こみっくパーティ 「TOMORROW」 その八




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「う〜、頭がずきずきする・・・・」


 俺は絶え間なく襲ってくる鈍い頭痛に顔をしかめる。

もう既に夜もふけて、居酒屋から出ると完全に闇が辺りを覆い尽くしていた。

ただ街灯や家々からのほのかな灯りのみが俺達の回りを包んでおり、周辺区域の道路から車が走っている。

その行き来も来た時とは比べ、随分台数も少なくなっていた。


「わ、私もちょっと飲みすぎた・・・かな・・・・」


 ガラガラと木製のドアが左右に開かれて、若干顔色を悪くした瑞希が出てくる。

どうやら完全にお互い飲みすぎたようだ。


「あ、あれからどれくらい騒いでたんだ、俺・・・・?」

「・・・・あんた、もう酒を飲むのはやめなさい」

「そ、そんなにひどかったか?」


 瑞希の冷ややかな視線を受けて、俺は冷や汗交じりに尋ねる。

一気飲み後から今までの間、まったく全然記憶がなかった・・・・・・

皆の雰囲気から察するに、どうやら相当長い間騒いではいた様だが。


「うーん、私は面白かったけど、さっきの千堂君♪弾けてたって感じで」


 瑞希の後ろからほろ酔いかげんのうっすら頬を染めた顔で、玲子ちゃんが外へ出てくる。

お、俺よりずっと飲んでいたはずだけど、ぜんぜん元気そうだな・・・


「うう〜、まだ気持ち悪ひ〜」

「うにゅう〜、お兄さんぐるぐるしまふ〜」


 ・・・・・こっちは完全にグロッキー状態なのに。

詠美と千紗、二人が仲良く肩を寄せ合って互いの身体を支えているその姿に少し口元を緩めてしまう。

それにしても千紗ちゃんも結構な量のお酒を飲んだみたいだな・・・・・・

俺もあまり人の事は言えない状態ではあるが。


「あらあら、詠美ちゃんに千紗ちゃんも大丈夫ですか?ふらふらしていると危ないですよ」 


 普段の優しい微笑を浮かべて、南さんはやんわりと二人を支える。

彼女も意外にお酒には強いのか、由宇と一緒に派手に盛り上がったにもかかわらずピンピンしている。

大人の貫禄ともいうのだろうか?

相手を気遣える優しい部分も含めて、南さんは引率者としては最適だろう。

彼女を誘った由宇もひょっとしたらそういう考えもあったのかもしれない。

ほとんど未成年ばっかりの面子だからな・・・・・

お酒によろよろしている女の子達を見て、俺は苦笑した。

し、しかしさすがに男の俺が酒に弱いのもどうかとは思う。

今度一緒に行く時までに、少しはお酒を鍛えておこう。

今日みっともなくさらした醜態(とはいえ、ほとんど覚えていないが)を糧に、俺は心の中で目標を立てた。


「和樹さーん、飲んでますかぁー!あはははは」

「・・・・大丈夫ですか?」

「だいひょうぶ、だ・い・ひょ・う・ぶ♪あたひはひっほもひょんでまへんから」


 続いて居酒屋より出てきたのは、彩に身体を支えられて出てきた郁美ちゃんだった。

う、郁美ちゃんすっかり顔真っ赤にしている・・・・・

俺は心配になって、俺と一緒に出てきた雄蔵さんに尋ねる。


「彼女、大丈夫なんですか?中学生なんでしょう?」

「問題はない。あの娘も立派に成長している」

「は、はあ・・・・・」


 そういう問題ではないような気がするのだが・・・・・


「そ、そういえば雄蔵さんは日本酒をずいぶん飲んでいたみたいですけど、元気そうですね」


 もっとも、この人に関しては意外どころか当たり前って感じがする。

この人がお酒に弱かったら、それこそ意外すぎて驚愕していただろう。

少し羨望を込めた俺の言葉に、雄蔵さんは重々しく頷いた。


「うむ、毎夜一升は嗜んでいるからな。男として当然だ」

「よ、よく飲みますね・・・・・」


 一升という単語を聞いて、俺の頭痛は増したような気がする。

やはり酒に強くなるためにはそれぐらいの量は飲まないといけないのだろうか?

早くも苦難の壁にぶつかって、俺は内心苦悩を覚える。


「今宵は久しぶりの楽しい宴であった。今度は貴様とはサシで飲みたいものだな」

「お、俺とですか!?」

「そうだ、郁美の事では随分と世話になっている。その礼も兼ねてだ」

「は、はあ、またいつか機会があれば・・・」


 うーん、悪い人じゃない事は今までの一連の件で明らかになっている。

見た目は迫力のある重々しい人で、近寄りがたい雰囲気こそ持っているが、

今時珍しい日本男児の妹思いの人なのだ。

それは分かっているし、尊敬している所だってある。

だが一対一で飲んで楽しい相手かどうかと言われると、少し首を傾げるをえない。

どうして答えればいいか返事に困り、結局俺は曖昧に返事をして誤魔化した。


「む〜、和樹さん!わたしをひゃんとみへくだはひ〜」

「あ、ああごめん、ごめん。郁美ちゃん、ちょっと夜風にでもゆっくりあたった方がいいよ」

「大丈夫でふよ、かふきはん。あーたーしーは酔ってません〜」


 酔ってないと言う人間に限って、本当に酔っていたりする。

特にロレツがろくに回っておらず、顔を真っ赤にして言っても説得力がなかった。

俺は何とか宥めて、郁美ちゃんを雄蔵さんに託した。

さすがに一人でこのまま歩いて帰るのは不可能だろう。

それに・・・・・


「彩、大丈夫か?」

「・・・はい。郁美さん、大丈夫でしょうか?」

「少し酔っているだけだからな。それに雄蔵さんがいれば大丈夫」


 俺は心配そうにしている彩に力強く断言した。

彼がいれば、暴漢に襲われてもあっけなく返り討ちにできるだろう。

その光景を思わず想像してしまい、不覚にも俺は口元をほころばせた。


「和樹さ〜ん、また一緒に遊びましょうね〜」

「ああ、郁美ちゃんさえよかったらいつでも誘うよ」


 こうして話をするのも久しぶりだったが、郁美ちゃんと会えたのも嬉しかった。

また彼女を誘って皆で盛り上がるのも全然悪い気はしなかった。

ま、まあ雄蔵さんも希望すれば招待することにしよう・・・・・

もっとも俺が誘わなくても、由宇辺りが面白がって誘う気もするが。


「ふーん・・・また、ね・・・・」

「・・・また、ですか・・・」

「な、何だ?どうしてそんな目で見るんだよ、瑞希。それに彩まで」


 俺の認識違いでなければ、二人の俺を見る目が冷たい気がする。

何か俺がまずい事でも言ってしまったのだろうか?

訳も分からず、背筋だけが寒くなるのを感じた。


「いけませんね、和樹さん。乙女心はデリケートなんですよ」

「そ、そういうもんなのですか、南さん。というか、それは関係があるのですか?」

「和樹さんはまだまだ分かっていませんね〜」


 南さんに続いて郁美ちゃんにまでそう言われて、俺は形勢悪くひかれた。

うーん、よく分からないな・・・・・


「お待たせ!お会計、済ませてきたで」


 最後のメンバーであり今日の幹事、由宇が居酒屋より出てきた。

ここは由宇の常連らしいので、今日の費用も大まかにサービスしてくれるとの事。

詳しい会計は由宇に任せて、俺達が先に出てきたという訳だ。

さすがにぼんやりと大勢が佇んでいたら、店側にも迷惑になるだろう。


「由宇、勘定はいくらになった?」

「うちの器量の甲斐あって15000円ぴったりや。まあ値切れたほうや」


 15000円か・・・・・

このメンバーで何時間も飲み食いした結果での勘定なら、ずいぶんと安い方だろう。

由宇の顔利きのお陰で助かった。


「そうか、あれだけ飲んだり食べたりしたのに何か悪いな」

「かまへん、かまへん。ここの店はこれで繁盛してるからな。
うち等くらいまけたかて潰れる様な店ちゃうわ」


 由宇は朗らかに笑って、そう断言した。

俺はその言葉に頼もしさと安心感を覚えた。


「じゃあ皆で割り勘するか。さすがに千紗ちゃんや郁美ちゃんに出させる訳にはいかないから・・・・」

「瑞希っちゃんも殆どうちが無理やり誘ったようなもんや。今回はうちが出すわ」

「え、そんな!?私もちゃんと払うわ、猪名川さん」

「ええて、ええて。うちは今懐が暖かいから遠慮はいらんで。
それに詠美にたんまり出させるつもりやし」


 由宇の言葉に詠美は過敏に反応するが、さすがに酔いには勝てないらしく、

言葉も発する事ができないまま、由宇を睨み付けている。


「私は千紗ちゃんの分を出させてもらいます。いつもお世話になっていますから」

「にゃ、にゃあっ!?そ、そんな、千紗も・・・・」

「いいのよ。お姉さんに任せておいて」


 言葉の聞き様によっては危ない発言をして、南さんは鞄から可愛らしい財布を取り出した。


「千堂くーん、私もお金があんまりないんだけど・・・・」

「なるほど、明日からバイトの日々だね」

「うえーん〜、ここで男のカッコ良さを見せないでどうするのよ!
ボーイズラブの道はまだまだ険しいのよ」

「だからそんな道に進むつもりはないって!?」


 その後幾度か言い争って、結局根負けした俺は彼女の出す半分を負担する事になった。

かなり理不尽さを感じたが、さすがに何もいえない・・・

郁美ちゃんの分は雄蔵さんによる負担で片がつき、後は自己責任でそれぞれ出し合った。


「これで全部やな。それじゃあ改めて・・・・・今日はお疲れ様さん!」



『お疲れ様でした!!』



 長い夜だったが、それでも今日は思い出深い夜となった。

同時に、こみっくパーティに参加して改めて良かったと思えた・・・・・・

















<その九>に続く

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