kanon 「桜咲く季節に 第九話」
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「手紙か・・・珍しいな・・・・」
郵便入れの中には、今日の夕刊と一通の手紙が入っていた。
「祐一、何じっと見てるのよ?」
俺が手紙を郵便入れから取り出してみていると、横から
真琴が好奇心を刺激されたのか、にゅっと覗き込んできた。
「ああ、手紙がきたみたいなんだが・・・・えーと、誰宛だか・・・」
表にかかれている宛先人を見ると・・・・『相沢 祐一様』?
俺宛じゃないか、これ!?
「どうやら俺宛みたいだな・・・・・」
「祐一に手紙!?ははあ、さてははたし状ね」
「何でそうなる!」
「だって祐一を見たら誰でも殴りたくなっちゃうもん」
「それはお前だけだ」
まったく・・・・・ひょっとしていまだに根にもってるんじゃないだろうな・・・
まあ、もうそんな事はないだろうけど。
「でも祐一君に手紙って・・・・ひょっとして祐一君の両親から?」
あゆも俺の手元の手紙が気になるようだ。
うーん、親父とかなら別に電話でも十分だと思うんだがな?
俺は手紙の差出人を見てみると、そこには・・・・
「森川 美雪」
「・・・・・・嘘だろ?」
俺は差出人の名前を見て、本当にその名前かどうか信じられない思いだった。
自分のだしたその声は、自分でもわかるくらいにかすれていた。
「どうしたの、ゆうい・・・・・・ゆ、祐一君、顔色真っ青だよ!」
鮎は俺の顔を見てびっくりしているようだ。
うわー、まさかあいつから手紙がくるとはな・・・・
「あゆ」
「な、何、祐一君?」
俺が急に真剣な声を出したので、あゆは少したじろいたようだ。
「お前にこれから重大な任務を与える」
「に、任務?」
「今すぐこの手紙を誰にも見つからない遠いところに埋めてこい。
あ、特に俺の目の届かないところにだぞ」
「うぐぅ・・・急に言われても困るよ」
「頼む、あゆ。俺の全人生がかかってるんだ!」
「そ、そんな大げさな・・・・・」
「ふ、お前はあいつの恐ろしさを知らんから、そんなのんきなことがいえるんだ」
「ヘえー、祐一、その手紙の人と親しいみたいだね」
真琴は興味津々と言った顔で、あゆの持つ手紙を見る。
「ま、まあ、知ってるかと聞かれたら、この上なく知っているといえるけど・・・」
なにせあいつとは二年以上の付き合いである。
その二年間がどれだけ大変だったか・・・・・・
「あゆさん、その手紙かして!真琴もちょっと見てみたい!」
真琴は俺への手紙をとって、まじまじと見ている。
「えーと・・・相沢 祐一様・・・きれいな字の人ね。
名前は・・・・・・・あぅー、字が読めない」
「真琴ちゃん、これは『もりかわ みゆき』って読むんだよ」
あゆが真琴にそっと読み方を教える。
「ありがとう、あゆさん!ふーん、森川 美雪か・・・女の人の名前ね〜」
真琴はそうつぶやいて、俺をじっとにらみつける。
・・・なんでにらまれなければならないんだ?
「ちょっと、祐一。誰よ、この人!」
真琴は俺に手紙をつきつけながら詰問してくる。
「だからな・・・・・昔の友達だよ」
「本当なの?」
「そうだよ・・・・・何だ、何を疑ってるんだ、お前?」
「べ、別になんでもないわよ、何でも!」
「別にそんなにむきになって言うことでもないだろ?」
「ま、まあそうよね。祐一が知らない人と仲良くなっても、私には関係ないもんね!」
そう言って、真琴は俺に手紙を押しつけて、家の中に入る。
やれやれ、何勘違いしてるんだか・・・・・
「・・・ねえ、祐一君」
「どうした、あゆ?そんなに深刻そうな顔をして?」
「さっき手紙を捨ててこいって言ってたけど・・・・・
手紙の人は祐一君にとって、そんなに会いたくない人なの?」
心持ち切なそうな顔をして、あゆは聞いてきた。
俺はいつもどおりとぼけた答えを出そうとしたが、あゆは真剣そのものだった。
その顔を見て、俺はちゃんと答えることにした。
「そうだな・・・・あいつはいろんな意味で型破りだったからな・・・・」
俺は目を閉じて、昔のあいつのとのことを思い浮かべた・・・・・
・・・・それはある日のあいつからの質問からはじまった・・・・・
・・・・・ねえ、祐一。祐一は奇跡ってあると思う?・・・・・・・・
・・・・・なんだ、いきなり?・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・いいからいいから。で、どうなの?・・・・・・・・・・
・・・・・そうだな・・おれは思わないよ・・・・・・・・・・・・
・・・・・どうして?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・だってそんなもんに頼ってたら、何もできないだろ・・・
・・・・・ははは、祐一らしいね・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・そういう美雪はどうなんだ?あると思うか?・・・・・・
・・・・・そうね、私は・・・・・・・・・・よ・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・え、なんて言ったんだ?・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・だからね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・あいつがいつもの笑顔で言ったその答えは・・・・・・
「・・・君、祐一君!」
「・・・え、あ?」
「祐一君!・・・どうしたの、いきなりぼーとして?」
あゆの呼びかけに、俺ははっとした。
「い、いや、ちょっとな・・・・あゆ」
「なに、祐一君?」
俺は手紙をそっと手紙をポケットにしまいながら言った。
「さっきの答えだけどな、俺はあいつには・・・・・
会いたくないけど、会ってみたいな」
「うぐぅ・・・結局どっちなの?」
「今のところそれが俺の正直な気持ちなんだ」
俺はそう言って、あゆの頭をさりげなくなでる。
「そうなんだ・・・・なんか祐一君らしいね」
「ははは、そっか?さてそろそろ・・・・・・」
「うん、ボクもそろそろ家に帰るよ。じゃあね、祐一君!」
「おう、またな、あゆ!」
あゆは背中のリュックの羽根を揺らしつつ、元気に走っていった。
俺はそんなあゆの姿が消えるまで、じっと見ていた・・・・・
「ただいま」
「あ、お帰り、祐一」
俺が家の中に入ると、名雪がちょうど階段から降りてきたところだった。
「あれ?ずいぶん早いな、名雪」
「うん、今日は練習、早く終わったから。それより祐一・・・・・・・・
先生怒ってたよ、今日のHR」
「ああ、大丈夫。明日になったら俺は忘れているから」
「祐一が忘れても意味ないよ〜」
「まあそれは何とかきりぬけるから心配するなって!
それより、腹減ったな・・・・・・」
「今お母さんが作ってくれてるからもう少しだよ」
「お、そっか。じゃあ着替えてくるか」
俺は名雪と入れ違いに階段を上がり、自分の部屋に入った。
<第十話に続く>
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