kanon 「桜咲く季節に 第四十七話」
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―――あいつに電話しようと思った。
食事を取り、買い物から帰って、荷物整理の手伝いに奮戦。
ようやく部屋で落ち着いて、CDを聞き流しながらふと思い立った。
寝そべっていたベットから起き上がって、机の上に視線を向ける。
置かれたままの手紙―――
差出人とはこの春に再会する。
「・・・・・・」
中学時代―――比較的平凡だった。
成績はごくごく普通、友達も人並みにはいた。
授業はそこそこ受けて、放課後友達と共に行動。
家に帰ってテレビ・ゲームに勤しんで、眠くなったら寝る。
その毎日の繰り返し―――
あの頃の俺は別に不満は無かったと思う。
やや退屈ではあったが、中学生は皆大体そんなもんだ。
部活には興味が無かったので帰宅部。
委員会にも属さない俺は、ただ毎日を消化しつづけていた。
あいつに出逢うまでは―――
「・・・やっぱ、電話しよう」
旅行の事について、まだちゃんと相談していない。
図書室で聞いた北川と天野の話も引っ掛かる。
俺は起き上がって手紙を手にし、部屋から出て階下に降りた。
・・・柄にも無く緊張しているのが分かる。
一度電話はしたが、それでもあいつとの距離は遠い。
一年以上会ってもいない女の子―――
思い切って、現状を聞いてみるのもいいかもしれない。
俺は階段を下りて、電話口へと向かう。
居間に子機があるが、名雪や秋子さんに変に尋ねられるのも困る。
俺は玄関の傍にある本機で電話をする事にした。
「あー!ちょっと待ちなさいよぅ!」
・・・またうるさい奴が来た。
俺はげんなりしながらも、渋々振り返る。
「何だよ、一体」
「一番風呂は真琴優先。祐一、後回し」
「・・・は?」
「真琴が先に入るって言ってるのよぅ!
分かったらそこ、どきなさい!」
そこって・・・・あー、そう言う事か。
自分が立っている位置。
それが洗面所の前である事に気付いて、俺はようやく合点がいった。
「先に入りたいなら入れよ。俺は電話に用がある」
「電話ぁー?誰によ」
好奇心旺盛な奴め。
好奇心剥き出しで尋ねて来る真琴に、俺はすんなり言ってやった。
「警察。ここに犯罪者が一人いますって」
「誰のことよぉ!」
「誰って―――」
「人を指差すんじゃないの!」
廊下でじたばた喚く真琴。
「まーまー、落ち着け。
運がよければ数年で出られるから」
「真琴は何もしていないわよぅ!」
「犯罪者は皆そう言うんだ」
「あぅー・・・・そもそも何をしたって言うのよ!」
「うーん・・・存在?」
「うーぎー!!」
「いたたたたた!!蹴るな、蹴るな!?」
脛をゲシゲシ蹴ってくる真琴に、俺は慌てて距離を取る。
出逢った頃より攻撃力が上がってるぞ、こいつ。
傍迷惑極まりなかった。
「もう、祐一と話してたら疲れた・・・・
お風呂入るから覗かないでよ」
「安心しろ。俺は風呂を覗いた事が無い男で有名だ」
「誰でも普通覗かないわよぅ!」
「何だと!?男だったら普通覗くぞ!」
「さっきと言ってる事が違うじゃない!」
ぜいぜい・・・・
互いに呼吸を荒くして睨み合う。
―――って、電話するんじゃないのか俺。
「しまった・・・貴重な時間を無駄にしてしまった。
全く、お前のせいだぞ」
「祐一のせいでしょ!」
「あだだだだだっ!?だから蹴るな、蹴るなって!?」
「ふん!」
そのまま洗面所に入って、乱暴にドアを閉める真琴。
居間にいる秋子さんや名雪にも聞こえてたと思うが、何も言わないのは慣れたからだろうか。
・・・秋子さんの場合、微笑ましいと思っているのかもしれない。
とはいえ―――
「緊張はしなくなったから感謝してやるかな」
肩の力が抜けた。
俺は苦笑して玄関に向かい、電話台の前に立つ。
手紙に確か電話番号が・・・・・
プルルルッ、プルルルッ
「うおっ!?」
何てタイミングで電話をかけてくるんだ!?
ちょっとびっくりしながらも、俺は受話器を取った。
「もしもし、どちら様でしょうか」
「相沢か?俺、北川だけど―――」
「違います」
がちゃ
一言でばっさり。
えーと、手紙の下の方だったかな・・・・・・
プルルルッ、プルルルッ
・・・早いな、意外と。
ちょっと感心しながら、がちゃりと電話を取った。
「はい、美坂です」
「え、美坂!?あれ、えーと・・・・」
「我が家では北川様からの電話はお断りしています。
つーか、かけんな」
がちゃっ
さらば、北川潤。
俺は友の遺影に敬礼し、あいつの電話番号を確かめて―――
プルルルルッ、プルルルルッ
・・・・・(がちゃ)。
「はい、警察です」
「うああああっ!?
も、もうしませんから、どうか許してください・・・!!」
―――いや、本気で何したお前。
何でか悲鳴をあげる北川に、俺は変な思いを馳せた。
<第四十八話に続く>
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