注:この話はJS事件解決後の主人公の日常を予測して書いているため最終的に矛盾が出るかもしれませんし
まったく違う関係のない形の話になるかもしれませんがその辺はご了承ください。
時空を駆けちまった少年
外伝? ヴァレンタイン
早朝 〜地球日本武ノ内家ケイの部屋〜
「んっが…す〜…す〜」
冷え込みがきついこの時期、朝の鍛錬を終えた俺は今までの日課通り二度寝を満喫していた。
こんな寒い日の布団の魔力は絶大だ…おそらく一生修行しても勝つことはできないだろう…管理局の白い(自主規制)も負けるぜ。
ああ…このぬくぬくとした暖かさ…最高だぜ。
「いつまで寝てる気だケイ!!いい加減起きねえと遅刻するぞ!!」
「あと3分…ダッシュで着替えて顔洗えば余裕で間に合う…」
今俺を起こそうとしているのは紅妖精こと烈火の剣精アギトだ。
俺が初めて異世界であるミッドチルダに飛んでからいろいろあって今は俺のデバイスというかパートナーとなった。
この朝のやり取りはもういつものことだ。
「そんなこと言って昨日はチャイム寸前だったじゃねえか!」
「遅刻は…してない…無問題」
「無問題じゃねえ!!起きろ!!炎熱…」
「わかった!!起きる!!だから燃やすな!!」
「よし!」
はあ…結局こうなるか…さらば俺の惰眠タイム…いらっしゃい俺のしんどい勉強タイム…
アギトに燃やされそうになる寸前で俺は起きて着替えを済まし、一階の台所へ向かった。
「おはよ〜」
「ケイ遅い。遅刻しないのはいいけどもう少し早く起きなさい」
「うい〜…」
俺は母親に注意されつつ朝食を取り始めた。席にはまだ眠たそうな我が妹と珍しくもう起きていた兄貴が既に朝食を取っていた。
ちなみに父親はもう既に仕事に行ったご様子。ジイちゃん、バアちゃんは現在旅行中。温泉だとさ、うらやましい。
『ケイ、そこのシャケと卵焼きが食いたい』
『了解』
念話でアギトにそう言われ俺は自分の皿にシャケと卵焼きをとり、その一部を家族から見えないように隠し
姿を見えないように魔法を使っているアギトに渡す。
家族には異世界に行ったことや、魔法、その他俺が経験したことは全部隠している。というか信じてもらえないだろうし。
アギトの姿を見せれば信じるだろうけどしていたことは別だろう。
ちなみにこの作業は毎食行われていていい加減慣れた。
「はい、今日はヴァレンタインデーです。今日のために東京の○○では…」
ふとニュースを見たら今日はヴァレンタインだと言っていた。
そういやそうだったな…俺には全く縁のない日だからな…特に脳に納める必要が皆無の日だった…
「兄ちゃんは今年はもらえそうなの?」
「アホか。アテがあると思うのかお前は」
「ううん、言ってみただけ」
そう言い妹は持っていた味噌汁をすする。…馬鹿にしおって…事実だから反論はできんが…
「ケイ…まあ気にするな。頑張れ」
「彼女のいる兄貴に言われても励ましにもならんわ!」
兄貴にそう言われ俺は反論する。我が兄妹のこの2人…実は結構モテる。
兄貴は高校3年。結構ワイルド系な感じの顔立ちで見た目通りスポーツ全般が得意で人付き合いもうまいため女子からもかなりの人気があり
かなりの数の女子と付き合ってた。今は1人の人に落ち着いているが俺はまだ見たことがない。
そして妹は小学6年。顔は結構可愛い系で家では俺にものすごく強気でキツイことこの上ないのだが、学校だとその明るくおもしろい性格から男子に人気が
あるらしい。彼氏を作ったりしているかは知らんが噂ではいると聞いた。
…進んでるな最近の若いもんは…
『お前だけ全然モテないな…兄妹と違って』
『ほっとけ!気にしとるんじゃ!』
アギト、真実をそうズバッと言ってくれるな。辛くなるから…
俺は基本スポーツが得意ではない。確かに身体能力は高かったが運動神経は別だった…今じゃどっちもいいけど。
『元気出せ!!きっと貰えるって』
『誰がくれるんだよ。この世界で』
まあ、ミッドにいる六課の面子やナンバーズの連中の一部は仲良くなったからくれたかもしれんが世界が違うからまず知らんだろ…ヴァレンタインなんて。
朝から気分をローテンションにしつつ俺は朝食を済ませ学校へ向かった。
〜中学校〜
「うっし。今日は余裕だな」
『アタシが起こしてやったからなんだからな。感謝しろよ』
『へいへい…まあかなり助かってはいるよ』
アギトはいつも学校についてくる。家にいても暇だからとか言ってついてくるのだ。そのため基本会話は念話で人に見られないことが
条件として俺は了承した。
まあ…念話がなんとかできてよかったよ…できなくて普通に姿を消したアギトと話してたら危ない人だよ…
「おはよ〜」
教室に入ると仲のいいクラスメートのグループの会話に入って行った。
「おっすケイ。今日は余裕だな珍しく」
「まあ、たまには余裕で来るときもあるさ」
「小林、そういやチョコもらったか?」
「んなわけないだろ…下駄箱にもないし机の中にもなかったよ。坂井もな」
「まあ…今年もなしか…」
「ワリィ…貰った…」
「「「川端の裏切り者!!」」」
「うるせえ!お前らも頑張れ!」
とまあ馬鹿らしくもあり普通でもある会話をして今日も授業が始まったのである。
〜授業2時間目数学〜
今年も貰えないで終わるんだろうな…
そう考えながら窓の外を眺めつつ教師の授業を聞き流していた。アギトも授業中は退屈なのか俺の頭の上で眠っている。
くっそ…羨ましいぞアギト…俺も寝よっかな。
そう考えて眠ろうとした直後、教室の扉が開かれクラスの視線は全てそこに集中した。
「………」
「「「「「「「「「「 …………………………… 」」」」」」」」」」
その開かれた扉には小学生がいた。
その小学生は見た目は紫色の長い髪と前髪で隠されていないおでこがチャームポイントでどことなく無口な感じのする異世界の女の子。
ルーテシア・アルピーノだった。
……ちょっと待て!?…なんでルーテシアがここにいる!?…ここは地球の日本だよな!?ミッドじゃないぞ!!
「…あっ…ケイいた」
ルーテシアがそう呟いてくれましたよ、こんちきしょう。その瞬間クラス中の視線は俺に集中。やったね目立ってるよ俺。
…目立ってるよやったねじゃねえよ!!
つい心の中で1人ノリツッコミをしてしまった…落ち着け俺…まずは現状把握だ。
「武ノ内、知り合いか?」
「いいえまったく違……はい外国の知り合いのお子さんです。ちょっと話してきます」
「まあ取り合えず話してこい」
まったく知らない子ですって言って誤魔化そうとしたらアギトが頭の上で炎を燃やそうとしたのでその言い訳はなしにした。
俺は廊下に出てルーテシアと話をした。
「どうしたルーテシア」
「そうだぜ。ルールーなんでこんなとこに来てんだよ」
…アギトが普通に話してるがいいか。教室は授業再開してるし防音効いてるだろうから聞こえんだろ。
「今日【ヴぁれんたいん】だってお母さんから聞いたからチョコ渡しにきたの。はい…」
「………マジ?」
「うん……マジ」
そう言いピースをしつつ俺にチョコを差し出してくる。取り合えず俺はありがとうと言ってそのチョコを受け取った。
うまく言えないのはまあ関わりのない習慣だったからだろう。言いづらそうだった。
複雑な心境だな10歳の女の子から貰うって…喜んだら危ない人に分類されそうだからな…
なぜ知ってたんだと尋ねたらメガーヌさんの同僚だったスバルとギンガ先輩の母親のクイントさんがナカジマのおやっさんに渡していたから知ったそうだ。
「よかったじゃねえか、ケイ。ルールーから貰えて」
「ケイ…貰ってなっかったの?…うれしい?」
「いや……複雑な心境だ…」
正直に言ったらルーテシアが眼尻に涙を溜めてグッスっと泣きそうになった。…しまった!
こいつあの事件以降結構泣きやすいって判明したんだった!
「冗談だ冗談!嬉しいよ。ありがとな!」
「ぐっす…本当?」
「ホントもホント!なあ!?そうだよな!?」
「あっ…ああ!そうだぜ。こいつが冗談好きなの知ってるだろ?ルールーも」
「…うん…じゃあ食べてみて」
そしてルーテシアは泣きそうな顔をやめて笑顔になった。まだ少しぎこちない感じの笑顔だけど出せるようになってきたのはいいことだ。
とりあえず少し食べてみるとやや甘めの味だったがうまかった。
「うん。おいしいぞ。ありがとな」
そう言いルーテシアの頭を撫でてやった。初めて会ったときは何しても無反応だったが結構気持ちよさそうに撫でられていた。
…癒されるな…
「で?どうやって来たんだ?1人じゃ来るに来れんだろ」
「お母さんが転送してくれた」
…何してんだよあの人…そういやあの人も召喚士だっけ…だからって知らない土地に娘を転送するか?普通。
「1時間くらいしたら召喚で帰れるから大丈夫」
「旅行とかで迷子になったとき便利だなおい」
「けどいつ来たんだ?そんな格好じゃ寒かっただろ」
「ついさっきこの扉の前に出てきた。そして開けたらケイがいたの」
ってことはなんだ…あと1時間くらい帰れないのか?さっき授業が始まったとこだからちょうど休み時間が終わる頃だろう。
それなら召喚で消えても見られる心配はないな…
「じゃあ残り時間保健室で過ごすか?」
「ああ!?ルールーをそんなとこで1人にする気か?」
「じゃあどうしろと?」
「決まってんだろ」
アギトの案を俺は速攻で却下した。けれどそのせいでルーテシアはまた泣きそうに、アギトは怒りの形相で両手に炎を灯した。
そうなられた2人に俺は勝てるはずもなく結局折れたのだった。
「ねえ…武ノ内ってロリ?」
「さぁ…でもあの女の子お人形さんみたいでかわいい〜…」
「ケイの奴ロリだったのか…」
「犯罪じゃね?」
「羨ましいぜ…」「「いや、おまえやばいだろ」」
現在の俺の状況は俺の座っているその足の上にちょこんとルーテシアが座っている。
アギトの出した案はルーテシアを1人で放置するのはかわいそうだから教室で1時間待たせるというものだった。
そして脅された俺はそれを実行するしかなかった。教師に頼んで迎えが来るまでここで待たせて欲しいと頼んだのだった。
……けどな…その結果がこれかよ!クラスどころか学校中に広まりそうな汚名ができたじゃねえか!
『汚名なんていくらでもありそうだろお前。何を今さら』
『アギト。今日晩飯抜きな』
『なにー!!ざけんなコラ!』
そのままやたら文句を言うアギトだったが無視した。あー…うるせー頭がキンキンする。
「武ノ内。了承してやったんだからこの問題解いてみろ」
教師がそう言ってきた。俺は仕方なくその問題を解こうと席を立とうとするがその前にルーテシアが黒板に向かっていた。
そしてそのままチョークで答えを書いていった。
「……正解」
「……ぶいっ」
書いた答えが正解と言われクラス全員にまたピースするとそのまま俺の席に戻ってきて足の上に座った。…魔導士って数学得意だったなそういや。
高校受験レベルの問題を解いたことでクラス中の視線はまさにルーテシアに集中したのだった。
同時に俺への視線は厳しくなった。…なんで?………俺今日厄日?
そうこうして授業終了のチャイムが鳴った。その瞬間俺は教室を駆けた。ジャンパーとルーテシアを抱えて。
〜中学校体育館裏〜
「はぁ、はぁ…」
「ケイ…どうしたの?」
「そうだぜ。いきなり教室を走って抜け出して」
いや…だって絶対休み時間質問攻め喰らっただろうし、そうなると召喚で帰るのが見られちまうからな。
そう思いつつ持ってきたジャンパーをルーテシアに着せた。
「ここは寒いからこれ着てろ。あと2,3分すりゃ召喚で帰るんだろ?」
「うん。…ありがとう…あっ!お母さんの手紙忘れてた…はい」
ルーテシアの服はドレス風なバリアジャケットではなく、普通の女の子の服だったが少々薄着な感じがしたので着せた。
そしてメガーヌさんからの手紙を受け取った。夜にでも読もうとポケットにしまった。
服を着せるとガリューが出てきて、そのまま手話で礼を言ってきた。俺はそれに気にするなと答えた。
うむ、ガリューも手話が結構板についてきたな。
「あっ…来たみたい」
そう言うとルーテシアとガリューの足元に魔法陣が現れた。
「じゃあ、ケイ、アギトまたね」
「ああルールーも風邪ひくんじゃねえぞ。ガリューも気をつけてな」
「またな」
そして2人は魔法で帰っていった。ガリューのやつ去り際に親指立てて別れの挨拶していきやがった。あいつも結構感情豊かになったな。
あっ…ジャンパー着せたまま帰しちまった…帰りどうしよ…
「はっ…はっくしょい!」
「風邪ひくなよ。って馬鹿はひかないか」
アギト…昼食も抜きにされたいのか?
〜昼休み〜
ルーテシアを無事帰したあとクラスの奴らから誰なんだとか質問されたがすべて適当に言って誤魔化した。
本当のこと言ったら俺は今すぐ病院行きにされるからな。
「さて…昼飯昼飯」
『くそ…晩の分まで食ってやる』
晩飯抜きをいいつけられたアギトは昼に食い溜めする気らしい。甘いな…そんなことはさせんさ。
そう思いつつ鞄から弁当箱を出そうとするが…ない。空っぽだった。
「……弁当忘れた」
『何だとーーーー!!』
念話でおもいっきり叫びやがった。おかげで頭がくらんくらんする。
『テメェ!弁当忘れたって何してんだよ!』
『うるせー!忘れたもんは仕方ねえだろ!あきらめろ』
『チキショー!!』
そうは言ったが空腹には耐えられん…いつもは給食で関係ないはずなのに…
今週は何故か給食が休みということで弁当を各自持参しなければならなかったのだ。
学校に学食やら気の利いた売店もないので仕方なく学校を抜け出して近くのコンビニに買いに行くことにした。
『アギト。学校抜け出してコンビニ行くぞ』
『よっしゃ!サッサと行くぞ!』
そう言い教室から出て行こうと扉を開けた。その瞬間俺は何かとぶつかった。いや抱きつかれた。
「やっほうっす!久し振りっす!元気してたっすか?」
「ウ、ウェンディ!?」
「セインさんもだよ〜お久〜」
「私もいます」
セインにディードまで!?何でこの3人がここにいる!?つうか待てこの状況はまずい。
「「「「「「「「「「「「 ……………………… 」」」」」」」」」」」」
ああ!まただ!またクラス中の視線が痛い。なんでこんな状況が続くの!?
「セイン、ウェンディ、ディード久し振り…とりあえず離れてくれ…ちょっと話がある…」
「何っすか?話って愛の告白っすか?アタシはいつでも大歓迎っす!」
「馬鹿言うんじゃないの。あたしにあるんだよ」
「まだ…早いのでは?」
……冗談でもそんな発言するなよこんなとこで。
俺は無言で3人を引っ張って教室を後にした。
〜コンビニまでの途中〜
結局そのまま3人を引きづってどこかで話を聞こうかと思ったがアギトが飯を買いに行きながらでもいいだろうと言ってきかなかったため
5人で飯を買いにコンビニに行きながら話をしている。
「で?なんでこっちに来たんだ?」
「何言ってんの?今日はヴァレンタインで女の子が男の子にチョコあげる日なんでしょ?」
「ですから来たんです」
「そうっすよ。だからわざわざアタシ達がプレゼントしにきたんっすよ」
「…マジ?」
「「「マジ(っす)(です)!」」」
そう言って3人はチョコをくれた。しかも手造りのようだった。一口づつ食べさせてもらった。
なんだか焦げっぽい味がするディードのチョコ。やたら甘いセインのチョコ。なんかしょっぱいウェンディのチョコだった。最後の塩入れたな間違って。
…けど感動だぜ。まさかチョコを同じ歳くらいの女子から貰えるがくるとは…
「うう…すまねえ…感謝するぜ」
「いいよ〜別に〜ホワイトデー期待してるからね」
「そうっすよ。お礼も期待してるっすからね」
「私は別に…おいしく頂いてもらえればそれで」
そう言って笑うセインとウェンディ。ディードもそう言ってたが何やら期待した目でこちらを見ている。
…そうですか。好きという気持ちじゃなくてお返しの期待ですか…
いじけた…また俺はいじけた。そうだよな…こいつらの知り合いの男子って俺くらいだったもんな…
「けどよかったな。これで4個目だろ?ルールーのと合わせて」
「まあそうだが…」
「えっ?ルーお嬢様が先に来てたの?」
「アタシらが一番手だと思ってたのにっす…」
「残念ですね…」
そういやこいつらはどうやって来たんだ?聞いてみるか…
「お前らどうやって来たんだ?今は隔離施設で一般常識をギンガ先輩から習ってるんじゃないのか?」
「そっすよ。今日は社会見学を兼ねてみんなで来たっす」
「といってもウーノ姉さま、ドゥーエ姉さま、トーレ姉さま、クアットロ姉さまはもう局で働いてるから来ていませんが」
事件後ナンバーズの処遇は、ウーノさんとクアットロが局の監視下の元研究をしているスカリエッティーの手伝いで、トーレの姉御が航空警備隊の訓練指導。
ドゥーエの姐さんが査察部でヴェロッサさんの元で研修。残った8人はとりあえずしたいことが局にはない、稼働時間が短い、その姉妹の面倒を見るなどの
理由で社会に溶け込めるように隔離施設でのんびりと勉強中だ。
「ってことは何だ…残りのメンバー全員来てるのか?」
「そうなるみたいだな…頑張れケイ」
ええい。励ましも今はキツイぞアギト…いやうれしい状況ではあるがこうも学校に現れられるとな…
「ギンガもいるっすよ?アタシらは先に渡したかったから先行したんスよ」
「多分今頃みんな教室にいるんじゃないのかな?」
「おそらくもう着く頃ですね」
「…ちょっとまて。じゃあ残りはまだ学校なのか?」
「「「そう(っす)(です)」」」
「先に言えよ!そういう事は!!アギト今すぐ戻るぞ!!」
「飯は!?」
「そんなの我慢しろ!!急ぐぞ!!」
まずい!まず過ぎる!あんなインパクトの強いナンバーズとギンガ先輩が教室に入ってきてたら完全に俺の風当たりがキツクなる。
俺達はコンビニに行くのをやめ急いで教室に向かった。
〜教室前廊下〜
急いでここまで戻ってきた。教室が思ったより静かだ。
どうやら間に合ったようだ。俺達は走るのをやめ歩いて教室に入った。
「ケイとはどういうご関係で?」
「とりあえず素手の戦闘の教師と生徒かな?」
「私達はしばらく一緒に暮らした関係だな」
「一緒出かけたりもした関係だね」
「チンク姉、ディエチ、別に言う必要ないだろ」
「しかしノーヴェ、一応事実です」
「うんセッテの言うことは一応事実だもんね」
コケた。俺はもう盛大にコケました。いないと思って教室に入ったら普通にギンガ先輩と残りのナンバーズがクラスの奴等と雑談していた。
男子の奴らはみんな観惚れてる。まあ確かに美人美少女の集団だからな…そりゃ観惚れるわ…
そいつらと仲がいい俺は幸せもんだが…今の状況はそう幸せに感じないぞ…男子のほとんどが恨みの籠った視線を向けるからな!
「あっ、みんな着いたんだ」
「お先にきさせてもらったっすよ!」
「ギンガさん、チンク姉さま勝手な行動してすいません」
「いいのよ。別に」
「迷子になってないか姉は心配したぞ」
俺の後ろからセインとウェンディ、ディードの3人がそう言ってクラスの中にいた面子に加わった。
クラスの奴らはチンクがこの姉妹の中で最年長と知らないので姉だと知って驚いていた。まあ俺も初めて会ったときは嘘つくなって怒ったけ…
ああ…なんか疲れてきた…幸せだけど疲れてきた。
『ケイ…腹減った…』
『諦めろ…晩飯は食っていいから』
すまんアギト今はもうそんな余裕がないんだ。晩飯なしはやめてやるから我慢してくれ…
「ケイ君久しぶり。どこに行ってたの?せっかく来たのにいないんだもの」
「どうもお久しぶりですギンガ先輩。ちょっとコンビニに買い物を…」
「何だ?弁当でも忘れたとかいう落ちか?貴様はいつもどこか抜けてるな」
チンク…お前ちっこい癖にいつも俺のことえぐるようなこと言うよな…
「ケッ!自業自得だバーカ…たっく…せっかくチンク姉が来たのにいないって何だよ」
「久しぶりに会ったっていうのにキツイなノーヴェよ」
「ノーヴェは素直じゃないですね。せっかくみんなでチョコを作ったというのに」
「うるせえよ!セッテ」
マジか…こいつらみんなでわざわざ作ってくれたのか…感謝感謝。
「お弁当食べる?一応作ってきてケイの分もあるけど」
「すまん。いただく」
「とりあえずここ移動しない?ボク達がここにいてもいづらいだろうし」
ディエチは飯作るの上手いからな…事件前からスカ一行の家事はディエチが中心だった。
そのせいでそこいらの主婦より腕は上だ。弁当も期待できそうだ。
オットーの提案でとりあえず違う場所で話兼食事をとることにして俺達は教室を出た。
サンキュー…あれ以上あそこにいたら俺は耐えられなかった…
〜屋上〜
とりあえず誰もいなさそうな屋上で俺たちは昼食を食べ終えて雑談をしている。
寒いがその辺はアギトのお得意の炎熱系の魔法で周囲を暖かくして貰っている。
頼んだら自分はストーブじゃないと怒ったが寒いのは嫌らしく結果的に暖めてもらえた。
自分も寒くてするんなら別に怒る必要ないだろ…
「いや〜うまかった〜。どっかの馬鹿が弁当忘れるから飢え死にするかと思ったぜ」
「うるせえ。誰だって忘れ物くらいするだろ」
「ケイ君。だからって忘れていいわけじゃないわよ」
「はい…」
ギンガ先輩に注意されアギトを睨むが知らん顔された。くそ…晩飯抜きを撤回するんじゃなかった。
「あっ、食べ終わったのならデザートにどうぞ」
「ん、サンキュー。…ビターか…うまいぞ」
「ありがとうございます」
そう言って差し出してくれたセッテのチョコを食べてみた。結構苦みの効いたのビターチョコだった。
うむ…それぞれの味の好みがわかるな…
「あー!!何食ってんだてめえ!チンク姉の先に食えよ」
「ノーヴェ別に姉は…」
「けどチンク姉。結構悩みながら作ってたじゃねえか」
「それは…」
「へっへ〜ん。アタシはもう食べてもらったっすよ〜。おいしかったって褒められたっす」
いや…お前のが一番微妙だったし言ってない気がするんだが…
「そういえば感想聞いてなかったっけ。どうだった?」
「おいしかったですか?」
「ああ、うまかったよ。ありがと」
「アタシはアタシは?」
「ウェンディ姉さま、さっき感想自分で言っていたのでは?」
「セッテ、細かいこと気にしたら負けっす。で?どうだったっすか?」
「…味見したか?しょっぱかったぞ…」
「がーん!っす!」
正直に俺は言ったらウェンディの奴凹みやがった。…俺の凹み癖うつったのか?
セインとディードのは甘すぎだったり焦げっぽかったがうまい方だったからな…
そのままチンク、セイン、セッテ、ノーヴェ、ウェンディ、ディードは自分たちのチョコの話で盛り上がっていった。
「ふふっ、モテモテねケイ君」
「あはは…まあ夢見た状況ではありますね」
「とりあえず私のはこれね。食べて見てくれるかしら?」
「ええ、いただきます。おっ、チョコレートケーキですか」
ギンガ先輩から渡されたのは店で売っているんじゃないかと思うくらいきれいにできたチョコケーキだった。
俺はさっそくそれを食べてみた。
「うまっ!まじでうまいです。店のよりうまいんじゃないんですか?」
「あら?ホント?一生懸命作った甲斐があったわ」
いやホント…うまい。体術を教えてもらうためにナカジマ家にお世話になったときに料理も食べさせてもらいうまいと思ったけどお菓子も
相当うまいな…もしかしてかなりの完全無欠女性か?
「うん2人とも青春してるね」
「そうだね」
そんなことをポツリと言うディエチとオットーの2人。
「ちなみに私とオットーの分はないから」
「ここにいない姉さま達とボクとディードは君に特別な感情は特にないからね。家族みたいな感情こそはあるけど。
ノーヴェその傾向が強いのか君を姉弟みたいに思って作ったみたいだけどね」
えっ…こいつらみんな家族とかそういう感じのつもりで渡してんじゃないのか?一緒に暮らしてたこともあったし。
そりゃそういう感情があって渡してくれるんだったらうれしいけど…ないだろそれは。
てかノーヴェー…お前が妹分で俺が兄貴分だろ。
「まあ無理言って貰うもんでもないしな」
「とか言って実は期待してたんだろ?」
アギトうるさい。だまらっしゃい。
心中を読まれてた俺はアギトに心の中で文句をいっていたら制服の袖を引っ張られた。
なんだ?
「ケイ。ギンガ殿のケーキ程ではないがとりあえず私の分も食べてみてくれないか?」
「いや喜んで食べさせてもらうよ」
「当り前だ。チンク姉が一生懸命作ったんだぞ。食べないなんて言ったらぶっ殺す!」
…いや絶対食べないなんてことはしないし殺されたくないぞ…
そのままチンクが作った分を口に入れると、甘すぎず、苦すぎずと丁度いい味だった。
…普通のチョコで作ってきた組の中じゃ一番好きな味付けだなこれ
「…うまいな…今までのもうまかったけどこれ一番俺の好きな味だな」
「そ、そうか?当然だな」
「苦労したんだろ?ありがとな」
そう言ってチンクの頭を撫でた。ルーテシアもそうだがどうやら小さい子に対して俺は頭を撫でる癖があるようだ。
チンクはなにやら照れた感じではあるがそのまま撫でられる。
撫でているとなにやら周りから視線を感じたのでやめた。…何だよその視線は。
「チンク姉…うらやましい」
「撫でてもらったこと無いっす…」
「しかし私は背がケイさんより高いから…」
「…また撫でられたいかも…」
何だ?撫でて欲しいのか?…けど見た目、同じ歳か年上のお前ら撫でるの恥ずかしいしな…
聞かなかったことにしよ。
「よし!じゃあ最後はアタシのだ!食え」
そう言ってノーヴェはチョコを突き付けるように差し出してきた。
そんなキツく言わんでも食べるって
「どれどれ、いただきます」
「どうだ?」
「………辛れぇぇぇぇぇえええ!!」
何だ!?この辛さは!?唐辛子か!?この味は…昔一個食ったけどここまで辛くなかったぞ!?
こいつは人生の中で1位をダントツで飾るくらい辛かった。
「水!水!」
「はい。お茶」
ディエチがそう言ってお茶を平然とした顔で出してくれたのでそれを一気に口の中に入れる。
ああ…いつもと違う意味でお茶がうめえ…
「そ、そんなに辛かったか?」
「食べるか?」
そう言って一口食べさせるとノーヴェは俺と同じ反応でその辛さに苦しんだ。
今度は展開を読んでいたらしいオットーがお茶をあらかじめ入れていたようでそのまま渡していた。
ノーヴェ…そのお茶飲んでホッとした顔をもう少し普段から出そうな。いつも不機嫌そうだから。
それと今度からは味見しつつ作ろうな食べ物は。
「かっ〜ケイ情けないな。たかが辛いもの食ったくらいで」
「お前も食うか?ユニゾンしないで炎出せそうになったぞ」
「アタシはいい」
ちっ…言いたいこと言って逃げやがった。
「で?みんなの分食べて誰のがおいしかったの?一番」
オットーがそう言った瞬間屋上の空気が張り詰めた。
…何だこの空気。最後の戦いのときより空気が張り詰めてるんですけど…
チンクはなにやら不安そうに、セインは楽しそうに、ノーヴェはやや暗めで、セッテはいつもと変わらないクールな顔で
ウェンディはまだ凹んでいるが聞き耳立てて、ディードは緊張した顔で、ギンガ先輩はにこにことプレッシャーを出して返事を待っていた。
いや…最後のが特に怖いんですけど…
ことの発端のオットーはどこから持ってきたのかわからんがディードと一緒に湯のみで温かいお茶をすすってる。アギトも逃げるように便乗しだした。
お前ら見捨てるのか!?こんな状況作っといて。
「「「「「「「誰のが一番だった(でした)(だ)(っすか)?」」」」」」」
「え…えっと…」
誤魔化しても仕方ないしな…
「とりあえず…順番づけするつもりはないけど…強いて言うなら味的に一番はギンガ先輩かな…」
「あら、ありがとう」
そう言うとギンガ見事な微笑みを浮かべてくれた。やばい…むっちゃ綺麗です…
残りのメンバーはそれを聞いて凹んでる。
「好みで一番だったらチンクだったな。俺的に苦味と甘味が丁度よかったし」
「そうなのか!?そうか姉も一番か…」
「やったな。チンク姉」
そう照れながらチンクは喜んでいた。うむ…かわいらしいぞ。
ノーヴェはチンクのことを自分のことのように喜んでいる。まあ一番懐いてるもんなチンクに。
「セインのは甘味が強めで授業が終わったばっかの頃だったから頭の疲れとれたし、ディードのは焦げ具合が結構好きな感じになってた。
セッテは苦味がなかなか渋かったから甘いものばっか取ってたときに最適だったな。ノーヴェのも辛すぎたけど午後のために目が覚めたし
リフレッシュできたな」
みんなが作ってくれたチョコの長所を挙げるとみんな喜んでくれた。
…俺って今すげえ幸せ者だな。こんなに一言で喜んでくれる人が周りにいて。
「あの〜…アタシは?」
「え…えっと…次は砂糖と塩間違えないように頑張ろうな」
「うっ…うえ〜んっす!ちくしょ〜っす!」
そう言ってウェンディは泣きながら猛ダッシュ屋上から駆け出して行った。
…お前多分一番俺と性格似てるわ…凹みやすいとことか。
「ウェンディも行ってしまったし姉たちも帰るか」
「そうですね。そろそろ戻りましょう」
チンクとギンガ先輩がそう言って立ち上がった。ディエチとオットーを除いたナンバーズが文句を言いたげだったが
そろそろ午後の授業が始まるのでどの道もう解散の時間だ。
「じゃあ自分もそろそろ授業があるから解散しましょう」
「ぶ〜、セインさんもうちょっといたい」
「私ももう少しゆっくりしたいですね」
「もう少しよいのでは?」
そう言うがお前ら…こっちも単位というものがあってだな…ちゃんととらんとまずいんだよ。
「ほら姉を困らせるな」
「そうだぜ。用も済んだしサッサと戻ろうぜ」
「そろそろボクも帰って見たい番組あるし」
「私も晩御飯作らないとだめだからね」
…オットーにディエチお前らなんか子供とその母親的なこと言ってるな…
もうなんか普通の家庭みたいになってないか?前からアットホームな感じだったけど。
そうこうしてギンガ先輩とナンバーズ一行は学校からでてミッドの方に帰っていった。
ウェンディのやつ置いてけぼり喰らわんといいんだけど…
『アギト…おいアギト!』
『す〜…す〜』
どうやらパートナーの紅妖精さんは腹一杯になって寝てしまったようだ。
やれやれ…起こすのもかわいそうだしこのまま寝かせてやるか。
そう思いアギトをいつものように頭に乗せると俺は教室に帰っていった。
……クラスの奴らへのいい訳どうしよう。
〜放課後〜
まあいろいろあったが学校は終わった。午後は一限だけだったので3時前には終わった。
『大丈夫かよお前』
『大丈夫じゃない』
あの後教室に戻ったら男子からは恨みの視線、女子からは軽蔑の視線で攻撃された。
仲のいい奴らも揃ってどこで知り合ったやら紹介しろやら問詰めてきた。紹介できるわけないだろ…相手は異世界の住人だぞ。
とにかくもう俺は心身ともにボロボロだった。
『とりあえず帰ろうぜ。部活もないんだから』
『そうだな』
この時期にはもう3年である俺はもう引退していたため帰宅部同然だった。
部活の連中とは基本引退後はあまり話さなかった。もともといたから話す程度の親交だったしいてもいなくても大して変わらないような
ポジションに存在してたから別に気にしていない。
「ケイ。お前チョコ貰ったんだって?外国の女子から」
「いいな〜。うまかった?」
「よかったな〜。お前いつもなかったもんな」
「チクショウ、羨ましいぞ」
そう部活のことを考えてたら部の奴らが来た。まあ見下してる感じるかも知れんが中学入りたての頃からそうだし、それがもう俺の普通になっていた。
向こうもこれが普通の感じになっていて悪気で言ってるわけではないので特に考えずに返事をした。
「あっ、久しぶり。教室も違うしあんま最近喋らなかったな」
「まあな、ケイって結構影薄いもんな」
「今日外人がたくさん来て全部お前絡みって聞いてビビったぜ」
「俺もビビったよ。まさかお世話になった相手が来るなんて思ってなかったし」
「味はどうだった?うまかったか?」
「最高に幸せでした」
「紹介しろこの野郎」
まだ俺の性格が自己中で馬鹿な子供っぽい協調性のない性格を直したての頃とは違いある程度は緩和され、たまに普通に喋る友達程度には
俺の評価みたいなのも変わっていた。それでもそれ以上はならないだろうが、そういう関係は別に普通だから気にしない。
というかミッドの連中はそういうのはないよな…話したら仲のいい友達みたいなノリだもんな。
いや〜人ができてるというかなんというか…いいことだし俺もそんなあっちの人達が好きだ。
そんな話を部活連中としながら昇降口まで行き校門へ行こうとしたら
「コラー!!遅い!!何してた!!」
「まあまあアリサちゃん。落ち着いて」
「こっちは寒い中待ってたのに友達と喋りながらくるなんて許せないでしょ!」
校門前には車で来たのか海鳴に住んでるはずのアリサさんとすずかさんがいた。
なぜあなた達までわざわざこんな遠くにいらっしゃるので…こっち山の中の街というか田舎、そっち海沿いの街ですよ?住んでるとこ
「…なあケイ。お前いい加減にしろよ?」
「ハーレムかおい」
「そんな普通の顔でなんであんな美人と知り合いなんだ」
「うぜぇ」
「…ひどくない?言ってること」
まあ事実だし俺が知りたいことだけど…最後のは心に効くぞ「うぜぇ」は…
『ケイ、どうすんだ?』
『とりあえず挨拶に行くしかないだろ』
「じゃあちょっと話に行ってくるからバイバイ」
「おう。じゃあな」
「車に轢かれろこの野郎」
「はあ…なんでコイツが…」
「マジでうぜえ」
…やっぱ基本的にいてもいなくてもいい奴的位置は変わらんか…まあいいけど。
高校行ってからも同じ部活になるんだし気にしてたら身が持たん。
「遅いわよ。何してたの?」
「いやまあ…普通に来たんですけど」
「とにかく久しぶりだね?アギトちゃんも元気だった?」
「おう、元気だったぜ」
アギトは2人にも姿が見えるように魔法を調節するとそのまま挨拶をした。
「にしても寒いわね…移動する?」
「そうだね。ここに来る途中喫茶店あったしそこに行く?」
「じゃあそうしますか」
そのまま俺はアリサさんの車に乗せてもらい4人で喫茶店に向かったのっだった。
…結構荒い運転だったがな。アギトなんか少し酔ってるし…
〜喫茶店〜
喫茶店といっても田舎の街なので翠屋ほど学生の人気が高いわけでもなくレベルも高いわけではない。
あそこのシュークリームは一度だけ食べたが絶品だったな。
「う〜ん…やぱり翠屋の方がおいしいね」
そりゃそうでしょ。あそこまで高いレベルの喫茶店ならもっと都会の方に建てますって。
「たっくアンタがこんな遠くに住んでなきゃ翠屋に行くのに」
いや…住んでるとこ否定されても困ります。それなりに自分ここが好きなんですから。故郷だし。
『ほい、アギト』
『サンキュー』
話を聞きつつアギトに注文したケーキを食べさせる。俺は今日チョコ食ってばっかでこいつに甘いものなしは悪いしな。
アギトは機嫌よくケーキを食べていく。
「ところで今日は?ヴァレンタインだから来たとか?」
「そうだよ。初めて会ったときに迷惑かけちゃったし、お詫びも兼ねてね」
「アタシはすずかについてきただけだし、義理だけどね」
すずかさんにかけられた迷惑とはまあいろいろ合って互いに流血沙汰の殺し合いになるくらいのことがあったのだ。
いや…ホントあのときは死ぬかと思ったね…
アリサさんとは特に何もなかったので義理というのは本当だろう。しかし律儀な人だな。ついてきたから上げるって。
「ありがとうございます」
「感謝しなさいよ。アタシやすずかみたいな美女からもらえるなんてそうそうないんだから」
ないでしょうね。実際。多分俺一生分の運を今日一日で使い果たしましたよ。
「ううん。いいよ別にちゃんとお礼ももらうから」
「まあホワイトデーは期待はしないで下さい。まだ中学生なんで」
金なんてないですよ…ほんと…
「甲斐匠のない男ね」
「すんません」
否定できん……なんか割のいいバイト探さないとな…
「それじゃあ今貰っていい?」
「はっ?別に構いませんが…何を?」
「ちょっとごめんね」
そう言いすずかさんは席を立ちアリサさんの隣から俺の席の隣に座り顔を近づけてきた。
そしてそのまま俺の首辺りに顔を持ってきて噛みつきゆっくり味を楽しむかのように血を吸いだした。
あっ…お礼ってそうですか…血ですか…前も吸われたっけそういや。
「すずか…知ってはいるけど場所考えなさいよ…」
「だってすごくおいしいんだよ?ケイ君の血」
アリサさんが止めるが、すずかさんはそう返事してまた吸い始めた。
幸いこの席はカウンターから見えず、客も俺達だけだった。
けどなんというか…頭がボーッとするんだよな、吸われているときって。多分抵抗されないように夜の一族特有のフェロモンでも出てるんだろうけど。
俺の血は普通の人とはこれまたいろいろ合って違う。けれどもその味は格別にうまいとのことらしい。
「んっ…んあ、んっく……」
別に飲むのは構いませんが…もう少しその色っぽい声抑えません?正直きついです…理性が飛びそうです。
ほら、アギトも食べるの止めて顔真っ赤にしてますよ。
アリサさんも気にしてない感じにコーヒーを飲んでるけど少し顔赤くしてますって。
「んあっ……ごちそうさま。おいしかったよ♪」
そう言ってぎりぎりまで俺の血を堪能したすずかさんはとても妖しく艶めかし笑顔でお礼を言ってきた。
おいしかったのならよかったです…俺は貧血ですけど。
「まったく。いくら周りから見えない席だからってあんな声まで出して…こいつも男よ?襲われたらどうする気?」
「そうなったらそうなったで、仕返しするだけだよ?」
あのときみたいに死にかけたくないので襲わないように気をつけます…
「ケイ、襲うなよ」
「アギト…殺されたくないから頑張るよ」
「どこまで我慢できるかな?」
「すずかさんがしなければ我慢できるんですが…」
「じゃあ今度もしてあげるね?」
「ケイ頑張りなさい」
「いや、親友なんでしょ?止めてください」
「無理よ」
そんな速攻で見捨てないで下さい。こっちはわけ合ってすずかさんの血をくれっていうお願い断れないんですから。
「ケイ君…いやなの?そうなんだ…そうだよね…血を吸われて嬉しい人なんか…」
そう言ってすずかさんは暗い顔になり泣きそうになる。泣きそうになりつつ男を魅了する雰囲気を
出すのを忘れずにだ。
「ああ…もう吸っても大丈夫ですから魅了しながら泣くのはやめて下さい」
「うん。じゃあ今度もお願いね?」
はあ…嘘泣きと分かりながらもそう言うことしか言えないのがつらいぜ…
「アンタどんどんドツボに嵌ってくわね」
「自分でも悲しいです」
「そこがケイ君のかわいいところなんだけどな」
だからって弄らないで下さい。
「なあ、そろそろ帰らねえとまずくないか?シグナムが迎えに来るぞ?今日模擬戦だろ?」
「あっ…そういえば」
俺はこちらにいる間は1人でいるため実戦をすることができない。そうなると腕も鈍ってしまう。
そう言っていたらシグナム師範が空いている時に模擬戦するぞと言ってその空いている時が今日の夜だったのだ。
貧血なんだけど大丈夫かな……向こう行ったら飯たらふく食わんとな…
ちなみに明日は休みなのでそのまま六課にお泊りの予定である。
「じゃあ私達もそろそろ帰る?」
「そうだね。じゃあケイ君出ようか?」
「そうですね」
そして喫茶店を出てそのままお別れを言って2人は帰って行った。しかしわざわざチョコ渡しにくるのにこの距離をくるとは…
なんか悪いな…
「ケイ、行かねえのか?」
「あっ、行く行く」
〜帰宅後、武ノ内家〜
「ただいま〜」
喫茶店から真っ直ぐ家に帰ってきた。そしてそのまま部屋に行き泊まり用の荷物をまとめる。
アギトに昨日のうちからしとけと言われたが別に特に多いわけではないので帰ってからするつもりだった。
5分ほどで荷物をまとめ台所に行った。
「おかん、友達の家に泊まりに行ってくるから」
「受験生なのに大丈夫なの?」
「勉強もするから大丈夫だって」
おもいっきり嘘である。勉強どころか警察みたいなところのお世話になってきますなんて口が裂けても言えない。
「兄ちゃん、チョコ貰えたの?」
「ん?いっぱい貰ったぞ」
「はいはい、じゃあ貰えなかった友達同士で……って嘘!?貰えたの!?誰から!?」
妹よ…兄はそんなにモテそうに見えないのか?そこまで言われるとマジ泣きするぞ?
ホントに貰ったんだからな…人生で最後になるかもしれんが。
「お世話になったとこの娘さんやらからだ。じゃあ時間ないから行っています」
「いってらっしゃい」
「兄ちゃん貰ったって…明日は地球滅亡?」
妹よ。それ以上言ったら殴るからな。
そして俺は言われていた通り人気のない山の神社まで行き迎えを待つために家を出た。
『お前の妹いくらなんでも言い過ぎじゃねえか?相当なめてるぞ』
『まあな…なんであんな性格になったのやら…』
いや、本当にもう少しやさしい妹になって欲しいよ。あれでもいいとこはあるのは知ってるけど。
〜神社〜
今は家の一番近くの神社に来ている。あともう少ししたらその辺に転送用の魔法陣が出てくるはずだ。
「おっ、来たみたいだぜ」
アギトがそう言うと目の前に魔法陣が現れた。そこからは地上本部の制服の上にコートを着たシグナム師範が現れた。
何やら疲れた顔をしているが何かあったのだろうか。
「師範お久しぶりです」
「ああ。久し振りだな。調子はどうだ?」
「貧血で腹ぺこです。飯が早く食べたいです」
「私もな…いろいろあってな…疲れているのだ…」
「「……今日は模擬戦やめ(よう)(ましょう)」」
模擬戦中止をハモってしまった。
しかし師範程の戦闘好きが中止を申し出るって…何があったんだ?
「何があったんですか?」
「…とりあえず行こう。そうすればわかる」
「なあ、何があったんだ?あそこまで疲れた顔してるなんて」
「俺がわかるわけないだろ…」
そのまま3人で転送魔法陣で中継ポートを経由し本局に向かった。
その後ミッドチルダ地上本部に向かう方法で行くらしい。
〜時空管理局本局〜
本局に着くと早速地上に行くためのポートに行くことにした。
しかしその途中に無限書庫の近くを通ると大きな殺気を感じた。
「な、何だ?この殺気!?殺し合い!?」
「こんなとこでか?ないだろそれは」
「いや…違う…」
そう言うと師範は頭を片手で軽く抑えた。
違うんなら一体何だと聞こうとすると目の前を無限書庫の司書達だったか…集団で走って行った。否、何かから逃げていたようだった。
何だ!?戦争でも起きたのか!?
「あっ!シグナム二尉!ちょうどよかった。無限書庫での高町一尉とハラオウン執務官、八神二佐が…」
「すまん…私では無理だ…」
「そんな…」
一体何が起きたんだ?今にも死にそうな顔で…
「あっ!あなたは確か…丁度いい、お願いです。暴走してる3人を止めて下さい!」
「はい?」
「何だよ一体…」
事情を聴くとなのはさんとフェイトさん、はやてさんの3人が無限書庫でユーノさんに誰がチョコを渡して一番なのかを言い争っていてそのまま暴走。
臨戦態勢で魔力と殺気を放出して威嚇し合っているらしい。
そしてあまりの恐怖に耐えられなくなった司書達は逃げ出したということだ。
なんともまあ迷惑な話で。
「まあなんとかしたいけど今貧血なんで無理です」
「そんな…」
「ケイ…行くぞ…」
「それじゃあ頑張って」
「見捨てないで下さいよ!」
すいません。あんまりあの3人と戦いたくないです。恋愛絡みでは…殺されそうだから…
一応強くなったのはなったけど嫌です。
俺達は無限書庫司書を見捨てて六課隊舎にいくことにした。ホントすいません。
「シグナムさんが疲れてた理由って…」
「ユーノにチョコを渡す主が高町とテスタロッサの2人に鉢合わないように抑えてたらな…」
「そうですか…」
「苦労したんだな…」
みんな忙しくてなのはさんが夕方、フェイトさんが夕食後、はやてさんが俺を迎えに来る頃に入って行ったらしい。
せめて先の2人が出て行ってからはやてさんが書庫に行くようにしたかったらしいのだが…
「お前を迎えに行く頃についに主が我々の妨害を振り払ってな…去年のようにならんようにしようとしたんだが無理だった…」
「結局諦めたと」
「ああ…」
それは毎年大変ですね…ユーノさんもご愁傷様です。
まあ一応重要な部署だから魔法は使わんだろう。殺気とかは飛びまくりだろうけど…
去年がどうだったか聞きたい気もしたが聞かない方が俺にとっても師範にとってもいいだろう…
〜ミッドチルダ機動六課隊舎途中〜
俺は地上本部に着いた後そのままシグナムさんに車で送ってもらっている。
相変わらずこの世界の街並みはすごく外を眺めてしまう。
「やっぱケイの世界というか田舎の街とは違うよな」
「まあそうだな。けど田舎は田舎でいいとこもあるだろ?」
「まあそうだけどさ」
つい外を呆けて見ている俺にそう言うアギトだった。
「ケイの街はまだ見たことがないな。神社に迎えには行ったがいつか見てみたいものだ」
「そしたら案内くらいはしますよ。何もないですけど」
「そうか。それなら楽しみにしておこう」
しかしどこを案内すりゃいいんだ?…目玉なんて特にないぞ…
「そうだ忘れるところだった」
そう言って運転しながらチョコを渡してくれた。
…師範がくれるとは意外だったな。
「模擬戦で私に勝てたらやるつもりだったが中止になったことだし別にいいだろ」
「ありがとうございます。では早速」
「手作りではなく市販のものだがなかなか人気のある店でな。買うのに苦労した」
マジですか。そういうのって結構並んで待って購入するようなことになったんじゃ…
お返しはかなり判定の厳しいものになりそうだな…
「うまいです。一つ食べます?」
「ああ、もらおう。だが手が放せなくてな…口にいれてくれるか?」
はい?師範なんて言いました?つまりあれですか?いわゆる「アーン」ですか?というかチョコ渡したとき手放してましたよね?
そう焦る俺だが師範の顔にたいした変化はなかった。
…俺一人でテンパってるだけ?ならいいか…
「どうぞ」
「うむ。…確かにうまいな」
そう思い差し出すと師範はそのまま口にした。そのとき俺のチョコを持っていた指ごと口に加えられたのだった。
………はっ!思考が飛んだぞ一瞬。
「ケイ…明日の運勢大丈夫か?使い果たしてないだろうな?」
「……恐ろしくそうじゃないかと思っているところだ」
「アタシがいてやる、頑張れ!助けてやるから」
「アギト!」
「ケイ!」
そう言って俺は泣きながらアギトと抱き合った。
頑張るさ。頑張ってきっと不幸であろう明日からの日々に俺は強く生き抜いてやる!!
「…何をしているんだ?お前達は…」
そう言いながら隊舎までの運転をするシグナム師範だった。
〜機動六課隊舎〜
シグナム師範の運転で無事六課に着いた俺達だった。
「さて、ケイは食堂に行くのだろう?」
「ええ、師範は?」
「私はもう疲れた…少し寝てくる。前のように覗くなよ?」
「覗きませんて…」
そんなかなり前のことを出されても困りますって…
「覗きではないのなら来てもいいがな」
「はい?」
「ふっ、冗談だ。ではな」
そう言って師範は自室に眠りに行った。
最後のってどういう意味だ?…大人なお誘いか?……ないない。現実を見ろ俺。
「さてアギト飯行くか?」
「そうだな」
〜六課食堂〜
相変わらず新築のここの食堂は立派だった。食堂の給仕の人たちに久しぶりと挨拶して俺は席を探した。
探しているとヴィータにエリオとキャロにヴィヴィオ、フリードがいた。なにやらヴィータのやつは死んだように机に頭を伏せていた。
「よお。エリオ、キャロ、ヴィヴィオにフリード。久し振り」
「元気してたか?」
俺とアギトはそう言い4人と一頭の近くに食事を置き、席に着いた。
「あっ、ケイ兄久し振り」
「お久しぶりです」「きゅく〜」
「こんばんは〜。けい」
どうやら3人と一頭は元気そうだ。ヴィヴィオはまだ少し舌ったらずな感じで返事した。…俺の名前呼びにくいか?まだ平仮名になってるぞ?
しかしヴィータは死んだままだ。
「おい赤幼女。生きてるか?」
「…あ〜?…なんだおめえか…久し振りじゃねえか?模擬戦はどうした?」
…幼女の言葉に反論せんとは相当キてるなこいつも
「シグナムさんも疲れ中止だ。この調子じゃシャマルさんもか?」
「ああ…自分の城で真っ白になってるだろうな」
医務室大丈夫か?医者が死んでて。
そのままヴィータはその場で寝息をたて始めた。こらこらこんなとこで寝るな。
「あの、ケイ兄さんどうぞ」
「けい〜どうぞ〜」
そう言ってキャロとヴィヴィオは小さめに包まれたチョコをくれた。
「おっ、ありがとな。食事のデザートにいただくよ」
「はい」
「おいしいよ〜」
そう言うとキャロとヴィヴィオは笑顔で返事した。相変わらず素直な子達だな。
エリオを見るとなにやらホッとして安心をしていた。そしてエリオを連れてちょっと席から離れた。
「ど、どうしたの?ケイ兄」
「エリオ、キャロの本命チョコうまかったか?」
「えっ!?どうしてわかったの!?」
やはりな。チョコが小さめでしかもそれを見てエリオは義理だと安心したようだ。どうやら意外とこの世界にもバレンタインはちゃんとした
形で知られているようだ。
「そ、そのおいしかったよ…」
「その調子でがんばれ。応援してるぞ」
「う、うん///」
う〜ん、初々しいなこの2人は。まあ俺は他人の応援してる場合じゃないんだけどね。あっはっは……なんか虚しい…
そう話をして席に戻った。
「こんばんは…」
「うおっ!?」
席に着いて一息入れるとその隣にルーテシアがいた。いつからいたお前!?
「ケイ…半日振り」
「おお…半日振り…」
なんかどんどん変わった言葉を使っていくな…誰に似てきた?
「ルールーどうした?」
「エリオにもチョコ渡そうと思ってきたの。はいエリオ」
「えっ!?あ、ありがとう」
「よかったね、エリオ君」
そう言いキャロはエリオに笑いかけた。意外にもその表情は裏のない無垢な笑顔で修羅場になる雰囲気0だった。
やったなエリオ、二股しても大丈夫そうだぞ。
ちなみにルーテシアは事件後すぐ意識を戻したメガーヌさんとミッドで暮らしている。メガーヌさんは戦闘職はもう無理のようで108部隊の
ゲンヤのオヤッさんの所で事務仕事をしている。
ルーテシア自身はエリオとキャロのところによく遊びに来ているらしい。
「よかったなエリオ。モテモテだな」
「…ケイ兄はもらったの?」
「ああ、ルーテシアやナンバーズ、ギンガ先輩、アリサさん、すずかさん、師範とキャロにヴィヴィオからな。
みんな今までのお礼でとか、お返しと目的とか、興味本意みたいだけどな」
「それって…違うんじゃ…」
「エリオ君、しっ!自分で気付かせないと…」
「ヴィヴィオはエリオに本気だよ〜。エリオに本命あげたよ?」
「「ヴィヴィオ(ちゃん)!?」」
なにやらコソコソ話をする2人。何を話してるんだ?
しかも何気にヴィヴィオはエリオ狙ってる発言か。やったなエリオ将来有望だぞヴィヴィオは。確認済みだしな。はっはっは!
「はあ〜…鈍感じゃないみたいだけどそういう事はマイナス思考なんだよなコイツ…」
「おいアギト人を馬鹿にするな」
まったく。俺はいつもプラス思考がモットーなんだぞ。
すると服の袖を引張る感触がした。そこを見るとルーテシアが袖を持っていた。
「ワタシは別にお礼が欲しくてしたんじゃないから…」
「わかってるって。けどまあ少しくらいは期待してな?喜びそうなもの探すからな」
うんやっぱり子供は純粋だな。
そう思いながらも食を進め、食べ終えた。
「さて…食い終わったし、ちょっと散歩にでも行くか」
「へ〜え…中々たくさんの人から貰ったみたいじゃない?しかも来てあたしに挨拶も無しなんていい度胸じゃない」
散歩にでも行こうとしたら、話しかけられたと同時に頭に何かを突き付けられた。
……この殺気…この頭に突き付けられた感触…このセリフは…
「ティアナ様…何をしておられるのでしょうか?私にはそのようなことをされる理由は思いつかないのですが…」
「ほ〜う…そんなこと言わすのはこの頭?ちょっと外で冷やしましょうか?」
何故だろう…自分は凡人だと卑下していた人がどんどん魔王に近づいている気がする…
「あはは……ケイ頑張ってね」
「スバル!?いたのか!?てかお前らいつからいた!?」
「あんたがチョコの貰った相手を自慢しているときからいたわよ。よかったわね?たくさん貰えて」
「いえですね…」
「あ・た・ま・ひ・や・そ・っ・か・?」
「はい………」
そのままティアナに引きずられ俺は食堂から離れたのだった。
みんな苦笑いで手を振りながら見送ってくれた。
…助けろよ…
〜六課隊舎外 海辺〜
俺はティアナに引きずられながら海辺に来た。ここは俺が魔法を使えないとわかったときにいじけた場所であった。
「…懐かしいわね…あんたがここでいじけてたのよね」
「あはは…そうだな。なんか懐かしいな」
魔法が使えないことがわかった俺をここでティアナは励ましてくれたんだったな。
ティアナは引きずるのをやめたので俺はそのまま立ち上がった。
「まさかあんな情けない奴が今はあの事件で生き残るくらい強くなるなんてね」
「はは、自分もそう思うよ」
あの頃はまだ何もできず、ただ言うことしかできなかった。いろいろあって今では自分の考えを完全じゃないにせよそこそこ
通すことのできる程度には強くなれた。世の中にはまだまだ強い人はいるだろうが。
「まあ、あたしもあんたに救われた身だし感謝もしてるわ」
「そう?俺も感謝してるけどな」
多分あの励ましがなかったら今の俺はなかったと思う。
「だからこれはそのお礼。ちゃんと手作りなんだから感謝しなさい?」
そう言ってティアナは俺に奇麗に包まれたチョコをくれた。
「いいの?さっきは怒ってたのに」
「まあナンバーズもギンガさんもあんたには世話になったし、世話もしたんだしね。許してあげるわ」
だったら食堂で渡せばよかったんじゃないのか?
筒を開けチョコを一つ掴み口の中に入れた。するとチョコと一緒にオレンジの味がした。
「オレンジのチョコ?」
「苦労したのよ?果物味のチョコなんて」
まさか地方限定みたいな手作りチョコを手作りしてくるとは…すごいな
「すごいな…よく作れたな」
「まあ、あたしにかかれば軽いわよ」
「苦労したって言ったじゃん」
「うっ…」
はは…意外にかわいらしい一面を見せてくれたよ。
ティアナは顔を赤らめて反論しようとするができないようだ。
「で…あ、味の方はどうなのよ///」
「うん、すっごいうまい。オレンジとか俺好きだから」
「そう…他の人たちと比べてどうだった?」
「他のみんなのもうまかったよ。微妙なのもあったけど」
ウェンディとかノーヴェとかな…流石にしょぱいとか辛過ぎなのはどうかと思ったぞ…嬉しかったけど。
ウェンディのフォローは思いつかんかったな…
「そっか…」
「けど意外性ではダントツだな。いい意味で」
そう言ったらティアさんはこっちを驚いて見た後、顔をものすごく赤くして俯いた。
…これって好かれてる?…ってないない…俺が好かれるわけないだろ。
「さて…戻ろうか?寒いだろ?」
一応日本の冬程の寒さは感じないが、あまり長くいると冷え込む。
そろそろ戻った方がいいと思い手を差し出した。
そしてティアナはその手をとった。
「じゃあ行こうk…」
行こうと言おうとしたらティアナは手をとったまま俺に抱きついてきた。
そしてそのまま顔を近づけてきて
ちゅっ…
一瞬だったが俺達の唇は重なった。とても柔らかく気持ちのいい感触が俺の唇に走った。
「えっ……ええ!?」
マジで焦った。なんで?今何された俺?キス!?キスされたのか!?
どういうこと?これは夢ですか!?
「ティアナこれって…」
「//////…」
ティアナの方をみると下を向いて目が前髪で隠れていたがその顔は真っ赤だったのはわかった。
…マジですか…この出来事にこの反応は好きって意味でとっていいんですか?
「あ…あの…」
「ほ、ほら行くわよ。隊舎に戻るんでしょ?」
「あ、ああ…」
理由を聞こうと思い話しかけようとしたらそう言ってはぐらかされた。
繋いでいた手を引かれ、俺達は隊舎の食堂に戻りみんなと合流したのだが、あまりティアナと話せなかった。
それは向こうも同じで目線が合うとお互いに逸らすなどしてしまい、年少組は不思議がっていた。
スバルは何か気付いたのか俺たちを怪しい目で見ていた。
…勘付かれたかな?
しばらくはみんなで雑談したあとルーテシアは久しぶりに一緒に寝たいと言ったアギトと一緒に帰り、
寝ていたヴィータもヴィヴィオを部屋に連れて行こうとしたザフィーラに起こされ解散した。
〜六課寮 エリオの部屋〜
今晩はエリオの部屋にお世話になることになった。もともとそういう予定だったし、以前にも泊まった場所なのでなんの抵抗もなくお邪魔した。
「なんか久し振りだね。こうして泊まるの」
「そうだな。どうだった最近の訓練は?」
「相変わらず密度が濃いよ。いつもくたくた」
「はは…まあがんばれや。騎士になるんだろ?」
「うん。それが目標だね」
結局それなりの力を手に入れてもしたいことは思いつかなかった。管理局に遊びには来ているが就職する気はサラサラ起きない。
かと言って自分の世界でも見つからなかった。
そういう風なところで考えると俺はこの世界の誰よりも弱いままだな。
「?難しい顔さっきからしてるけど大丈夫?」
「ん?してたか?いやな多分一生分の運を使い果たした俺は明日からどうなるのかってな」
「あはは…そんなこともないとは思うけど」
「いや…いくらなんでも今日はありえん…」
だって…ティアナにキスされたんだぜ…夢じゃないよな…
さっきのことを思い出すとどうしても恥ずかしい気持ちと現実なのかという疑問が浮かび上がる。
「すまん…ちょっと風呂行ってすっきりしてくる」
「じゃあ一緒に入る?」
「すまん…ちょっと1人で考えたいんだ」
「そっか。じゃあまた後で」
「悪いな」
そして俺はエリオの部屋から出て風呂に向かったのだった。
〜六課リラクゼーションルーム〜
風呂から上がり、ここの自販機でジュースを買って飲んでいた。
風呂でも先程の出来事を考えていたがやはりそういう意味でしか考えられない。
ティアナはそう簡単に人にあんな事をするヤツではない。
正直に言えば好きだ。だけどそれは他のみんなにも言える。
おそらくlike以上でloveに行く寸前ではある。
「はあ…」
もしかしたら今日くれたほとんどの人がそうなのかと思うとなんだか悪い気がした。
ゲームやドラマだと羨ましく感じるがなんとも言えん感情になる。
「ああ、もう…頭が痛え…」
「どうしたの?なんか悩み?」
考え事をしているとスバルがいつの間にか自販機の前にいた。スバルも風呂上りのようでシャツにスパッツという格好だった。
そういえば前にもこんなことあったっけ…
スバルがジュースを買おうとしていたので代わりに金を渡し奢った。
ジュースを持ったスバルは俺の隣に座った。
「で?何か悩み?」
「いやな…青春の悩み?」
「何それ?」
まあ当然の反応だよな。
「……ティアとキスでもした?」
「…見てたのか?」
「ううん…なんとなく。2人とも不自然だったもん」
ああ…やっぱし?お子様組にはバレてないみたいだったけどスバルにはバレてたか…
「…あのねケイ…わたしもケイに作ったんだよ?チョコ。だからはい」
「えっ…?」
そう言ってスバルは袋を差し出してきた。エリオの部屋に来て渡すつもりだったらしい。
だけど俺は開けるのをためらった。
「開けてみて」
そう言われて開けるとそこには少し歪な形をしつつもおいしそうな匂いのチョコクッキーが入っていた。
「あのね…みんな程はうまくできなかったと思うんだ…」
「そんなことないと思うぞ…すごくいい匂いだ」
「そう…ありがと…でもね…」
そう言ってスバルはクッキーを一枚口に含むとその顔を俺の顔に近づけてきた。
そしてそのまま唇同士が重なり、スバルの口に含まれたクッキーが俺の口の中に入ってきた。
スバルの口の中のクッキーと一緒に舌まで入ってきた。部屋には少しだが水のような音がたった。
「んっ……、どう?おいしい?」
「……ああ…」
もう俺は焦るどころではなかった…
頭はそのまま思考が停止し、ただ唇と口内に残った感触と、クッキーの甘い味だけを認識していた。
「ケイはね…事件のときのお見舞いのときのこと覚えてる?」
「ああ…覚えてる…」
「わたしはね…ただ戦闘機人って知っても接し方を変えなかったからしたんじゃないからね…本気だからね」
「…けど俺はどうすればいいんだ?」
スバルもティアナも本気だということはわかった。だけどどうすればいいのかわからない。
明日からどうこの2人に接すればいいのかも。
「ケイはね…いつも通りでいてくれればいいんだよ」
「いつも通りか?」
「そう…だっていつも馬鹿やってるけどいざっていう時にはちゃんとしてくれる。相手がどんな体でも事情を持ってても気にしないで普通に接してくれる。
そういうところがケイの長所でわたしが好きになったところだもん」
俺は思わず赤くなった。
ただ自分が嫌われて自分が人を嫌う人間になりたくなかったからそうなろうとしたつもりだったのに、そういうところに惚れたと言われたのだからだ。
「じゃあ今日のことは…」
「わたしとティアの気持ちの確認!そう思っていて。ティアもそう思ったから多分何も言ってないでしょ?」
「ああ…聞こうとしたらはぐらかされた」
「じゃあそういうことだよ」
流石パートナー…お互いのことはしっかりわかっているか…俺もわかるようにならないとな…
「けどティアナはスバルの気持ち知ってるのか?」
「うん…結構前から知られてた。だから今はパートナーでライバル」
「ははは…」
なんともまあ…幸せ者なこって俺。
よくもまあこんないい奴らに惚れられたもんだぜ…
…見限られないようにしないとな…
「でも本当にいつも通りにするぞ?今日のことがあっても他の誰かが一番好きになるかもしれないぞ?」
多分いつも通りに生きていきみんなと普通に接していく中で一番好きになった人を選べという意味なのだろう。
だから確認のためにそう言った。
「うん、いいよ。みんな振り向かせればいいって思ってるだろうし、わたしも全力全開でいくから」
「はは…じゃあ俺も全力でいつも通りにしてくよ。まあ一番に誰かがなっても俺の接し方は変わらないだろうけど」
あんまりいいことじゃないのはわかっているけどそれが俺なりの謝罪とお礼だと思うからな。最低野郎なのは間違いないな…
しかしここにも魔王の影響を受けた人物がいたか…
エリオ…キャロが魔王になる日が来るかもしれんぞ。今の内から覚悟しとけよ。
「それじゃあもう寝よ?わたし明日も朝の訓練あるし」
「…そうだな」
そう言ってお互いのジュースの残りを飲みほし立ち上がった。
「あっ、そうそうケイ」
「ん?なんっ ぐほっ!?」
立ち上がってリラクゼーションルームを離れようとすると腹を殴られた。
「何しやがる!?」
「たくさんの人からチョコ貰ったお仕置きと自分のこれからを聞いた罰だよ。ホントは自分で考えないと」
「いや…それはそうだが…」
「それに前もいつも通り接するためにこうしたでしょ?」
「っぷ…だな…たっく情けねえな俺は」
「じゃあ頑張って情けないとこ無くしてね♪」
「ああ…そうするさ」
そのまま2人で笑い合っておやすみと言ってお互いの部屋に帰って行ったのだった。
〜エリオの部屋〜
「ただいま」
「おかえり。すっきりした?」
「ああ…前にもあったなこんな感じのこと。ったく全然成長してねえよ。俺は」
ホント周りに救われてばっかだもんな。
「じゃあまた初めて来たときみたいに成長目標でもできた?」
「ああ、超難しいのがな。やりきりはするけどな」
「頑張ってね」
「お前もな。エリオ」
そう言って俺とエリオはいたずら小僧同士がするような笑いをお互いにした。
「っといけねえ。メガーヌさんからの手紙忘れてた」
「ルーのお母さんから?何て?」
「待て。今開ける」
そう言ってメガーヌさんからの手紙の封を切り、手紙を読む。
ケイ君。ルーのチョコはおいしかったかしら?
あの子ああ見えて料理上手だからきっとおいしかったと思うわ。
今はまだ小さいけどあと4、5年もしたら立派な大人の女の子に近づくから期待しててね。
私に似た美人になるから。
まあどうしてもと言うなら今にでもいいんだけど…
あなたとルーがくっ付くの楽しみにしてるわね♪
私はルーを全力でサポートさせてもらうから♪
追信 早めに手をつけてもいいんだからね?
未来の母?より
「「……………………………………………」」
ものすごい沈黙が部屋に続いた。そしてその沈黙を破ったのはエリオだった。
「あ〜っと…ケイ兄…」
「エリオ……俺はロリではないかなら…絶対手なんか付けないからな…」
「それはそれでルーがかわいそうじゃ…」
「つうかお前に惚れてたんじゃないのか!?」
「知らないよそんなこと!!」
だあああああ!?悩みの種が増えた!!15歳に10歳!?犯罪じゃねえか!!もうすぐ高校だぞ俺は!
メガーヌさん、娘をサポートするってどんな形でしてくるか果てしなく不安なんですけど!?
結局この手紙で俺の思考は完全にいつものノリになった。
遠い…遠すぎる…情けない男卒業まで遠すぎだろ!?
おまけ1
〜ケイとティアナが食堂を去ってから〜
「ルーちゃん…」
「ルーテシア…」
「ルールーあいつも悪気があるわけじゃ…」
「えっ?何の話?」
「大丈夫…」
「「「えっ?」」」
「お母さんが後4,5年したらきっと落とせるって言ってた。だから大丈夫」
「ルーがんばれ〜、ヴィヴィオもエリオゲットがんばる!」
「うん…」
「「「…………」」」
(こんなちっちゃい子まで狙ってる!?)
「うるせー!!寝れねえだろ!!静かにしろ!!」
おまけ2
〜無限書庫魔人大戦争〜
「ユーノ君…」
「ユーノ…」
「ユーノ君…」
「「「誰のが一番?」」」
「え…えっと3人ともおいしかったよ?」
「私のだって」
「何言ってるの?なのは…私だって言ったよ?」
「2人とも寝ボケたらアカン。私の言うたやんか…なあ?リイン」
「は、はいです」
(ああ……胃が…痛い…)
おまけ3
〜出番のなかった奴等〜
「出番なかったっすね旦那」
「ああ…」
「でもヴィータ副隊長起こすときに出てたでしょ」
「グリフィス…だがセリフがなかったんだぞ…」
「…けど出ただけいいじゃないか!提督の僕も出てないんだぞ!」
「ザフィーラ〜チョコだよ」
「…すまん頂こうアルフ…」
「気にするなって。アタシ達の仲じゃないかい」
「くそ…旦那裏切った…」
「ヴァイス陸曹これどうぞ」
「アルト!すまん!サンキューな」
「いえ…そんな///」
「十分あなたも裏切ってます…」
「ふ〜ん…グリフィスはいらないんだ…」
「せっかく作ったのに…」
「何を言っているシャーリー、ルキノ、貰うに決まってるだろ?」
「「じゃあどうぞ」」
「…エイミィ…」
「はいはい、わかってるって」
「すまない…」
「ほらパパを慰めてあげて」
「「ママ…この人誰?」」
「……………」
「あはは…忘れられたねクロノ君」
おまけ4
〜出番というか名前だけのナンバーズとα〜
「何故名前だけなのドゥーエ…」
「私もよウーノ…」
「何故、姉御とまで呼ばれるのに出番がない!」
「私もですわ〜…」
「私は医務室で真っ白になっただけ…」
「私にチョコはないのかい?」
「ドクターの机に買って置いておきました」
「ありません」
「買っていません」
「食べちゃいました〜」
「上げる義理がないんですけど…私は六課の医者ですし」
「…冷たいな…」
おわる
あとがき
恥ずかしい…
書いてたらいつの間にかキスまでさせてしまった……こういうの書いたの初めてで書いてたこっちがなんか恥ずかしくなりなした。(苦笑)
最後の方はもう完全にルーテシアとティアナとスバルがメインになってしまった…スバルとティアナはメインのつもりでしたけど…
最初はルーテシアは懐く程度のつもりだったはずなのに…チビッ子恐るべし…
では読んで下さったみなさん「時空を駆けちまった少年」の本篇も楽しんでもらえると自分は救われますのでよかったら見てやって下さい。