kanon 「小さな幸せ」
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・・・・・・・やばい、やばすぎる。
俺はかなり危機的状況に陥っていた。
「あのさあ、北川・・・・」
「どうした、相沢?」
「今日はもう見逃してくれ」
俺は必死で頼んだ。もう土下座しろと言われたらするかもしれない。
「駄目だ。ちゃんと当番くらいこなしていけ」
くそう。もう時間がないってのに・・・・
「いいじゃないか?もうこんなに終わったぞ。これ以上
お前は何を望む!」
今日だけは何としても急がねばならない。
だが、こいつがそれを阻もうとしている。
「後窓拭きとか残ってるだろ。当番である以上ちゃんとしていけ」
まさか今日が掃除当番とは・・・・・。
授業が何ともなく終わり、俺が帰ろうとしたところで
北川に当番である事を知らされたのだ。
で、抜け出す事もできず、ずっとやらされている。
まあ普段なら当番くらい何ともないが・・・・
「だいたいなんで今日はそんなに慌ててるんだ?」
北川が窓を拭きながら尋ねてくる。
「ああ、いや・・・・ちょっとな・・・」
聞かれたくない事だったので、俺があいまいに濁すと
「あ!?そうか、お前、今日学校帰りに栞ちゃんと約束してるな」
ギク!
「はあはあ・・・そんなことはないぞ〜〜〜」
「ならなぜそんな動揺している?」
「呼吸困難だ」
「やばいだろ、それ?」
「なら心臓発作だ」
「余計にやばいだろ。それより話を逸らすな」
くそ。今日の北川は妙に冴えてるな・・・。
「・・・ああ、そうだよ」
北川にはもう栞との仲はある程度知られている。
とぼけても同じだろう。
「じゃあ、早く終わらさないとな、相沢君。
さ、窓拭き、がんばれよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
今日の北川は俺には悪魔に見えたのは気のせいだろうか?
「遅いです!」
何とか掃除を終わらせ、一足飛びに栞の待つ校門に駆けつけた
俺に対する栞の言葉がこれだった。
「いくらなんでも待たせすぎです!」
「わ、悪かったな・・・栞・・・・・・・」
「か弱い女の子を待たすなんて最低です」
うう・・・・さすがに何も言い返せない。
「そんなことする人は嫌いです」
ぷっと横を向いてしまった。
「あの・・・栞?」
「・・・・・・・・・・・」
「俺が悪かったって・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
すねた顔のまま、栞は横を向いている。
それにしても,こうして見ると・・・・
「栞ってすねた顔も可愛いな」
「え?」
栞は面白いくらい顔を真っ赤にする。
「そ、そんなこといってもだめですからね・・・」
とはいいつつもまんざらでもないようだ。
口元が緩むのをこらえているし。
後一押しだな。
「じゃあおわびに商店街でアイスクリームをおごるから」
「え?アイスクリームですか?」
栞は目を輝かせて俺の方を向く。
「ああ。ミレーユ堂のアイスクリームだ」
「わかりました。じゃあ許してあげます」
嬉しそうに栞はそう言った。
どうやらやっと機嫌をなおしてくれたようだ。
俺がほっとしていると
「祐一さん。早く行きましょう」
今にも駆け出しそうな勢いで栞は俺の腕を引っ張る。
俺はそんな栞の様子に苦笑しつつ、一緒に商店街に向かった。
「やっぱり並んでますね」
「この辺りじゃ一番人気がある店だからな」
ここミレーユ堂は最近できたアイスクリームの店で、
かなり色々な種類があり、味も美味しいので、
今では女子高校生を中心に人気がある。
栞も一度俺と一緒にこの店でアイスを買って食べてから、
ここのアイスクリームの虜となっている。
まあ確かに甘みも程よく美味しかったけど。
「栞はほんとにアイスが好きだな」
「美味しいじゃないですか。毎日でも食べられますよ」
さすがにそれは俺では無理だな。
「太っても知らないぞ」
「うう・・・、そ、育ち盛りだから平気です」
「身長と胸は育ってないけどな」
「どうしていつも気にしている事をはっきり言うんですか!」
「うぐぅ」
「だから何ですか?そのうぐぅって?」
そんなこんな喋っている間に俺達の順番が来た。
「いらっしゃいませ。何になさいますか?」
かわいらしい制服を着た店員が声をかける。
「私はバニラとストロベリーのダブルでお願いします。
祐一さんは?」
「俺はバニラのみでいいよ」
さすがにダブルはきつい。
「わかりました。少々お待ちください」
店員は慣れた手つきでアイスをすくい、デコレーションをしてくれた。
「420円になります」
俺は財布から金を出し、アイスを受け取って、店を出た。
店を出ると、商店街は夕日を浴びて、紅に染まっていた。
それはこの今日の終わりを告げる空からの光のようだ。
「・・・・そう思わないか、栞」
「え?・・・すいません、聞いていませんでした」
栞はアイスを食べながら、こまったように笑う。
「でも私もそう思いますよ」
「そうか?・・・それより今日は遅れて悪かったな。
結局どこにも行けそうにないな」
今からじゃもうどこに行っても日は暮れてしまうだろう。
「いいですよ。こうしてアイスもおごってくれましたし。
それに・・・・」
「それに?」
「私は祐一さんとこうしていられるだけで幸せですから」
「栞・・・・・」
・・・・起こらないから、奇跡って言うんですよ・・・・・
でもこうして栞は俺のそばにいる。
俺は黙って栞の肩を抱いた。
「わ、わ。アイス、落ちちゃいますよ」
栞は少し慌てたように体を揺すった。
「その時はまた買ってやるから・・・今はさ・・・」
「祐一さん・・・・」
夕暮れの帰り道、俺と栞はしばらくそうしていた。
今のこの一秒一秒を感じるように・・・
・・・・・ボクの願い、かなったね・・・・・・
<終>
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