ぴんぽんぱんぽーん。皆様こんにちは、時空管理局提督補佐シグレ・ミナセ三等空尉です。

 

このお話は11年前の事件が起こらなかったもう一つの世界の物語です。

 

この世界の我が主は家族を失わず、事件の調査に来たグレアム提督に魔法の才を見出されてミッドチルダにやってきました。

 

なので、皆様がよく知る『暗き瞳に映る世界』とは少し違うかもしれませんが、これも可能性の一つとしてお考え下さい。

 

それでは、くらひとSSS特別編『あなたの傍で眺める世界』開幕です!

 

はぁ――――早く主殿に会いたいなぁ……って出番これだけ!?

 

 

 

 

 

 

 

魔法少女リリカルなのは―――くらひとSSS 特別編―――

 

 

 

 

―孤独の剣士と白の剣聖―

 

〈あなたの傍で眺める青空〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我は完全自立行動型警備端末である。

 

名前はブレスト。

 

今日も今日とて時空管理局中央のリュウト・ミナセ執務室の警備に当たっている。

 

皆様は我が何であるのか分からぬ者も多いはず。簡単に説明すると、我はリュウト・ミナセによって再生された特殊型インテリジェントデバイス試作初号機の意思だ。

 

ヴァーセル博士によって生み出された我だが、デバイスという体を得る前にお蔵入りになっていた。その我を――数十年の時を自己改良に費やしていた我を、研究所を受け継いだリュウト・ミナセが修復し、こうして警備端末に組み込んだのだ。

 

我はこの体が気に入っている。

 

本体は小さな六つの球体――それぞれがバックアップだ――だが、本体の周囲に立体映像と擬似斥力場を用いた体を作り上げる事が出来る。その為、こうして猫の姿になることはもちろん、ある程度の大きさならば何にでも姿を変えられる。

 

近頃は鳥や蝙蝠になって飛び回る事も多いのだ。

 

おや、向こうから歩いてくるあの男は――

 

 

「――おいこら丸いの」

 

 

 相変わらず口が悪い、なのに女性の心を掴んで離さないというのだから、人間というものはつくづくよく分からないものだ。

 

 まあ、我は人間ではないから当たり前だとは思うがね。

 

 

「無視すんな!」

 

 

「――無視してはおらんよ」

 

 

「じゃあ最初から返事しろよ!」

 

 

 目の前で吼えているのは宮本良介とかいう若造だ。

 

 あ、ちなみに我は作られて約三十年になる。故に奴は若造だ。

 

 

「――人の名を呼ばぬような愚か者に答える発声器は持たん」

 

 

「――――がぁあああああっ!! 何で! お前は! 俺に! 毎度毎度! 喧嘩ばかり売りやがる!?」

 

 

「喧嘩など売っておらん。事実を言ったまでだ」

 

 

「ぶっ壊す!!」

 

 

 ふん、単細胞め。

 

 少しはあの子らを見習うがよい。

 

 

「ミヤモトさーん? お願いですから廊下で騒がないで下さい」

 

 

「本当ですわ。兄様の仕事の邪魔です」

 

 

 宮本の背後から現れたのは我がマスターの妹君たちだ。

 

 アスカ・ミナセ准空尉とハルカ・ミナセ陸曹長。

 

 共にマスターの補佐官を務めている。

 

 もうすぐ現副官が退職することもあり、現在勉強中だ。優秀な方が新たな副官になるらしい。負けたほうは次席副官だとか。

 

 

「なのはちゃんたちから聞きましたよ? 折角管理局に呼んだのに会いにきてくれないって」

 

 

「なのにリンディ提督やエイミィのところには顔を見せるんですもの。いつも兄様が愚痴に付き合ってるんですよ? 仕事があるのに…」

 

 

「――――お前らの兄貴に文句を言え」

 

 

 お、宮本が震えておる。

 

 

「お前の兄貴が一般人の転送を許可してるんだろう!? 今日こそはぶった斬ってやる!!」

 

 

 ふむ、目的はそれか…

 

 だが、警備端末である我の前で堂々と襲撃予告とは――――

 

 

「――――バカだの」

 

 

「今なんて言ったスーパーボール!」

 

 

「失礼な!? 我はあんなに跳ねんぞ!」

 

 

「うるせえ! お前と話してるとたまにあいつと話してる気になるわ!」

 

 

 それは当然だ。

 

 我の対人会話プログラムはマスターの思考をコピーしたものがベースになっている。

 

 

「つーかどうなってんだよ!? ここは次元世界の法と秩序の番人『時空管理局』じゃないのか!? 俺の権利と自由は守らんのか!?」

 

 

「守らん」

 

 

「言い切りやがった!?」

 

 

 それが自然の理。

 

 ……多分。

 

 

「――おい、今ロクでもないこと考えたろう?」

 

 

「――我は完全自立型警備端末『ブレスト』」

 

 

「誤魔化したっ!?」

 

 

 よく吼える若造だ。

 

 マスターもこれの一割くらい叫べばいいものを。

 

 まあ、マスターがこうなったら我は異常をきたすだろうがね。

 

 

「――それで、ミヤモトさんはこれからどうなさいます?」

 

 

 そういえば、アスカ嬢のこと忘れていた。

 

 ついでにハルカ嬢の事も。

 

 

「兄様なら執務室ですわ」

 

 

「――――いいのか?」

 

 

 それは襲撃しても構わないのかという質問か。

 

 無論――――

 

 

「構いません。初対面でいきなり斬りかかって重力の檻で挽肉(ミンチ)にされかけたのを忘れられるのなら」

 

 

「法術は確かに脅威ですが、兄様が負けることはありません」

 

 

「いくら貴様が強くなろうとも、マスターは負けん」

 

 

 宮本のことを聞かれたら、あの娘たちも同じことを言うだろうがな。

 

『魔法は確かに脅威だが、おにーちゃんが、リョウスケが、良介が負けるはずはない』とな。まったく、大した娘たちだ。

 

 

「――くそぉおおおおおっ! 今日こそ三枚に下ろしてやるぅ――――ッ!!」

 

 

 宮本が走っていく。

 

 あいつはいちいち叫ばんと動けんのか。

 

 

「剣で三枚に下ろされるのが早いか、超重力で潰されるのが早いか――どう見る?」

 

 

「扉を開けた瞬間、戦意喪失」

 

 

「書類の海を見て思わず兄様を哀れむ」

 

 

 ――――ああ、我がマスターよ。

 

 あなたは『魔法使い』にすら哀れに思われるほど仕事に殺されそうなのですか…

 

 

「――――」

 

 

 ――――よし、付いていこう。気になるではないか。

 

 

 

 

 

 

「――でも、それってあなたの所為じゃない?」

 

 

「――何を言ってるの? アスカが余計な仕事を増やしたんでしょ?」

 

 

「ハルカこそキャリア試験の勉強に兄さんを引っ張りまわしたじゃないか!?」

 

 

「兄様が教えてくれると言ったんです! アスカみたいに露骨に甘えるなんて私には出来ませんから!」

 

 

「ボクがいつ甘えたって言うの!?」

 

 

「毎朝毎朝寝ぼけたふりして兄様の布団に潜り込んでるでしょ!」

 

 

「それはハルカじゃないか!」

 

 

「違う!」

 

 

「違わない!」

 

 

「違う!」

 

 

「違わない!」

 

 

「むううう…!」

 

 

「んん〜〜〜!」

 

 

 間。

 

 

「――――訓練施設空いてるよね?」

 

 

「ええ、修理したての第二が」

 

 

「――――」

 

 

「――――」

 

 

――――主よ、もう少しまともな教育は出来なかったのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 む?

 

 訓練施設の方角からいやな振動が……

 

 いやいやいや、我は何も知らん。

 

 悲鳴が聞こえるだとか、怒号が聞こえるだとか、警報が鳴り響いているだとか、武装隊に出動要請がかかったとか、まったく知らん!

 

 それにしても、AA+同士の戦いか…

 

 

「――修理代、マスターに来るかも知れんな」

 

 

 ここ数年壊れてばかりだから、そろそろ全面改修になるやも知れぬ。

 

 

「それにしても、宮本はすでに突入したのか?」

 

 

 ここはすでに執務室前だ。ここに居ないとなると、すでに中ということだが…

 

 

「――――おい、この書類はこっちか?」

 

 

 む、執務室内から声が――あそこの制御盤からなら声と映像を拾えるな。

 

 

「ああそうです。そっちの書架にまとめて…」

 

 

「――――」

 

 

 我に涙を流す機能があったのなら、おそらく大粒の涙を零していたであろう。

 

 嗚呼、何て素晴らしい男の友情。

 

 

「――約束どおり戦おうと思ったけど、斬る前に死にそうだよな、お前」

 

 

「――やっぱり誰かと勘違いしてませんか? 私はあの時以前にあなたに会ったことはないですよ?」

 

 

「いいや! 絶対に会ってる! 病院で確かに会ってる!」

 

 

「その病院に行ったのは数年前が最後です。人違いじゃないですか?」

 

 

「お前みたいな奴が何人もいてたまるか!」

 

 

 確かに、二人以上いたら危険でしょうがないな。我がマスターながら、なんと黒幕の似合う男だろうか。

 

 

「――――まあいい」

 

 

「って、ああ!? アースラの修理費やら保全費やら諸経費が何故か三倍に!? 二日前にも訓練施設が壊れてる!? こっちでは陸士隊の一個小隊が医療施設送りに!? あっちでは整備班がストライキをぉ!?」

 

 

 なんだ、宮本がまたやらかしたのか?

 

 

「――――俺じゃないぞ」

 

 

 そうか?

 

 

「――――いいですよ、もう……」

 

 

 また経理やらなにやらに文句を言われるな。

 

 

「なのはさんたちに愚痴られるくらいなら良介君に斬られた方が楽かもしれないと最近思い始めたんですが……」

 

 

「あ〜…」

 

 

「――――もういっそ一夫多妻の世界でも紹介しましょうか?」

 

 

 それもある種の解決策か。

 

 死ぬだろうが……

 

 

「俺を殺す気だな!? 合法的に殺す気だな!?」

 

 

「――――ふ」

 

 

「ヤル気満々かよ!」

 

 

 それも当たり前だろう。初対面から斬りかかられ、後輩たちからは無言の圧力、幼馴染は二人とも宮本の味方――ハラオウン執務官は違うか? どちらにしろ、マスターの仕事は三倍以上に膨れ上がった。

 

 宮本は知ってるのだろうか――――マスターが常に魔力で身体強化している事を、そうでなくてはすでに入院決定だ。

 

 

「――そういや嫁さんはどうだ?」

 

 

 吼えるだけ吼えて言いたいことはもうないらしい。

 

 本人が嫌がることをマスターはやらんからな、宮本はやりそうだが。

 

 

「産休の取り方が分からないと文句を言っていましたが…」

 

 

「そりゃ普通はわかんねぇだろ」

 

 

「女性は色々休暇がありますからねぇ…」

 

 

 うむ、確かに色々ある。

 

 使えるものはすべて使う――これが休暇の正しい使い方だ。

 

 下手な遠慮は後々面倒になるぞ、どちらにとってもな。

 

 だからと言って遠慮しないのは単なるバカだ。何事も適当が一番。

 

 

「――――福利厚生とか休暇とか、私には縁がない言葉なんですけどね……あ、視界がぼやける……」

 

 

「泣くなよ!」

 

 

「――――ああ…使わなかった有休が消えていく…………局員旅行ってあるらしいですよ?」

 

 

「――――」

 

 

 その内まとめて取る事を推奨する。

 

 この部署の訓練にもなるからな。

 

 

「――――本気で誰かを選ぶ気はないので?」

 

 

 む、マスターが立ち直った。

 

 この切り替えの早さは見習うべきところだな。

 

 それにしても――――いきなり何を訊くマスターよ、宮本が固まっておるぞ。

 

 いや、復活するか。

 

 

「――――ねえよ」

 

 

 こちらもなんて答えだ。公序良俗って言葉を知っているか? 宮本よ。

 

 

「私の知る限り、かなりの数の女性があなたに想いを寄せているようですが…」

 

 

「……知ってる」

 

 

「でしょうねぇ」

 

 

 そうだろう。

 

分かりやすいからな、宮本も女性陣も。

 

一部例外もあるか……

 

 

「まあ、私個人としては別に構いませんがね――――そろそろ面倒な事になりそうですよ?」

 

 

「なんだと?」

 

 

「――――女性は怖いものです、良介君」

 

 

「――――お前が言うと嫌な説得力があるな」

 

 

 妻帯者が言うと重みが違う。

 

 さすが恐妻家。というか震えてないか?

 

 

「あの戦女神たちを抑える事が出来るのは君だけです」

 

 

「――お、おい…」

 

 

 びびっとる。

 

 

「――――ほんとーにどうにかしてください。結婚以来夫婦揃って家にいたのって半日くらいなんですよ? 帰れないんですよ? 私が自宅持ってるって聞くと、皆さん驚くんですよ?」

 

 

「――――あ、ああ…」

 

 

 う、うむ、恐ろしいのはよく分かるぞ宮本。防爆製の扉から邪気が漏れ出てるからな。

 

 

「このままでは出産にすら立ち会えず、一生頭が上がらなくなるんですよ?」

 

 

「――――」

 

 

魔王だ、魔王がいる。

 

おなごの尻に敷かれた情けない魔王だがな。

 

 

「――――ああ、月一でいいから帰りたい……」

 

 

「あ〜、悪かった」

 

 

 あの宮本が素直に謝っている!?

 

 どれだけ情けない顔をしているんだ我がマスターよ。み、宮本が邪魔で見えん…!

 

 確かに宮本が原因だが――――複数の反応が接近中? って、これはっ!?

 

 

「――――良介君」

 

 

「な、なんだ?」

 

 

「――――逃げたほうがよろしいかと」

 

 

「なにぃ!?」

 

 

 接近中の反応は複数、融合型デバイスの反応もあるな。

 

 む、守護騎士もか――――戦力比は比較不可能、撤退を推奨する。

 

 

「――――おや、ザフィーラの反応がありませんね」

 

 

「――――逃げやがった」

 

 

 正しい判断だ、盾の守護獣。我も逃げたい。

 

 

「すぐ海鳴に…」

 

 

「トランスポーターが押さえられています。アースラも同様でしょうね」

 

 

 我にも転送ポートを押さえる武装局員たちの映像が見えるぞ。可愛いおなごに頼まれれば男は断れん。情けないが。

 

 

「――――なんてやつらだ」

 

 

「素晴らしい能力ですね」

 

 

 うむ。

 

その歳で男を翻弄するか、将来が恐ろしいぞ。

 

 

「――――よし」

 

 

「はい?」

 

 

「手伝え」

 

 

「――――」

 

 

 をい。

 

それはマスターに人身御供になれと?

 

 あの血に飢えた戦女神たちと戦えと?

 

 

「――――お前は友情に篤いよな?」

 

 

 胡散臭い。

 

 

「な?」

 

 

「――――貸しにしておきましょう」

 

 

「よし、交渉成立だ」

 

 

 不平等条約って知っているか? 宮本よ。

 

 

「――私の儀式魔法で海鳴に送ればよろしいので?」

 

 

「おう! ついでに足止めも頼む!」

 

 

「――――あの子たちに頼むような仕事ってありましたっけねぇ……」

 

 

 おお、書類の山が鳴動している。

 

 それにしても――――近付いているぞ?

 

 

「ってのんびりしてる場合じゃねぇ!」

 

 

 今更気付いたのか。

 

 

「さっさと頼む! 場所は……」

 

 

「臨海公園辺りではどうです?」

 

 

「それでいい! 早くしてくれ!!」

 

 

 宮本にも聞こえてきたようだな。この恐ろしい戦女神の咆哮が。

 

 いやまて、なぜか設置型対人センサーが誤作動を起こしているんだが…?

 

 まさか――――瘴気?

 

 

「免責条文よし。それでは行きますよ」

 

 

「ああ!」

 

 

 管理局本局内で長距離世界間転送か…なんて難儀な。

 

 

「コーギアム・エルギア・エルギズム」

 

 

「くうううう…」

 

 

「天へと伸びる旅路。空へと届く光」

 

 

「早く早く…!」

 

 

「かの者は歩む。かの者は進む。かの者は往く」

 

 

 宮本が焦っているな、当然だが。

 

 

「我の前に道は在り、かの者の目にはあの地が映る」

 

 

 詠唱終了。あとはトリガースペルのみ。

 

 だが――――

 

 

「――――来た」

 

 

「――――ですね。では、お気をつけて」

 

 

「嫁さんによろしくな」

 

 

「ふ、君も早く相手を決めなさい」

 

 

「――――断る」

 

 

「――――まあ、お好きにどうぞ」

 

 

 この二人はこんな関係だからな、人間とは面白い生き物だ。

 

 

「それでは――――開け、次元の回廊」

 

 

 執務室内に魔法陣の展開を確認。

 

 部屋に設置されている魔力増幅器も正常に作動中。

 

 

「お体に気をつけて」

 

 

「お前もな」

 

 

 その言葉を最後に宮本の姿が魔法陣の中心から掻き消える。

 

 どうやら転送は上手くいきそうだ。

 

 

「――転送中継点の作動を確認。私も逃げたいものですが……」

 

 

 無理だろう、宮本がこの部屋に居ることはすでに知られている。

 

 

「――――ブレスト」

 

 

 む。

 

 

「早急にトランスポーターの閉鎖を解くように命令を」

 

 

「――――御意、我が創造主」

 

 

 宮本はすでに居らぬ。閉鎖を解いておかねば後々面倒だからな。

 

 うむ? マスターが妙に落ち着かぬ。

 

 

「――――逃げたいなぁ」

 

 

 何も聞こえんぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 お? あれは宮本と――エイミィか。

 

 

「あ、ブレスト! こっちこっち!」

 

 

「――何か用か? リミエッタ執務官補佐」

 

 

「固いなぁ。リュウトみたくエイミィって呼んでよ」

 

 

「承った、エイミィ」

 

 

「うん、それでよし」

 

 

 我にはさっぱり分からんのだが、どうして本局内の商業スペースに宮本がいる?

 

 確かにここは一般人も大勢いるが…

 

 

「――――なんだよ」

 

 

「――――珍しいと思ってな」

 

 

「桃子の使いでリンディに届け物してきたんだよ。そんでサボり魔に捕まった」

 

 

 ふむ、納得した。

 

 

「サボり魔って言うな!」

 

 

「自分の姿を見ろ!」

 

 

 仲が良いな。

 

 

「って、どうして今日はその姿なの?」

 

 

「男の妖精かよ」

 

 

 確かに妖精は可憐な女性が多いが、男だっているぞ。

 

 だが、この姿でミヤ嬢や妹たちといると、どうにも女性局員の目が恐ろしいのだが。

 

 なんというか、こう、テーマパークのアトラクションを見るような……忘れよう。

 

 

「――――新機能のテストだ」

 

 

「まぁた何か付けたの? 好きだねぇ」

 

 

「その小ささじゃ何もできねぇだろ」

 

 

「――――宮本」

 

 

「あん?」

 

 

 

「我はなんだ?」

 

 

「あ? 確か――――警備端末とかなんとか言ってなかったか?」

 

 

「正解だ」

 

 

 そして、くらえ。

 

 

「ちなみに新機能はこれだ」

 

 

 放電開始。

 

 

「ぎゃあああああああああっ!!」

 

 

「わきゃあ!」

 

 

「心配ない、単体目標を狙える電気銃(テイザーショット)だ」

 

 

「あ、ほんとだ」

 

 

 宮本以外は特に被害もなかろう。

 

 瞬間五万ボルトの電気の味はどうだ、宮本よ。

 

 

「…………」

 

 

 そうか、あまりに美味で言葉も出ないか。

 

 

「侵入者撃退用?」

 

 

「うむ、ここまで侵入できる輩などそうはおらんだろうが」

 

 

 侵入しても白衣の魔王がおるしな。

 

 

「――――てめぇ…」

 

 

「む、感動から醒めたのか?」

 

 

「意味わかんねぇよ!? じゃなかった、いきなり何しやがる!?」

 

 

「実験だ」

 

 

「司法機関で違法実験!?」

 

 

 これで人間にも通用する事が確認できた。

 

 宮本は丈夫だからな、こういうときには重宝する。

 

 

「その目は何だ!?」

 

 

「――――モルモット」

 

 

 ――を見る目。

 

 

「今なんて言ったぁあああああああ!?」

 

 

「気にするな。――――我はこれから妹たちの買い物に付き合わねばならんのだ、ここで失礼する」

 

 

 サイズ変更――モード3。

 

 分かりやすく言えば人間と同じサイズだ。

 

 

「ラーファとルシィ? 何買うの?」

 

 

「新しい下着だそうだ。最近主の好みが変わってきたらしい」

 

 

「ぶほあっ!!」

 

 

 何だ宮本、汚いぞ。

 

 

「あ、あ、あの男はデバイスに何やらせてんだ!?」

 

 

「何もやらせておらん。あの娘らの思い込みだ」

 

 

 我が妹ながらなんと積極的な――いや、違うか。

 

 

「ミヤ嬢のことを考えれば不思議ではあるまい。妹たちは我よりも人間らしいぞ」

 

 

 守護騎士に近いかもしれん。

 

 

「つーか、し、した――」

 

 

「ランジェリーショップか?」

 

 

「それに男が行くのはどうなんだよ!?」

 

 

「既婚のマスターを連れて行くわけにも行くまいよ。それとも貴様が行くか?」

 

 

 ついでに何人かに声を掛けてやる、風の癒し手とかな。きっと勝負下着着けて来るぞ。

 

 

「行くかボケ!」

 

 

「だろうな、そんな所に行ったと知られれば今夜は狩りの時間になる」

 

 

「否定できねぇええええええっ!?」

 

 

 吼えるな獲物(みやもと)

 

 

「だよねぇ…」

 

 

 呆れてる場合ではないぞエイミィ、お前は宮本に下着姿を見られているはずだ。

 

 

「故に我が行く。主の好みは知らんが、妙なものを買うことは防げる」

 

 

「――――妙なもの?」

 

 

「――――何買ったんだろう」

 

 

 聞くな。

 

というか、あれは紐だ。兄は悲しいぞ。

 

 

「嫁さんは確かに――――」

 

 

「ダメだって! 先輩って何処にいてもその言葉には反応するから!」

 

 

 小さい、確かに。

 

 あれでマスターを投げ飛ばすのだから、女性とは恐ろしきものよ。

 

 

「――というわけだ、失礼する」

 

 

「あ、いってらっしゃーい」

 

 

「――――行ってくる。おおそうだ、宮本よ」

 

 

「ん?」

 

 

「あと六秒で紅の鉄騎が到着するぞ」

 

 

「――――早く言えぇえええええええっ!」

 

 

 それじゃあつまらないじゃないか。

 

 む、光学映像で確認。

 

 頑張れ宮本、我は行く。

 

 

 

 

 

「ってアイゼンは死ぬだろぉおおおおおおおおっ!!」

 

 

「うるせぇ! 昨日飯食いに来るっていうからはやてもシャマルもシグナムまで待ってたんだぞ!?」

 

 

「仕方がねぇだろうが! リスティの奴の仕事に巻き込まれてたんだよ!!」

 

 

「――――リス、ティ…?」

 

 

「そうだ! だから……」

 

 

「――――カァアアアアトリッジィ…! ロォオオオオドッ!!」

 

 

「いきなり!? ってぎゃあああああああああッ!!」

 

 

 うむ、他の女性と一緒にいたせいで食事の約束を放り出す――――死んだな。

 

 というか、避難に慣れすぎだぞエイミィ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は珍しく奥方も仕事をしておられる。

 

 退職直前ゆえ後進への引継ぎの準備に追われていると聞いていたが、この仕事振りを見ていると管理局は惜しい人材を失おうとしているのかもしれん。

 

 

「あら…?」

 

 

「ん? 何かありましたか?」

 

 

「いえ……これは……」

 

 

 奥方の持っている書類の束は――演習場の使用許可申請?

 

 

「――――提督」

 

 

「はい?」

 

 

 う…いやな予感がひしひしと…

 

 

「『彼』がやらかしました」

 

 

「――――マジですか?」

 

 

「――マジです」

 

 

 うおい、宮本。また貴様か!

 

 

「今度はなんですか? 艦でも壊しましたか? それとも女性局員にからかわれて逆切れした挙句、通りかかったシグナムさんあたりに斬り殺されましたか?」

 

 

 宮本をなんだと思っているのだマスター!?

 

 あれは人間兵器じゃないぞ!

 

 気持ちは恐ろしくよく分かるが!

 

 というか、えらく具体的だな!

 

 

「そちらの方がまだ楽でしたね。なんでも自分に勝った女性とお付き合いするそうです」

 

 

 おぉ――――いッ!!

 

 なにやらかしてくれたんだ宮本ぉッ!!

 

 マスターが死んでしまうぞ!

 

 

「――――なんて軽率な……」

 

 

 泣くなマスターよ、情けない。

 

 

「その事で演習場の使用許可申請がこんなに沢山」

 

 

 山だ……とゆーか、それ全部申請書類!?

 

 申請者の怨念――もとい執念が感じられるぞ。

 

 

「――――」

 

 

 うむ、気持ちはよく分かるぞ。

 

 我もすでに逃げたい気分満載だ。

 

 

「さっさと終わらせてください」

 

 

 鬼だ、鬼が居る。

 

 人生の伴侶に向かってそこまで凶悪な要求できるのは素晴らしいが、死んでしまうぞ?

 

 

「――――いっそ殺してください」

 

 

 ああ、我が創り主よ。

 

 情けない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいどうした? 俺を見る目が妙に優しいぞ」

 

 

「いえ、気にしないでください」

 

 

 余命ひと月だからな。

 

 騒がしい奴だったがいなくなると思うと、ちと寂しいぞ。

 

 

「――で、なのはさんたちの現状を知りたいので?」

 

 

「な!? ち、ちが…」

 

 

「そうですか」

 

 

「そうだよ! 俺は休憩しに来ただけだ」

 

 

 別世界にか?

 

 まあ、素直な宮本など不気味なだけか。

 

 

「ふむ、それはそれで構いませんが――――王手(チェック)

 

 

「あああああっ!?」

 

 

「これも日本の伝統ですよ、大陸伝来ですが」

 

 

 色々変わっているから日本の伝統でもいいだろう。

 

 

「ぐむむむ…!」

 

 

「――――良介君、私が上級キャリア資格持ちの執務官だってこと忘れてませんか?」

 

 

 士官学校出身だしな。ついでに提督だ。

 

 

「次は囲碁でもやりますか? 他にも色々ありますが」

 

 

「く…っ! とりあえずもう一局だ!!」

 

 

「――――まあ、いいですけどね。仕事も珍しく暇ですし」

 

 

 嵐の前のなんとやらだな。

 

 ――――それにしても倉庫に雀卓があったぞ、大丈夫か時空管理局。

 

 

 

 

 

 奴は麻雀で勝った。マスターは初めてやったようだったが、奴は気にしていないようだ。――――麻雀は日本の伝統じゃないぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれからひと月経った。

 

 今、我の目の前ではひと月前と似たような光景が繰り広げられている。

 

 

「――――提督」

 

 

「はい?」

 

 

 あ、嫌な予感。

 

 

「『彼』が演習場に現れたそうです」

 

 

「――――終わったんですか?」

 

 

 終わっていて欲しい。

 

 我は今猛烈にそう思っているぞ。

 

 

「いえ、八神はやてと守護騎士に勝利し、現在も逃走中です」

 

 

「――彼らでは荷が重かったか…」

 

 

 口先と小手先で勝ったと見た。

 

 奴の能力はなぜかそのあたりだけ特化しているからな。法術なんぞよりそちらの方が我は恐ろしい。もしかしたら実力で勝った戦いもあったかもしれんが……我には分からん。

 

 

「その一件で演習場が大破。勘違いしたあの二人も怒涛の勢いで出撃したそうです」

 

 

「――――マジですか?」

 

 

「――マジです」

 

 

 宮本、実はマスターの事嫌いだろう。

 

 この一件でどれだけの損害が出る事か……

 

 

「――手の空いている武装隊を……」

 

 

 うむ、まずは事態の収拾を図らねばな。

 

 

「今回の一件で地上・航空隊の一部が命令を無視して動いているようです。『海』の方でも何隻かの艦船が勝手に動いているようですよ」

 

 

「――――」

 

 

 あの男、時空管理局を手玉に取りおったぁああああああああっ!?

 

 陸海空三部隊があの男一人に引っ掻き回されている…!

 

 

「見目麗しい女性に追い掛けられている『彼』に対する私怨で動いたところもあれば、純粋に同じ男として救援しようというところもあるようです」

 

 

 やる事が極端すぎる。

 

 救援したいのならその意見を上にあげろ!

 

 

「――――レポート用紙、コンテナ一つ分確保しておいてください。ついでに大講堂も」

 

 

「大反省会ですね」

 

 

「――――いっそ死にたい……」

 

 

 泣くなマスター。我も泣きたい。

 

 

「仕事してください」

 

 

 鬼だ、やっぱりこの人は鬼だ。

 

 マスターが殺される……

 

 

「――アニーさんは行かないので?」

 

 

 この男は何を言い出すかぁあああああっ!?

 

 仮にも自分の連れ合いに向かって他の男のところに行かんのか、だと!?

 

 殺されるぞ!! すでに死に掛けているが!

 

 

「――――」

 

 

「いひゃいいひゃい」

 

 

 おー、よく伸びる。

 

 

「私の仕事と役目と望みは貴方の腕と、足と、支えになる事です。他のことはどうでもよろしい。それに……」

 

 

「それに……?」

 

 

 む、アンジェリーナ様が笑った。珍しい事もあるものだ。

 

 

「――私は戦わずとも傍にいられますから」

 

 

「――――」

 

 

 情けない、マスター。

 

 あなた様の伴侶は次元世界最強の副官だぞ、そう簡単に折れるものか。

 

 

「――――お茶、ください。アンジェリーナさん」

 

 

「はい、旦那様」

 

 

 我は学習した。母となる女性はこの世でもっとも美しく、気高い。

 

 宮本よ、いつか貴様は女神を手に入れるのやもしれんな……

 

 我の主のように……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「てめぇえええええっ!! この間はよくもやってくれたな! 死にかけたぞ!?」

 

 

「落ち着いてください! また潰されますですよ!!」

 

 

「うるせぇ!!」

 

 

「おやおや、たかが亜竜種一匹の捕獲にそこまで怒らなくても。報酬上乗せしておきましたよ――――まったく優秀な秘書をお持ちで」

 

 

「リュウトさんも挑発しないでくださいですぅ〜!!」

 

 

「ミヤさんもお元気そうで何よりです。調子が悪くなったら私か技術局に言ってください、融合型には人より詳しいですから」

 

 

「あ、ご丁寧にどうもです」

 

 

「無視すんな! 今回の仕事、密猟者やら変な宗教団体が追いかけてきたぞ!?」

 

 

「ああ、気にしないでください。よくある誤差です」

 

 

「知ってやがったな!? 俺を殺すつもりだったんだな!?」

 

 

「何を言うやら、応援も送ったはずですよ?」

 

 

「あいつらが一番ヤバいだろうが!?」

 

 

「――――本人たちが希望したもので」

 

 

「厄介払いかぁあああああああっ!!」

 

 

「まさか……ねぇ?」

 

 

「――――」

 

 

「――――」

 

 

「――――このロリコン」

 

 

「――――君にだけは言われたくないですね」

 

 

「――――ミヤ」

 

 

「――――ラファエル、ルシュフェル」

 

 

≪え!?≫

 

 

≪な、なんでしょう主様≫

 

 

「ここでは不味い。適当な場所に転送します」

 

 

「逃げんなよ」

 

 

「誰にものを言っているんですか?」

 

 

「ふん! 俺を前までの俺だと思うなよ」

 

 

「――――遺書の準備はよろしいですか?」

 

 

「――――嫁さんに別れは言ったか?」

 

 

「――――」

 

 

「――――」

 

 

≪あわわわ……!≫

 

 

「――――消します」

 

 

「――――ぶっ潰す」

 

 

≪ま、待ってくださぁ――――いッ!!≫

 

 

 嗚呼、今日も時空管理局は平和也。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜あとがき〜

 

皆様こんにちは、悠乃丞です。

 

 まずはこの場を借りてリョウさんに七周年のお祝いを申し上げます。

 

 今回再び登場した宮本良介氏、そして、すでに結婚しているリュウト君と、『暗き瞳に映る世界』とは違う世界を創らせていただきました。

 

 ハーレム編を別視点から見た作品ですので、知っている方はどの場面かお分かりになるかもしれません。というか、ほとんどの人はお分かりになるでしょうかね…

 

 引っ掻き回す良介君と引っ掻き回されるリュウト君、良介君側の苦労は皆様よく分かっていると思うので、今回は騒動に巻き込まれた側のリュウト君メインです。

 

 そして何気にそれぞれ二度目の登場のアスカ&ハルカ姉妹、片やいきなり逝去、片や登場予定無し決定済みと、今回出たら見納め――読み納めの可能性があったりなかったりです。あんなに楽しいキャラだったのかと凹んでみたり……生きてて良かったよ今回だけだけど。

 

 最後の対決はどちらが勝つのかなぁ、とか思ったりしながらあとがきを終わります。

 

 最後にもう一度、リョウさん、七周年おめでとうございます。




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