分になりながら、恐る恐る満杯になったジョッキを手に持つ。

さすがに一升瓶全部を入れるのは無理だったのか、瓶自体にはまだお酒は残っている。

だが大ジョッキいっぱいの日本酒というのは美味そうでも何でもなかった。

濃厚な酒の匂いは嗅覚を刺激し、その香りだけで酔ってしまいそうだった。


「ど、どうしても飲まなければいけないのか、これ・・・・・?」


 無駄だとわかりながらも、最後の良心の南さんに聞いてみる。

すると、南さんはなぜか楽しそうに俺を見つめる。


「はい!由宇ちゃんに聞きましたよ。
何でも和樹さんは醤油瓶いっぱいでも飲める豪傑だとか♪」


 俺は南さんに戯けた事を吹き込んだ張本人をにらみつける。

その本人は器用に口笛を吹いて、明後日の方向を向いていた。

あ、後で絶対に仕返しをしてやる・・・・・・・

大体醤油瓶を全部飲める人間がいるのなら、そいつの体の構造は妖怪並に違いない。


「ほらほら〜、千堂くーん、そろそろ盛り上げる時間よん♪」


 うう、もはや逃げ場はないということか・・・・・・・・

俺は腹をくくって、グッとジョッキの掴みに力を入れる。


「おお、和樹ファイトや!」


 由宇の声援はとりあえず聞き流して、俺は思いっきり深呼吸をする。

ああ、神様。どうか急性アルコ−ル中毒にはなりませんように!

俺は心の中で全力で祈りをささげ、一気にジョッキの中身を煽る。

う、日本酒特有の辛味が口の中に広がる・・・・・・・・・・・・・


「それ、一気一気一気〜!」


 由宇のノリのいい声援に感化されたか、俺の喉も激しく潤い始める。

口から供給された日本酒がダイレクトに食道を伝って、胃に流れ込んできた。

うう、これはきくな・・・・・・・・・・


「和樹さん、もうちょっとですよ!頑張って下さい!」

「おお、千堂君が勢い止めずに飲んでいる!!全国の千堂君のボーイズファンには涙ものね♪」


 よく分からない声援と発言をする二人を尻目に、俺の勢いは加速していく。

味も飲み方もあったもんじゃなく、やがて俺は全てを飲み干すことに成功した。

勢いよくでんとテーブルに空になったジョッキを叩きつけて、俺は三人にお辞儀をする。


「ということで!千堂和樹一世一代の一気のみでした!!!皆の衆、拍手〜〜!!!」


 俺の言葉に、三人がおお〜と歓声を上げて拍手をする。

いや〜、ありがとうありがとう!!俺もやった甲斐があったってもんだ、あははははは!!


「さーへと!次は由宇の番らろ!」


 俺は空になったジョッキにビールをなみなみ注ぎ、由宇に差し出した。


「う、うちも一気のみするんか!?」

「とーぜんらろ!俺一人にやらしておいてそれはらめらろう!」


 最早、自分でも何を言っているのかよく分かってなかった・・・・・・・・

由宇は俺の言葉に不敵な顔をしてぐいっとジョッキを掴む。


「面白いやないか!関西の女ののみっぷり、ようみときや!!」

「おっしゃー!!それでこそいい女だ!!一気にいけーーー!!」


 拳をぐっと振り上げて、俺は高らかに叫んだ。

その時の俺の頭の中に、宴の終わりを促そうとする先ほどの考えはすっかり消えていた・・・・・

















<その八>に続く

--------------------------------------------------------------------------------




小説を読んでいただいてありがとうございました。
感想やご意見などを頂けるととても嬉しいです。
メールアドレスをお書き下されば、必ずお返事したいと思います。

お名前をお願いします  

e-mail

HomePage






読んだ作品の総合評価
A(とてもよかった)
B(よかった)
C(ふつう)
D(あまりよくなかった)
E(よくなかった)
F(わからない)


よろしければ感想をお願いします



その他、メッセージがあればぜひ!


     












戻る